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タークリングと折り紙

 タークリング王国。その城下町は昼も夜もずっと賑わっていることから『眠らない国』と言われている。その為とても活気に満ち溢れていて、商店街には1日では見切れない程の商品がずらりと並ぶという。


 ――だが。


「あぁ、ほんっとに駄目。もう船なんて誰が乗るか、ばーかばーか」


 私はそんなものを見る余裕がなかった。ちなみに今は宿屋に向かってのろのろと行進中だ。


「いや、これからも乗ると思うぜ?」


【確かに。出る場所と着く場所が決まってる鉄道より、自由度は高いからな】


「…知らない、うん知らないよ、そんなこと」


 何で2人は揃いも揃って現実を見せつけてくるのだろうか。って言うかディバルフとは、前に似たような会話をしていた覚えがある。

 ……あれは確か――


「国王との挨拶がどーのこーのって話か。まぁ、この国の滞在は1日だし、挨拶は別に良いよね」


「ん?父さんに挨拶?あー、そうだなー。別に行かなくてもいいんじゃねぇのか?めんどいし、………俺的にもあんま戻りたくないし」


「んぇ?ごめん、聞こえんかった」


「いや、何でもない」


 ……。今何か明らかに突っ込みにくいことを言ってたね。うーん、家族と仲が良くないなんてことは聞いた覚えないけど……。あ、そういえば母さんがライの弟がどーのこーの言ってたな。


 実は、現タークリング国王妃はライの実の母ではない。実の母は何だったか心臓発作だかで死んでいて、今の王妃はその時のメイドだったらしい。そんなこんなでライには腹違いの弟がいるのだ。そして、その弟が天才と言うべき程の頭を持っているので……まぁ何かややこしいことになっているらしい。

 ちょっと失言だったかな?けど、その辺は私がとやかく言うことじゃないね。


 しかし、挨拶しなくてもいいと言うのは気持ちが楽だなぁ。やっぱ王様の前に出ると緊張感するんだよね。何て言うか、全て見透かされてる様なむず痒い感じ。


【これからどうすんのさ?】


「取り合えず折り紙が私を呼んでいるから、折り紙折る」


【理由が意味不明過ぎる!?】


 なんと失礼な。船旅の間、アイデアを纏めたくても纏められなかったこの気持ちが分かるかい?分かんないですか、そうですか。

 でもまぁ、なんか初めての体験が多かったのだ。アイデアが浮かんでくるのは本当である。


「んじゃ、宿屋で折り紙折ってるか?俺、その間に鉄道の予約でもしとこっかなー」


「ナイスライ。時間の有効活用だね」


【いや、ラミアが折らなければもっと早いんやねぇか?】


「うぐっ!き、気にしない気にしない」




▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


 世界大陸間鉄道会社ジアーズ。葉書を書くときに漢字が多すぎて、会社名を書くのが面倒な会社だが、何とその発祥地は我らがタークリングの国だ。



「ようこそお越し下さいました。ご予約をなさいますか?」


「あぁ、はい。2人席の奴、お願いします」


 俺は明日の鉄道予約に来ていた。

 発祥地は確かにタークリングだが、俺は鉄道に乗ったことが無かった。まぁ王の地位は弟が継ぐが、一応は王の長男である俺が旅に出るなんてそもそもが無理な話なんだけどな。



【…おい、2人って俺は数に入らないのか?】


「いや、人じゃないからいいかな、と思ったんだが……。そーいやー、その辺どうなんだ?」


「え、えーと……うーん。ど、どうなんでしょうね。恐らく、お客様のお荷物として判断されると思われますが……」


【ひどっ!?俺は一応元人間たぞ?一応だけど。もう、折り紙になったけど。人間の時の記憶とか無いけど。…ってあれ?人間的要素が全くなくね?】


 1人(1枚と言うべきか)で落ち込むディバルフ。

 ちなみに、こいつはラミアに引っ付いていた折り紙ドラゴンなのだが、一応性別は男らしいのだ。紙に性別なんて無いよなーと思ったが、部屋割りは男女別れるルールなのでディバルフは俺と同じ部屋になったのだ。


 んで、何か勝手に付いてきている。聞いてみると折り紙はやることが結構無いらしい。


 とまぁ、そんなやりとりをした後。



「はい!予約が完了しました。明日の7時出発ですので、遅れないようにしてください」


「了解でーす。ってな訳で覚えとけよ、ディバルフ。俺、忘れっから」


【断言するな。……一応覚えとくが】


 よし。取り合えずこれでやることは終わったし、帰るか。




【ん、その前にあれ、持ってってくれんか?】


 そう言ってディバルフが飛んでったのは、観光ツアーとかのパンフレットが置いてある棚だった。


「んん?この観光パンフレットか?」


【そそ、それそれ。ラミアが喜ぶかなーって。…絵を見ることしかできんが】


「そうだな。1日でまた出てくもんな、ここ」


【いくらなんでも寂しいだろ?】


「うんうん。……ディバルフって頭いいし、優しいんだなー」


 俺は…全然そんなこと気がつかなかった。言われて初めて、そっかーって感じだ。


【……まぁでも1人じゃ何も出来ないんだけどな】


「いやいや、気持ちがあれば充分だろう」


【………そうか?】


「もちろんそうさ」




 ―――いつか、仲間が揃ったらまたここに来てもいいかもしれない。ちゃんとした観光をしに。

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