ヌヴェル32 風邪
日曜日、勘太は風邪をひいた。
月曜日、母親の紗栄子に連れられて病院へ行き、風邪薬を処方してもらった。
紗栄子はパートを休んで、勘太の看病をした。
夕方、クラスの充君が給食のパンと学級だよりを届けてくれ、紗栄子が受け取った。
勘太は、終日熱にうなされた。
火曜日、少し熱が下がってきたが、まだフラフラする。
紗栄子は今日も休んで、勘太の看病をした。
夕方、クラスの明美さんが給食のパンと授業のプリントを届けてくれ、紗栄子が受け取った。
勘太は、クラスのみんなはどうしてるのだろうとぼんやり考えた。
水曜日、熱は更に下がったが、まだフラフラするし、頭痛もある。
紗栄子は、おかゆを作りおいて、パートに出た。あまり休んでもいられない。
夕方、クラスの友也君が給食のパンと社会見学の案内を届けてくれ、勘太が受け取った。
勘太は、真理ちゃんは家がこっちの方向なのに来てくれないのかなと思った。
木曜日、熱はかなり下がった。頭痛も和らいでいる。
紗栄子はパートに出た。
夕方、クラスの幸次郎君が給食のパンと学級だよりを持ってきてくれ、勘太が受け取った。
勘太は、部屋の窓のカーテンを開け夕空を眺めた。真理ちゃんの面影が浮かんだ。
金曜日、もうすっかり風邪は治ったようだ。
紗栄子は今日もパートだ。
夕方、インターホンを押したのは真理ちゃんだった。
どうしよう?どうしよう?と思っているところに、紗栄子が帰ってきた。
紗栄子と真理ちゃんの声が聞こえる。
真理 「勘太さんの具合どうですか?」
紗栄子「ありがとう。もうすっかり大丈夫よ」
真理 「よかった。私も風邪で昨日まで休んでいたんです」
紗栄子「そうなの。大丈夫?」
真理 「はい、すっかり」
紗栄子「来週からよろしくね。またうるさくなっちゃうわね?」
真理 「でもみんな言ってました。『勘太さんがいないと活気がないなぁ』って」
紗栄子「そおう、あれでも結構役に立ってるのね」
二人の笑い声が聞こえた。
勘太は、にんまりと笑顔になり、何故か身体の中がポカポカしているように感じた。
それは風邪の熱ではない、自分の心の中にだけ留めておきたい何かだった。




