第11話 お手伝い。
自分の領地で、母のお手伝いはしていた。跡を取る予定だったし。
ここは普通の家では、父の、というところなんだろうけど、家は祖父も父も、いわゆる農業バカ、みたいな人たちで、できれば《《余計なこと》》をしないで農業や植物のことだけしていたいような…結果、領地経営そのもの、事務仕事、管理業務は、祖母と母が担っていた。
母は箱入りのお嬢さまだったらしいが、嫁に来てみたら、新婚の夫がキラキラした目で
「僕は父とアルゴ地区の戦後の復興作業に行ってくるからね。あとはよろしく頼んだね。」
と言い残し…なんとそれから5年も帰らなかったらしい。語り継がれるガルーシア侯爵家の黒歴史である。母は仕方なく祖母に教えを請いながら、領地を経営して来た。うちの男衆が頭が上がらない所以である。
国規模の事務仕事などはもちろん初めてだが、まあ、なるようになるだろう。
私は午後から、書類が山積みにされた机を片づけ、掃除して、私の分の机をまず確保した。
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シエスタなど怠け者のすることだと思っていたが…うっかり眠ってしまった。
「病み上がりですからね。日常生活始めるのも体力使いますから。」
と、ルシアが慰めるような、満足するような…そんな口調で僕を起こした。
初めて昼寝なんかしたが、意外と頭がすっきりした。ルシアに言わせると、あんまり長く寝ないことがポイントらしい。
こりもしないで毎日ルシアは昼時に現れて、昼ご飯を一緒に食べ、僕に昼寝をさせ、午後の事務仕事を手伝った。
彼女が一番力を発揮したのは…僕が最も苦手とする老害…年配の貴族の爺さんたちのあしらいだった。彼らは、午後になると、陳情の日時が決まっているにもかかわらず、まるでサロンに集まる奥様方のように執務室の応対室に集まってくる。お茶を飲みながら情報交換という名の暇つぶしをしていく。苦手だった。
ルシアは一緒にお茶を飲みお菓子を食べ、笑いながらあしらっているようだ。
まあ、いいか。
念のため、僕の秘書官が付いているし。
ルシアは…夕方、と言っても6時くらいには、事務官たちに声をかけて切りのいいところで終わろうとし、7時には帰る。執務室から王子宮までぶらぶらと散歩し、着替えて8時には夕食。10時には僕を眠らせようとする。
「…いくらなんでも早いでしょう?子供じゃないんだから?」
「じゃあ、ゲームでもしますか?」
嬉々として隣の自分の部屋からボードゲームを持ってきてゲームを初めて…
遅くても11時には消灯。
規則正しすぎないか?
病み上がりだから、と、しぶしぶ付き合っていたが…
ルシアが来てから作業の効率が上がって、今までほぼ泊まり込みだったことが不思議なほどになった。