方針の決定は慎重に
「てか、何で紙ヒコーキをわざわざ魔法使ってまで飛ばしたんだ?」
「ディバルフさん、どうぞ」
【また丸投げかよ!・・・はぁ・・・・・・いいか、魔王という者は魔物がさらに邪の念を取り込んだものだ。そしてその魔王が生きていくために必要なものは知っているか?】
文句は言いつつもちゃんと解説してくれるディバルフ。さすがは私の相棒だ。
【相棒は解説役じゃないぞー。】
「んな!?心読まれた!?」
「あぁ、そんだけ顔に満面の笑み張り付けてりゃ分かるわな。んで、えーっと、うーん・・・・・・あー、あ!そうだ、邪の念だ!」
【正解だ。まぁ、あんまり詳しいことは分かっていないんだが、魔王は邪の念を『食べる』ことで生きていると言われている。つまり、魔王の力の素は邪と言う訳だ。そして、ラミアは一応世界に積もる邪を少しでも減らせたらなーって、感じだな。】
「んー、うん?まぁ、何となく分かったような分からなかったような・・・・・・」
まぁ、自分ではあまりそう言うことを意識してやっているわけではない。一番の理由、それは私は折り紙が好きだからだ。好きだから折る。1人じゃつまらないから、他の人と楽しみながら折るのだ。
「んまー結局趣味なんだけどねー」
一応、なんて付けてる辺り、ディバルフはこのことを分かってて言ったのだろう。・・・・・・うん、やっぱりディバルフは私の相棒だ。
「いや、趣味でやっててもすごいものはすごいんだぜ」
俺なんか人を喜ばせる趣味なんて無いもんなー、なんてライが言っていると、ドアが開く音がした。金属の音が屋上によく響く。
「ライ様。お久しぶりでございます」
出てきたのはきっちり45度でお辞儀するサムさんだった。・・・・・・やっぱり綺麗にお辞儀するねー。カックンって感じがすごい。ってか、このタイミングで来るってサムさんはエスパーか何かか。
「サムか。なんでいるんだ・・・・・・って、ん?もしかしてラミアを見つけてここに連れてきたのってサムか?」
「左様でございます。流石はライ様、相変わらず勘はよろしいのですね。驚かれましたか?」
「あぁ。毎度のことながら心臓に悪いぜ」
あ、今何気に毒吐いたよね。勘は、って他のとこさりげに否定してない?主に仕えるべき存在が主を否定しちゃってもいいんだろうか。・・・・・・これも愛情なのかな。私は嫌だけど。
「しかしながらライ様。この後はどうするおつもりで?」
「ううーん、あと2人はそれぞれロッソ大陸とグレイランド大陸にいるって情報しか掴めてねぇんだよなぁ」
「セシリアとグラン・・・だっけ?」
6歳の時のパーティーの記憶を引き出しながら確認を取る。色々忘れて抜け落ちたところもあるが、あのパーティーの記憶はちゃんと残っている、多分。
「おう。取り合えずその2つの大陸行ってみよっかなーって」
【おいおい、また適当に探すのか?】
ディバルフの言いたいことは大体分かる。その大陸にいるかも分からない人を、適当に探すのだから不安はたくさんある。
「でもまぁ、他に手は無いからね。仕方ないよ」
「そうですね。やらないよりはやる方がいいでしょうし、ライ様に運があることを祈って出掛けましょう。・・・・・・と言うことで、どうぞ」
そう言ってサムさんが取り出したのは2枚のチケットだった。高速船『隼』スカイライン・タークリング間、と印刷されている。
「船?というか、いつの間に」
「さっきの間に、ですよ。まぁ時間の有効活用と言うことで、ね。タークリングに船で行き、それから鉄道を使ってロッソ大陸に行かれるのがよろしいかと」
さすがは従者。主の考えを読んで、先に行動しているとは。従者って大変なのかな。
【しかし、このチケット2枚しかないが?】
「ええ。私は他の従者の者達を回収したりしなければなりませんので。あ、あと、それは明日の早朝出港ですので」
「りょうかーい。じゃっ、俺は宿に帰って支度でもしてっかな」
「んじゃ私は観光でもしようかなー。お土産か何かでも買おうかな?」
ここに来ても、結局1日で別の場所へ行くのだ。今の内に楽しんでおこう。
「と言うことで解散!」
「おう!」
○●○●○●
“出会っちゃったか、うーん……やっぱりこいつ、運があるな。んまぁ、こちらとしても面白いからいいんだけどね。”
“計画は順調。今はまだ早いけど、いつかその時は来るだろう。……ふひひゃっ、その時こいつらは何をしでかしてくれるかな。1人はフライングスタートをきっちゃった訳だけども、まだチャンスはいくらでもある。”
“まだだ。まだまだ準備が必要だ。その時まで頑張ってもらうとしよう。君達は、僕のご主人からも僕からも逃げられない。それが、終焉へと続く君達の運命だから。”
“はは、ははははっ。楽しみにしてるから、それまでに精々滑稽に踊ってくれ、神々の飼い犬さん達よ。”