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折り紙教室にて

街道沿いに馬を走らせて約20分。特に大したアクシデントも無く、隣町サリアに着いた。それほど大きい訳でもないが、決して小さくもない町だ。

ちなみにこの町の名前の由来は、この町が出来たときの町長さんの名前がサリアだったから、らしい。もっとネーミング考えて!と思わず言いたくなるような由来だが、まぁいいや。


「久々だねぇ。ここに来んのも」

【そうだな。最近は城でずーっとアホみたいにトレーニングしてたからなぁ】

「アホって酷くない?」


聞き慣れた相棒の中性的な声が背に担いだリュックから聞こえる。布を通した音の割にしっかりと聞こえるのは、彼の発声方法が魔法によるものだから。遠くからでも明瞭に聞こえるので中々便利である。


で、なぜ彼がリュックの中にいるのかと言うと、私がこれから行う『折り紙活動』に原因があった。


「あ!折り紙のお姉さんだ!」

「ホントだ!おねーさーん!」


町に入った瞬間響く子供の声。

その方向を見ると、缶蹴りか何かで遊んでいた4、5歳の2人の子供が手を振りながら、こちらに駆け寄って来ていた。


「走ると危ないよー」


馬から降りつつ私も手を軽く挙げ、答える。

いつだったかディバルフに気持ち悪いと言われたことのある笑みは浮かべないようにしているが、自然と顔が緩んでいるのが自分でも分かった。


「お、お姉さん、また、折り紙を教えに、来てくれたの?」


息切れしながら嬉しそうに聞いてくる。

あぁ、可愛い。もし私にその予定が無かったとしても、多分その笑顔だけで予定をぶっ込んだことだろう。


「そうだよ」

「あれ?いつもの竜さんは?」


子供が『竜さん』と言った瞬間、リュックが震え出した。そりゃもう、ガタガタである。超局地的地震である。やめんか、背中がかゆいわ。


………と言うか少年、あれは『竜』ではなく『龍』なのだよ。


「彼はね、今日都合が悪くて来れなかったの」

「えー、いないの?」

「そう、ごめんね。それじゃあ私は広場で待ってるから、折り紙とか準備してきてね。あ、あとお友達も連れてきてくれるかな?」

「うん、分かったー!」


少年が走り去ると、背中の地震が収まった。脅威が去ったと判断したらしい。…実に単純である。


「ディバルフ、どんだけ子供嫌いなんさ」

【いや、誰だって興味本位で殺されたくないだろ? …つまり、そういうことだよ】

「んー、まぁ確かに、前に壊されかけたことがあるからねぇ」

【ありゃ怖かった、うん】


小さな子供によるディバルフ殺害未遂事件から、彼は“君子危うきに近寄らず”ということを覚えたのだった、まる。




▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


「それでね、ここの角の形を整えて、と……ほら、完成!」

「えーっと、こう?」

「そうそう! すごいねー」


照れくさそうに笑う少年。彼が手に持つのは青色の折り紙カマキリだ。褒められたことが嬉しいのか折れたことが嬉しいのかは分からないが、とにかくその純粋な笑顔に癒される。

布教がどうのとか言いつつも、結局はこの笑顔があるからこそ。気付けば、自分も笑みを浮かべていた。大丈夫、気持ち悪くはない、はずだ。


ちなみに、彼が折ったカマキリは、技術的な評価で言えば正直全然ダメダメだ。

角はしっかり尖っていないし、折り直した跡がたくさん付いているし、個人的にペンで目を書いちゃってるのもマイナス。一応見た目だけはカマキリっぽくはなっているものの、上手か下手かで問われれば断然下手のレベルに入る。

だが、そのへたっぴな折り紙からは、一生懸命さがひしひしと伝わってきていた。上手い言葉で表せないが…何と言うか、こう、頑張りました感が、カマキリから滲み出ている。

私が“すごい”と言ったポイントとは、そこである。



『人間は紙に正直になる』。

前にディバルフにそう演説した時に、こいつ何言ってんだみたいな雰囲気を醸し出されて思いっきり凹んだが、私はやはりそう思う。



【うら、ラミア。ぼーっとする暇なんてないぞ?】

「ん? あぁそだね、うん」


少し、思考に集中し過ぎていたらしい。小さくディバルフに注意され、我に返った。

いけないいけない、ちゃんとしないと。この子供達に折り紙の良さをしっかり伝える為に、今ここに私はいるのだ。



【………何か、目的が変わってないか?】

「気のせい気のせい」


今後に影響する“登場人物”は無しです。


が、第一話で王様を忘れていたことが発覚しました。ごめんね、王様。

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