表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だった俺は死に戻りして知った――魔王を殺せば世界が滅ぶので、今度は勇者を止めることにした  作者: ぽんぽこライフ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/125

深淵への扉

 海底神殿。石室。礎石の前。


 十人が立っていた。松明の光が石壁を照らし、礎石の紋様が微かに光っている。新しく刻まれた四つの力の痕跡が、古い書体と調和して輝いている。


「ここの下に——イルヴァーンの空間がある」ヴェルディアが礎石に手を当てた。「礎石を通じて——通路を開く」


「封印に影響は」フェリクスが計測器を構えた。


「礎石の構造を変えるのではなく——礎石の下の岩盤に穴を開ける。封印には影響しない。ただし——穴を開けた瞬間、イルヴァーンが気づく」


「気づいたら——何が起きる」


「分からない。だからこそ——防衛ラインが必要だ」


 配置が決まった。


 礎石の周囲にアルヴィン、ガレス、セレナ。聖剣の金色の光が石室を照らしている。ガレスの大盾が壁のように立ち、セレナの翡翠の瞳が集中している。


 通路にジーク、フェリクス、ヴァレリウス。退路の確保と計測と封印監視。


 そして礎石の前に——レイド、リーシャ、ヴェルディア、ミラ。先行隊四人。


「開ける」


 ヴェルディアが礎石に両手を当てた。三千年前の知識で——岩盤の構造を読み取る。弱い点を見つけ、そこに力を集中させる。


「レイド。お前の力を借りる。礎石を通じて——お前の魂の断片が岩盤に触れる。それを使って——道を作る」


 レイドが礎石に手を当てた。自分の魂の一部が石柱の中にある。その感覚を——手のひらを通じて辿った。


 石柱の奥に——自分の力が眠っている。それを通じて——さらに下へ。岩盤に触れた。硬い。だが——一点だけ、薄い場所がある。


「見つけた」


「そこだ。——押し通せ」


 レイドが力を込めた。岩盤の薄い部分が——砕けた。


 穴が開いた。


 直径は人一人が通れるほど。穴の底から——赤い光が漏れた。温かい空気が噴き上がり、石室に赤い霧が漂った。


「開いた——」


 全員が穴を見下ろした。赤い光の底に——何かが見える。建造物のような——構造体の輪郭。


「降りる。——ミラ、先に」


「了解」


 ミラが穴に身を躍らせた。猫のような身軽さで壁面に手足をかけ、降りていく。数秒後、下から声が上がった。


「着地。——広い空間がある。天井が高い。赤い光が壁から出てる。——安全だよ、今のところ」


 レイドが次に降りた。リーシャが続き、最後にヴェルディアが降りた。


 穴の下に広がっていたのは——。


「これは——」リーシャが息を呑んだ。


 巨大な空間だった。天井は目視できないほど高く、赤い光が全体を照らしている。壁面は滑らかに加工された黒い石で覆われ、規則的な紋様が刻まれている。


 だが最も驚くべきは——空間の中央に立つ構造物だった。


 塔。黒い石で作られた塔が、空間の中央に聳えていた。高さは百歩以上。螺旋状の構造が天井まで伸び、赤い光を発している。


 塔の周囲に——小さな建造物が点在していた。家のようなもの。道のようなもの。広場のようなもの。——街だ。小さな、模型のような街が、塔の周囲に作られていた。


「街——?」ミラが目を丸くした。


「三千年かけて——作ったのか。この空間を」レイドが呟いた。


 ヴェルディアが塔を見上げた。琥珀色の瞳に——複雑な光がある。驚きと、畏怖と、悲しみ。


「イルヴァーン——お前は——こんなものを」


 塔の表面に刻まれた紋様が——光った。赤い光が脈動し、空間全体が低く振動した。


 そして——声が響いた。イルヴァーンの声。夢の中で聞いた、穏やかで知性的な声。


「ようこそ。——私の箱庭へ」


 声は空間全体から聞こえた。壁から、天井から、床から。どこにいるのか分からない。


「姿を見せろ」レイドが剣の柄に手をかけた。


「焦るな。——まず見てくれ。三千年の成果を。私が何を作ったか。——お前たちの目で、確かめてくれ」


 赤い光が——塔の基部を照らした。そこに——扉がある。開いている。


「入れということか」


「入りたければ入れ。強制はしない。だが——見なければ、判断はできないだろう」


 レイドはリーシャとヴェルディアを見た。ミラは既に周囲を偵察している。


「罠の可能性は」


「罠なら——もっと早い段階で仕掛けている。ここまで来させた以上——見せたいものがあるのだろう」ヴェルディアが言った。


「リーシャ」


「行きましょう。——学者として、見たい」


 四人は塔に向かって歩き始めた。赤い光に照らされた道を。三千年の知性が作った、深淵の底の街を通って。


 塔の扉の前に立った。赤い光が脈動し、扉の奥に——暗闇が広がっている。


「入る」


 レイドが先頭で踏み込んだ。暗闇の中に——螺旋階段があった。上に向かって伸びている。


 四人は階段を上り始めた。イルヴァーンの三千年の成果を——確かめるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ