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第7話 私は実はあなたの婚約者です。

ぼんやりと…しかし、かなり近いところで大きな声がする。うるさいな。

ルシアはかぶっていた毛布を引き寄せて、二度寝の体勢に入った。


「この侍女をつまみ出せ!」


侍女が…何かお部屋で粗相でもしたのかしら。


「二度寝するな!起きろ!」

ガバリと毛布が引きはがされる。え?私?私のことを言っているの?


アルフォンソ様の掛布団の上に頭をのせたまま、ぎぎぎっと頭の向きを変えて怒声の方向を眺める。怒っているな。しかも…侍女と間違えてる。


まあ、そんなもんか。


じーっと怒り顔のアルフォンソ様を眺める。怒っていてもいい男だわ。


私の視線に気が付いたのか、アルフォンソ様が私を見て…ぎょっとした顔をする。


そう。侍女じゃありません。実は気が付かなかったかもしれませんが、貴女の婚約者です。昨晩一晩中熱を出したあなたの看病をしました。でもねえ、今まで3回ぐらいしか会っていないから…気が付かなくても仕方ないと思うけど、それだって私のせいじゃないと思うよ。


そんなことを考えながら、とりあえず怒鳴れるほどは元気になった我が婚約者を眺めた。



*****


驚いたことにその侍女は、かぶっていた毛布を引き上げて二度寝しようとしていた。ふざけるな!


「二度寝するな!起きろ!」


つまみ出せと言っているのに、護衛騎士も執事も固まったまま動こうとしない。


侍女のかぶっていた毛布を引きはがす。

侍女はようやく目を覚ましたらしく、僕の掛布団の上でゆっくりと首を回して僕の顔を見上げてくる。


げっ……


瞬きもしないで僕を見上げる若草色の瞳……


…ルシア嬢??






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