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第○三話 魔王の存在

godaccel、いきます!


「魔王が……限界している?」

 キュリアスの言葉に一瞬二人は固まった。御伽噺の中の架空の魔物、魔王。そんなものが事実存在しているという現実、しかも既に限界しているとなるとそれは笑えない冗談だ。

「人間と我らとでは魔王と呼ぶ条件が少し違うようだが、今回の魔王は我らにも人間にも当てはまる、これは歴代最高の魔王だ。一応言っておくが、奴は人間の言う危険度ではGクラス……純色竜(カラードラゴン)に匹敵する」

 キュリアスはそこまで言ってから、否、と自分の言葉を打ち消した。

「今回の魔王はG以上の異例だ。奴は純色竜(カラードラゴン)の中でも最も強い二頭、白竜、黒竜を使役しているのだからな」

 ごくっとルンディアナとギルダーが息を呑んだ。

 純色竜(カラードラゴン)は一般に千人単位の隊で討伐する魔物だ。そんな竜の頂点たる二頭を両方、まさに規格外という言葉がピタリと当てはまる。

 しかしギルダーにはそれ以上に不可思議な事があった。それはキュリアスがどうして人間である自分達にこんなことを聞くのかという疑問を解決するようなものだ。

「……魔王は、魔王じゃない?」

 ギルダーの短い言葉に、今度はキュリアスが納得を示した。

「そう、今回の魔王は確かに魔界を統一している。しかし、反対勢力までは潰し切れていない、我のようにな」

「あなたはどうして従わないのかしら?」

 ルンディアナが当然のごとく疑問をぶつけた。

 しばし回答に時間を要したキュリアスだが、確かに聞こえる声で返してきた。

「魔王の理想に、我は夢を見ることが出来なかったのだ。故に我は魔王に反発した」

 キュリアスはそれだけを告げて、黙る。二人もそれ以上は聞くのをはばかられた。

「私達はもう行くわ、貴重な情報ありがとね」

「礼には及ばない。数百年と生きてきたこの身、最後の最後で役にたったと思えば気が楽になるというものだ」

「……最後?」

 頷く。

「ここに魔王側の軍隊が近付いて来ている。お前達だけでは逃げきれないだろう。そこで我が殿をする。百程度の軍ならば、我にだって勝ち目はあるからな」

 明らかに強がりというのは見て取れた。

 だからルンディアナは反対しようとしたが、それはギルダーによっておさえられる。

 ギルダーには分かったのだ、強がりに隠れた、キュリアスの誇り(プライド)というものが。だから止めなかった、止めることが出来なかった。

「地上までは我が連れて行こう」

 翼が広げられる。有り得ない旋風を巻き起こした翼の風が地面を突き刺す前、キュリアスはルンディアナとギルダーを抱えて、一言、

「口は閉じていろ。舌を噛むぞ」

 そう言った。

 次の瞬間、光がそこの空間を包み込み、天井をぶち抜いた。

 そして羽ばたいていた翼は三人を一気に空まで運んだ。 そこでルンディアナの目にも、ギルダーの目にもはっきりととらえることが出来た。

 空を覆う、魔物の大群。犇めきあうあれらはもはや、群体と呼ぶに相応しいものだった。

 キュリアスは着地、二人を下ろしてから背を向けた。

「あれと……戦うの?」

「我だけだ。ギルダー、ルンディアナ、さっきのこと、誰でもいい。頼りになる者に伝えてくれ」

「……」

 ギルダーは頷き、動こうとしないルンディアナをひっぱって帰った。

 それを見送ったキュリアスは、やがて大群に目を向けた。

「あれが敵か。あぁ、血がたぎるのぅ。さぁ始めようか。――――殺し合いを!」

 キュリアスは手を後ろに引き絞り、全身のバネを利用して突き出した。


 大群に、穴が空いた。


 空いた穴にいたであろう魔物は、空から落ち、受け身すらとらず頭から墜落していった。

 遠当て。キュリアスが得意とし、竜人(ドラゴンヒューマン)が愛用する空間跳躍型打撃武術だ。

 だが、大群が減った様子はない。

 戦いはまだまだ続くだろうが、それは歴史に書かれることはない。

 しかしキュリアスは思う。


 ギルダー、ルンディアナ……後は頼んだぞ。



天犬さん!

カモン!

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