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その三


 昨夜のことを冷静に考えると、なにもかも幻だったのでは? と考えずにいられない。


 神様がいる前提で話が進んでいたが、どう考えてもツッコミどころ満載だ。

 思わず携帯電話を見直してみる。

「……履歴残ってるな」

 朝起きたら全部消えていて、全部自分の妄想だった……と期待をしてみたが、そんなことはなく、しっかり登録された「あまてらす」の文字と昨夜のメールが残っている。

「心の中を見られてたしな」

 プライベートも何もあったものではないが、なにしろ神様だと、変に納得してしまう。

「これから何が起こるにせよ、ここは腹をくくるしかあるまい」

 待ち合わせは午前十時。

 シャワーを浴びて身を清め、軽くコーヒーだけ腹に入れて約束の喫茶店に向かった。


「いかん、どうしよう」

 学生の頃から、たまに出入りする行きつけの喫茶店「松木屋」は、到着したときには既に異常に包まれていた。


「モォ~」店先に牛がいる。牛車がある。


 おまけに電飾でも施してるのかと思わんばかりに、店内は光輝き、快感にも近い心地よい光の帯が、店の外まで漏れ出している。

 満たされる。

 何を満たされているのかはわからないが、とにかく満たされ、多幸感に包まれる。

 本当にここは俺の知る松木屋だったろうか?

 知らない間に由緒正しい神社に作り変えられていやしないか?

「本当はドッキリでした」と、誰かが言い出してくれるのではないかと期待していた。

 だが、ドッキリにしても度が過ぎているし、俺なんかを騙して何をしようとするのか? 

「すいません。待ち合わせなんですけど……」

 悩んでいても仕方ないので、意を決して店内に入る。

「いらっしゃい……あっ! 穣くん、久しぶりだね」

 年老いたマスターが一礼する。

 最後に来たのは半年くらい前だったのに、よく覚えてくれてたものだ。

「穣くん。せっかく来てもらってなんだけどさ、いま店内が凄いことになってて……」

「ごめんなさい」

「えっ!?」

「その凄いことの原因が、多分俺です」

「……もしかして」察しのいいマスターは続けて、

「待ち合わせって、穣くんのこと?」と言った。

「そうです」

「ははは。そっかそっか。うん。おじさんには、なんだかわからないけどがんばってね」

 マスターは色々聞きたいこともあるだろうに、何も聞かずに奥に案内してくれる。


 すると、

「あ~、豊田さん。どうもぉ」

 後光差す煌びやかな天照大御神が、ホットケーキを食べながら手を振った。


 ホットケーキ。パンケーキ。

 諸説あるが、ホットケーキはアメリカ圏の名称。パンケーキはイギリス圏で名称。

 物自体は同じもので、小麦粉に卵、砂糖、牛乳、水などをを混ぜてフライパンで焼き、そのままでも食べれるが、バターや蜂蜜、メープルシロップをかけて食べるのが一般的。

 パンケーキのパンは食べ物のの「パン」ではなく「フライパン」あるいは平鍋などで焼く、調理法のことを指す。

 日本では製品名として「ホットケーキ」の名称が広がっており、呼び方もパンケーキよりホットケーキの方が多いようだ。

 松木屋では厚めに焼かれたホットケーキが二枚重ねて提供され、焼くのに時間がかかるが「絵本から出てきた」というイメージがピッタリな夢が溢れる一品になっている。


「どうされました? 座らないんですか?」

 フォークとナイフを手に、天照大御神は口をモクモク動かしている。

「はっ!」

 あまりの違和感にしばし時の流れを忘れていた。

「天照大御神さん……いや、天照大御神様……ですよね?」

「はい。そうですよぉ。どうぞ、座ってくださいな」

 天照大御神にそう言われ、椅子に座る。

「なにか食べますか? この、ほっとけーき凄く美味しいですよ」と、気さくにメーニューを渡してくれる。

 この店のホットケーキが美味しいのは知っている。

 何気に十年来、松木屋に通っているのだ。

「じゃ……じゃあ。すいません。ブレンドを」

「はい。ブレンドコーヒーね」こちらの様子を伺っていたマスターがカウンター越しに答える。

「遠慮してますか?」

 遠慮はしていないが、緊張はしている。

 そのせいか、お腹は減っているのに胃が物を受け付けない。 

「豊田さんがそうおっしゃるなら、仕方ありませんねぇ」

 天照大御神はそう言って、ホットケーキをほうばり始めた。


「……」


 天照大御神はホットケーキを食べる合間に不思議そうに店のメニューを見ている。

 時間がたったおかげなのか、慣れてきたのか、少しだけ頭が冷静になってきた。

 貫頭衣という奴だろうか? 小学生のころ教科書で見た卑弥呼が着ているような服装をしている。下は袴だ。

 スラッとした胸まである黒髪を、頭の上の冠で留めて額を出している。

 全身から発せられている光が、暖かくも心地よく俺の身体全体を包んでいた。

 不思議なことに暖かではあるものの、熱量そのものは感じない。

 心を暖めてもらっているような感覚である。

 例えるなら、母親の羊水の中の赤ん坊のような、そんな感じだ。

「神は死んだ。神は死んだままだ。我々が神を殺したのだ」

 ニーチェの「ツァラトゥストラのかく語りき」の一説を思い出す。

 フレーズのみが有名になりすぎて、当の内容まで推考が及ばないが、俺は断言する。

「神はいる。いまここにいる」圧倒的な説得力を持って。

 それを支える存在感を持って天照大御神は俺の向かい側にいる。

 ホットケーキを食べながら。

 理屈やら理論など、目の前にいる神そのものには無力。

 本物の神様は、言うならば「存在そのものが神様としての存在」なのだ。

「はい、ブレンドお待たせしました」マスターがコーヒーを置く。

 すずぅ。なにも入れずにブラックでコーヒーを飲む。

「このコーヒーはコーヒーである。故にコーヒーである」トートロジーだ。


 それと同じように「神は神である。故に神である」のだろう。


 このコーヒーを俺自身、コーヒーとして認識している。このコーヒーは水ではなく、紅茶ではなく、カレーでもなく、ホットケーキではなく、コーヒーとして認識している。口に含めば、熱、香り、苦味、酸味、渋み、ほのかな甘み、焙煎されたコーヒー豆が渾然一体となって、五感を駆け巡り、いま自分が飲んでいるものはコーヒーであり、ほかの何物でもないと再認識させられる。それと同じように、目の前の神は神であり、それ以外のものではありえない。コーヒーのように言葉を並べる必要はない。神は神なのだ。それだけで十分に存在が証明される。

 ずずぅ。

「つまり偽りなく、貴方は神様であると結論しました」

 自分自身何を言っているのかさっぱりだ。

「は、はぁ。なんだか難しいことをお考えのようで……ところで、れもんすかっしゅというのを頼んでもよろしいですか?」

「えっ! あっ……どうぞどうぞ」

「すいませーん。れもんすかっしゅお願いします」

「はい。レスカ一丁」

 俺は密かに神の存在を感じて胸震わせていたが、マスターは普段と変わらずマスターである。

 マスターはマスターである。故にマスターである。

 トートロジーだ。


「おおぉ~。口の中で弾ける。面白い飲み物ですね。昔頂いたソーマに似てます」

 運ばれたレモンスカッシュを口に運びながら天照大御神様は答えた。

 もはやツッコむまい。

 神様がレモンスカッシュはソーマに似ているというならそうなのだろう。

「様は入りませんよ。気軽に天照と呼んで下さいね」

 内心「呼べねーよ」と、思ったが、神がそう呼ばれるのを所望されるならそう呼ぶしかない。

 どのみち人間の心の中などお見通しだろう。

「気を悪くしないでくださいね。私にとっては言葉そのものの方が難しくって」

「へっ?」

「言葉なんてなかった時代の神ですので、表層から流れる情報を読み解く方が楽になってしまってるんですよぉ」

「は、はぁ」

「いやだ。なんか年寄りくさいですね。あはは」

「は、ははは」合わせて笑ってみたものの、何を言っているか全然わからない。

 世代による価値観の違いなんてもんじゃないな。

 もはやこれは種族による価値観の違いだ。

「でも年寄りくさいなんてないですよ。天照さんならいまでも十分に可愛いですから」

 これは偽ならざる本心である。

「も~、豊田さんお上手なんだから」

 天照さんは手をパタパタと振り、

「あっ! そうだ。昨日なんでメール返してくれなかったんですか?」

「へっ?」思わず間抜けな声が出た。

 いや、間抜けじゃなかった瞬間など、今日起きてから一度たりともあっただろうか。

「せっかく二通も送ったのに、ひどいですよ」

「はぁ。今後気をつけます」

 神様と気軽にメル友とか、そんなに神経図太くないんだよ。

 いや、これが例え、ただの女友達だったとしても返信したかどうか?

「恥ずかしがりなんですね?」

「えっ、えぇ。まぁ」

「童貞ですか?」

「ぶっ!」思わずコーヒー噴出した。

 飛散したコーヒーは天照さんに届く前に、光の壁に遮られて消えていく。流石は神様。

「す、すいません! 飛ばしちゃって!!」

 えっ! なに? 昨日も聞かれたけど、神様の間では挨拶代わりに「お前童貞?」って聞くのがムーブメントなの?  

「あぁ。気になさらずに……」と天照さんが言う。

 神を前にして、えらい非礼を働いたにも関わらずこの対応。まさに神。

「……」俺が沈黙していると、マスターが布巾を持ってやって来る。

「すいません。借ります」テーブルの上をススゥ~っと拭き、

「えっと、今の質問はなにか意味が?」と尋ねてみる。

「童貞でなくてもいいんですけど、童貞であった方がいいと言いますか、なんと言いますか」

 天照さん。童貞連呼しすぎです。 

「この時代の貞操観念は分かりませんが、他人と交わらないというのは、私の時代では価値があることなんですよ」


 なにそれ初耳!

 その言葉、全ての童貞に聞かせたい!!


「他者と交わっていない純潔。それを守るということは純潔を神に捧げる行為なんです」

「守りたくて守ったわけではないんですけど」

「結果そうなれば一緒ですよ」

「そうですか」

「えぇ」天照さんはニコニコ笑っている。

 天然のサディストの顔をしておられる。

「童貞とは神への供物を捧げること。つまり神に対して共感しやすいんです」

「共感ですか」

「感じやすいってことですね。はい」

 三十歳まで童貞を貫き通すと「魔法使い」になれるという都市伝説は知っていたが、まさか「神様」とお近づきになれようとは、世の中はわからん。

「別に童貞ではなくてもいいんですが、そのほうが話が早くて助かるんです」

 感じやすくて、早いですか。そうですか。

「それを踏まえた上で本題に入りますけど、よろしいですか?」


 天照さんはグラスに残ったレモンスカッシュをストローで飲み干す。

「あっ、はい。お願いします」ついに来たか。来てしまったか。

「構えないでくださいね。別に取って食おうってわけではないんですから」

 そう言って天照さんは軽く手を合わす。


 すると、ポンっと音がして、目の前に、あの黒く、ずんぐりとした何かが現れた。


「私の弟の須佐之男命です」

 あうあう。

 薄々そうじゃないかと思っていたが、この黒いスライムは須佐之男命であるらしかった。


「おう! 豊田穣久しいな」 須佐之男命が言う。

「シュールだ。シュールの極みだ」

 この汚らしいスライムが、日本の英雄譚に登場する須佐之男命であるとは。

「汚い格好してますでしょ? とてもじゃないですけど三貴子には見えませんもの」

 三貴子。三貴神とも呼ばれる天照大御神、須佐之男命、月読命の神様のことだ。

 勉強してきてよかった。

「姉上。これは御無体な。我がこのような姿なのも全ては……」

「黙りなさい。須佐之男命」

「はい……」一瞬にして須佐之男命は黙りこくる。

 姉弟のカースト制度はいつの時代も変わらないらしい。

 天照さんは先ほどの穏やかな表情とはうって変わって上司の顔をしている。

 仕事とプライベートを分ける性格なのだろう。

「豊田さん。いまは故あって、黒い汚物になりさがっておりますが、これでもこの須佐之男命は日本を代表する神の一柱なのです」

「は。はぁ」 須佐之男命といったら、それはそれは有名な神様だもんな。

「昨日も一緒に氷川神社に向かう最中、勝手に懐から逃亡し、行方を晦ませる体たらく」

 氷川神社。そういえば総本社が大宮にあったな。

 祭神は須佐之男命、貴稲田姫命、大国主だったか。

 それであんなところに転がっていた。

「昔話のおむすびころりんみたいな逃げ方しやがって」

「おう! 豊田穣! 下賎の者が神に向かってその口の利きよう! 覚悟は……」

「須佐之男命! 黙りなさい!」

「はい!」 

 なんだこのコント。

 完全に調教されとる。

「お礼というのは他でもありません。豊田さん。この須佐之男命に代わり、しばらく神をやってみませんか?」

「へっ?」

「この須佐之男命の……」


 ブチブチィッー!


 天照さんは笑顔で須佐之男命の身体の一部を素手で毟り取った!!!

「姉上ッーーーーー!!!」

「黙りなさい!」

「はいぃぃ!!」

 えぇーー!?

「概ね一割とはこの位ですかね」

 天照さんは掌に十分の一くらいの須佐之男命を乗せてこちらに向ける。

 黒くプルプルしてはいるが、切れ端から内部の液体のようなものが漏れ出し、ビクンビクンと鼓動を打っている。

 色が赤かったら、まんま心臓だ。

「少なすぎましたか?」天照さんはニコリと微笑んだ。

 毟り取られた肉片から液体がビュブッブブッと周囲に飛び散っているが、付着する前に天照さんの光の壁によって一つ残らず消滅させられている。

 そしてジロリと須佐之男命を見やり、

「もう少し欲しいみたい、ね?」表情を変えずにそう言った。

「と、豊田穣ッ!!」

「天照さん! 十分です!! 十分すぎます! 人間にはそれ以上は過ぎた礼です!!!」

「そうですか? 遠慮されずともいいですのに。ではどうぞ」

 そう言って、掌の、概ね一割分に引きちぎられた須佐之男命を俺の前に差し出す。


「?」これはこのまま受け取ればいいのだろうか?


 いや、その前に、


 コレは受け取ってしまっていいものなのだろうか?


 三十歳。無職。童貞。その俺が神?  須佐之男命の代わり? 神をやってみませんか? 

 神? 誰が? 俺が? なんで? なにすんの?


「そんなに難しく考えなくてもいいですよ? なにかしら義務があるわけではありませんし、もし神になりたくないというのであればそれはそういう運命だったということですから」

「そうじゃ、そうじゃ。我なぞなにもせなんだぞ」

「須佐之男命、黙りなさい」

「はい……」


 頭の中でいままでの人生が思い出される。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、その後の人生。どこを切り開いてもたいした努力もなく、惰性で生きてきた。なにかを成し遂げたことなどなく、なにかを完成させたこともなく、ただただ、生きて、たいした思い出もなく、人を避け、付き合いを避け、ついには独りぼっちになって親に甘えながら現在に至る。恥ばかりを思い出す。他に思い出すことなどなく、ただただ恥の多い人生だ。そんな俺がただ落し物をを拾っただけで神になる? そんなことが許されるのだろうか? 神を前にして言葉は意味をなさない。だが、これは俺自身の、豊田穣の物語なのだ。悩むなら、迷うなら、それは言葉にしなくてはならない。

 

「……俺はいままで怠けて生きてきました」

「はい」天照さんはゆっくりと頷く。

「たいした勉強も、努力もしないで、この年まで生きてきました」

「ははっ、屑じゃ、屑じゃ」

「須佐之男命……」

「……」

「同級生の人生を羨む一方で、楽な方へ楽な方へ逃げ、いまだって世間に顔向け出来るような身分じゃありません」

「はい」

「昔、夢がありました。すぐに諦めました。夢なんて追っかけるのは馬鹿のすることで、格好悪いものだって思ってたんです。自分には才能がない。そんな言葉で誤魔化して逃げました」

「はい」

「いままで一度だってなにかをやり遂げたことなんてなかった。ただ言われるままに生きてきて、それさえ投げ出して、今に至ってます」

「はい」

「それでもなんとかしたくって、出来なくって、怖くって、引きこもって、何もしないで、ただ生きて」

「はい」

「わからないんです。これからの展望も夢もなくって、どう生きたらいいのかさえわからないんです」

「はい」

「そんな俺に、神様なんて勤まるんですか?」

「わかりません」

「どう考えても無理じゃろ」

「須佐之男命!」


「グァァーーーーッ!」あっ、本体が消し飛んだ! まぁいいや。


「豊田さん」

 天照さんはいまの出来事がなかったかのように、優しく諭すように言葉を紡いだ。

「私には現世の生き方はわかりません。豊田さんがいままでどの様に生きてこられたかも、今後のどのように生きていくのかもわかりません。神になってどうなるのか? それもわかりません」

「はい」

「神とはただ在るだけなのです。世界には人に生き方を指し示す神もいますが、私たちはただ在る。それだけの存在なのです」

「はい」

「神になってどうなるのか? どうしたいのか? それは豊田さん自身で決めてください。人を助けるのもいいでしょう。人を殺すのもいいでしょう。信仰を求めるのも、求めないのも自由です。なにもしたくないというのであればなにもしなければいいのです。貴方が貴方である限り、私たちはなにものも制約しませんし、罰することもありません」

「はい」

「ですが……変わりたと思うのでしょう? 変わりたいと願うのでしょう?」

「はい」

「なら貴方が変わるのは神になることによってでははありません。豊田さん自身の意思によってです。貴方が変わろうとすることと、神になることは何一つ関係はありません」

「はい」

「神になることはきっかけの一つになるかもしれません。あるいはならないかもしれません。ですが、貴方に変わろうという意思あらば、世界は貴方が変わることを止めることは出来ません」

「はい」

「意思を持ちなさい。意思を持ったらば言葉にしなさい。言葉にしたなら行動しなさい」

「はい」

「貴方自身を変えるのも、世界そのものを変えるのも、結局はただの一個の人の意思です」

「はい」

「考える時間が必要なら待ちましょう。答えを出すのに時間が必要なら、悠久の時を持って待ちましょう。考え、悩み、迷い、辿り着いてください。貴方自身の答えに」

「……」

「必要ないようですね」 

「はい」

「貴方の口から答えを聞かせてください。貴方の在り方を言霊に乗せてください」


「俺は……豊田穣は、神になります」


「ならばこの瞬間。豊田穣は天照大御神の名において新たなる神に名を連ねます」

 天照大御神が須佐之男命の肉片を中空に手放すと、俺の心臓付近にくっつき、溶け込むように身体に消える。


「これより荒覇吐豊穣命と名乗り、己が朽ち果てるまで神として生きなさい」

 

 そして俺は神になる。


 まさか板橋区の喫茶店のテーブルでこんなことになろうとは、神様だって思うまい。

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