第5話 経費削減。
そんなこんなで、早、半年たった。
私個人に支払われる経費は、アルフォンソ様が経費節減を打ち出して本来の半分になったと聞いていたが、毎月、驚くほどの金額が支給される。まあ、王家の一員になるにあたって身ぎれいにして恥ずかしくない装いで、お茶会なぞを開いたり、と、いったところなのだろうが…今のところは王子妃教育が忙しくてそれどころじゃないし。
ごくたまに、王妃陛下のお茶会に呼ばれるけど。
まあ、ドレスは作る。流行に左右されないプレーンな形で作ってもらっている。あとは小物などを替えればいいし。つけ襟とか、レースとかを使えば着回しもできる。宝石類も最低必要なものはそろえた。残りは毎月違う孤児院に寄付している。決して強要したわけでも誘ったわけでもないが、スサナ様も協力してくださった。
休日にスサナ様と寄付する孤児院に出向く。馬車はなるべく目立たないようなものにしてもらうが、護衛はさすがにたくさんつく。
今日も二人とも地味なドレスだ。言われなければ…まあ…スサナ様は品があるからばれるか?王女と侍女みたいな感じに見えるかもね。
二人きりになった車内で、スサナ様が話し出した。
「…うちの国は、敗戦国でしたでしょう?孤児が多くて、教会からあふれるほどいたらしいです。農業指導に来てくださっていたルシア様のおじいさまとお父様が、農業に従事させて食べて行けるようにしてくださったり、何人かずつご自分の領に連れ帰って農業支援学校や試験場で勉強させてくださったんです。」
「ああ。聞いています。アルゴ地域はフルール国とこのスペーナ国との争いに巻き込まれてしまったようなものですものね。フルールの属国で…戦場になってしまいましたからね。うちの爺さんは農業が大好きですから、一からでもゼロからでも種をまきますよ。」
「うふふっ。今、アルゴは小麦の大産地になっています。これもみな、ガルーシア侯爵家のおかげです。本当にありがとうございます。」
「あら、スサナ様、それは違うわ。アルゴの皆さんが頑張ったのよ?うちの爺さんと父は少し手を貸しただけ。今だって、アルゴで新しく作った寒冷地用の小麦をうちの領で試作させてもらってるわ。いい農業技術者も育っているわよね。」
「……ルシア様……貴女がアルフォンソ様の婚約者でよかったです。」
「まあ、そう?王命ですから。」
「マテオ様が…国王陛下が併合国の王女である私をマテオ様の婚約者にしたのは、もう二度と争いは起こさないという決意なのではないか、と、そうおっしゃってくださって…」
「そうですね。そうであってほしいと私も思います。」
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経費の削減
公職に就く人員の削減
インフレの抑制
嗜好品の禁止…
公費は削りに削った。財政の立て直しをするのに、躊躇してもいられない。
派手な舞踏会も、抑え気味にして、回数も減らした。
王族に割り振られている予算は半分まで削った。半分にしても十分な金額ではあると思う。
貴族連中からは不平不満が上がってきている。
公共事業も滞りがちになる。金銭的にも、人員的にも。
中間搾取を防ぐために、工事の見積もりは精査している。この辺も…甘い汁を吸っていた貴族連中の不満の元なのだろうと見当はついているが、止める気はない。
もちろん、その反動で領民から不法なほどの税を取らないように、各領に目を光らせている。
何もかもを戦後の好景気のまま続いていると思い込んでいる年寄たちは、付いてこれなくなるだろう。タイミングを見計らって、老害を排除して、若い領主に切り替えていくつもりだ。
僕の婚約者殿の毎月の会計報告を見ると、程よくドレスを作り…まあ、無いわけにはいかないしな…
貴金属も毎月少しずつ購入しているようだ。
残りは…孤児院に寄付?まあ、すきにすればいい。予算内で暮らしてくれたら、何の問題もない。