俺が執筆したロボ小説を妻に読ませてみた
えータイトルの通りなんですが、今現在わたしは長編ファンタジーロボ小説【オルスティアの空】という作品を去年の12月から投稿開始して毎日投稿しています。
以前投稿した短編【100万文字書き溜めた作者が書き溜めの重要性について語る】でも語った通り、毎日投稿出来るのはこの作品を何年も前から書き溜めて、100万文字程ストックがあるからです。
この作品を構想し始めたのが十年くらい前で、実際に書き溜めし始めたのが三年くらい前です。そして妻と結婚したのが七年前で、それ以前にも趣味でゲームを作ったり、小説を書いたりしてたのですが妻にはその趣味の事を一度も言ったことはありませんでした。だってそういう趣味って打ち明けるのはやはり勇気いるじゃないですか。
今まで趣味でファンタジー小説を書いたり、伝奇小説書いたりはしたんですが、私が本当に書きたかったのはこのファンタジーロボ戦記物でした。でもロボ物は難易度が高いのである程度別の作品でレベルを上げてから、集大成のつもりで書こうと思ってて温めてたんですが、いつの間にか結婚して小説を書くという事もしなくなりました。当然今まで趣味でゲーム作ったり小説書いてた事も打ち明けず何年か過ぎました。
でもやっぱり、脳内で構想を練り上げる内にどうしてもこの物語を書きたくなり、ある日を境に妻が出かけてる間とか、仕事中の帰りにスマホでこっそり書こうと思い少しずつ書いてたんですが……もう全っ然拉致があかない、こんなこっそりとちょこちょこ書いてたらこの長編を書き上げるまでに一体何十年かかるんだと、しかしこの作品を書きたいという欲求を抑えきれず……意を決してラノベ的な小説を書くのが趣味であることを妻に打ち明けました。
引かれたりしたら嫌だなと内心ひやひやしてたんですが、すると妻は
「えー凄い、めっちゃ読みたい!」
とかなりいい反応を示してくれてホッとしました。妻は結構アニメは好きで割と色んな作品は一緒に見てるので、そこまで抵抗は無かったのでしょう。
これで心置きなく小説を書けると安心したのですが、でもさすがに自分の書いたものを妻に見せるのはかなり恥ずかしく、私は最初は妻に読ませるのを拒否しました。
「え、読ませるのは絶対やだよ!」
「ええっ何でよ、お願い読ませて! ていうか絶対読む!」
しかし妻は意外に引きません。
妻はアニメは読むけど小説はラノベ含めて一切読んだ事はありません。ましてや、初めて読むのがロボ物って……ハードル高過ぎだろという思いと、素人の自分が書いた小説を身内に読まれるというある意味で尻の穴を見られるより恥ずかしい事をするのは絶対避けたい、しかし一方では書き溜めという誰の感想も貰えない孤独な戦いの中で、誰かに率直な意見を貰えるのは嬉しいかもという相反する想い。
「本当に読むの?」
「うん」
「俺の作品ロボット物だよ、見たことあるの?」
「ロボット物って鉄腕アトムみたいな?」
「いや違うよ、ガンダムみたいなやつだよ!」
「へー、凄いじゃん」
何が凄いんだよと、思わなくも無かったが、とりあえずここまで読みたがってくれるのは滅茶苦茶喜ばしい事じゃないか?と思い、私はとりあえず一章(約十万文字)書き上げる毎に妻に読ませる事をこの日決意したのであった。
いやしかしですよ、ラノベ読んだ事もない人にいきなりロボ物の小説を読ませるのはいくらなんでも無理がありすぎるのは確かなので、まずは僕の作品を読む前にロボ物がどういう物かを分かってもらう為に、まずは一緒にロボ物のアニメを視聴する事にしました。
文章でロボ同士が戦ってる情景を思い浮かべるには、アニメでのロボの戦闘シーンが頭に焼き付いてないと正直無理じゃないですか。
という事でとりあえず視聴するのはロボ物で一番無難なガンダム、それも女性人気の高い○EEDを選びました。これでロボ物に興味を持ってくれて、他のロボ物も一緒に見れるようになれば楽しいしという気持ちで。
そして開始するや否や。
「目大きいね、しかも皆同じ顔してない?」
何て失礼な! まあ文句言いつつもその後はちゃんと黙って一話を視聴したのは褒めてやろう。
「もういいや」
「え?」
しかし、いきなりのギブアップ宣言。
「あの、まだ物語始まってすらいないんだけど。しかもロボ殆ど戦ってないし」
「私SF興味ないみたい」
それでよく俺の小説読むなんて言えたな! まあ俺の作品はSFじゃなくてファンタジーな世界観だからまあ……ん? ファンタジーな世界観のロボ? といえばあれがあるじゃないですか、なろうのロボ物で最も有名で、スパロボ出演まで果たしたあの作品が……あれなら老若男女楽しめるし、妻はファンタジー物は好きだし、ロボ物に興味無い人でもロボ物好きになるきっかけになるかもしれないと。
という訳で例の作品を一緒に視聴する事にしました。
「これファンタジー成分多めだし、ロボ物好きじゃなくても楽しめるかもしれないよ」
「本当? じゃあ見てみるね」
そして冒頭であるじゃないですかロボットバトル。すると、開始早々携帯をいじり出す妻。
「え、もう見ないの?」
「うん、やっぱりロボット物は興味湧かないみたい」
「……そうか残念、じゃあ俺の書いたやつも読まないでしょ?」
「それは読む」
「あ、そうなの」
え、読むの? てか読めるの? まあどうせ読まないだろうけどとりあえず大手を振って小説を書けるようになっただけでも恩の字か、と思い、私はそれから【オルスティアの空】の第一章を書き始めた。プロットは既に出来ていたので、約三ヶ月くらいで第一章 約13万文字が完成した。
と、ここで一応妻に聞いてみた。
「一巻分くらいの所まで完成したけどどうする?」
「読む」
本当に読むつもりなのか? ラノベも読んだ事無い、ロボアニメも一切興味無い妻が、俺のロボ小説を。
どうせ読んだ所ですぐに投げ出すのは目に見えてるが、まあでも物は試しにとりあえずパソコンを渡してみた。
すると思いの外、真剣に読んでくれてるではないか。あまり読み慣れていないようでペースはゆっくりだし、読めない漢字も多いが
「袈裟斬りって何?」「刺突ってどういうの?」
「交錯って何て読むの?」「翻すって読み方は?」
と私に読み方や意味を尋ねたり、自分で調べたりしながら意外にもじっくりと読んでくれている。時にはクスッとする事もあったりで、自分の作品がちゃんと読まれてる事に恥ずかしさもありながらそれ以上に嬉しさもあり。
しかし、やはり謎が残る。妻の頭の中でロボットの戦闘シーンはどうなっているのかと。
「ロボットの戦闘シーンイメージつくの?」
「うん、大体オッケー」
本当に!? ロボット物の戦闘シーン見た事無いんでしょ?
まあ本人が大丈夫だというんだからこれ以上野暮な事は言うまい。一応ガンダムみたいなもんがバシュバシュ戦ってるところ想像しといてと補足はしておいた。
そして何日かかけて第一章を読み終えた妻に尋ねる。
「どうだった?」
すると「凄い面白かったよ! 続きまだ?」と言ってくれた妻。
しかもこのシーンがよかったとか、この文章の表現が素敵だとか、お気に入りのキャラは○○だとか言ってくれる。ちゃんとしっかり読んでくれてるようだ。
身内とはいえ、生の感想は凄く励みになる。しかも続きを望んでくれている、これ以上に書く意欲が湧くことはない。
とりあえず私は百万文字、第七章辺りまで書き貯める事を決めていたので、完全なる孤独な戦いではなくなった事が非常に頼もしい。そして私はいつの間にか妻に面白いと思って貰える作品を、そしてあわよくばロボ物に興味無い妻をロボ物好きにさせたいという目標を掲げて作品を書いていた。
そして三ヶ月後、第二章が完成。
妻に報告すると「読む!」と凄く乗り気で読んでくれた。そしてまた言葉の意味とか読み方とか聞かれながら、ゆっくりとではあるが全部読んでくれたみたいで、そして二章は一章より良かったと言ってくれた。
「結構ウルっときて泣きそうになったとか」「二兎を追う者何とやらと言いますが、あなたの敗因は兎を捕えるつもりで立派な狼を捕えようとしてしまった事です、そりゃ噛みつかれますって」という台詞が凄くかっこよかったとか、中々好評で私は嬉しくて、また続きを妻に読んでもらいたくて、すぐに三章を書き始めた。
そしてまた三ヶ月後、三章が出来上がり、再び妻に読ませる。これまで私は妻が私の小説を読んでいる間は、妻が集中出来るように少し離れた場所で漫画を読んだり携帯をいじったりして暇を潰してたんですが、何となく今回はどんな感じというかペースで読んでるのか気になって、隣で暇を潰しつつちょっと画面を横目で覗いててみたんです。
するとかなりゆっくりとじっくり読んでる部分と、滅茶苦茶高速でスクロールしてる部分があるではないですか。私は堪らず尋ねました。
「え! 読むのめっちゃ早いとこない?」
すると妻はあっさりと答える。
「うんロボの戦いの所は基本飛ばしてるから」
その言葉に俺は衝撃を受けた。
「えええーっ!、ロボ物小説で、ロボの戦闘シーンを……メカアクションシーンを飛ばしてるだと!?」
そう妻は、ロボ物である我が作品のロボ戦闘シーンをすっ飛ばして読んでいたのだ。
ロボの戦闘シーンやメカアクションの無いロボ小説なんて、ヒロインのいないラブコメ、肉と野菜の入ってない餃子、スポンジとクリームの無いショートケーキみたいなもんでしょ!?
しかし妻は言う。
「でも物語は面白いから大丈夫、あと生身の戦闘シーンはちゃんと読んでるよ」
え、それは喜んでいいの? ロボバトルを飛ばして読んでも面白い作品ってこと? え、喜んでいいんだよね? と、まあとりあえずポジティブに考える事にし、当面は妻に読ませる事をモチベーションとしつつ、四章、五章、六章、七章と書き上げていった。
妻はその後も私の作品を真剣に読んでくれている。巷ではNGとも言われている過去回想、しかも丸々主人公の師匠の過去回想である四章はめちゃくちゃ面白かった、一番面白かったと評価してくれた。
六章はかなり色々な出来事があり第一部完となる区切り。四章の次に面白かったと言ってくれ、六章の○○がよかったとか、○○って○○なの? とか考察までしてくれる。
妻が真剣に読んでくれてるのが伺える。とても嬉しい。モチベーションに繋がる。
だがしかし! 何故ロボットバトルを読んでくれない!? 何故だ! 私はラップの芯を砲身に見立てたり、布団叩きを剣に見立てたりしてメカアクションシーンを分かりやすく解説しようとしても全然相手にしてくれない。
主人公が跳弾を利用した兵器を使うシーンや、ロボットのリミッター解除、武器をパージして突撃するなど、私の拘りやロボ物としてとにかく熱いシーンがたくさん詰まっているというのに!!
と、いくら叫んだところで伝わらないだろう。まあ私の作品を読んでくれてるだけでも恩の字だということにしよう。
そして妻は現在七章を読んでくれている。勿論今もロボ戦闘シーンはすっ飛ばしている。
……ロボ物に興味の無い妻をロボ好きにさせる為の道は、果てしなく遠い。
こんなエッセイを読んでいただき誠にありがとうございます。
もしこのエッセイを読んで少しでも興味が湧いたら我が代表作であるファンタジーロボ小説
【オルスティアの空】を一読いただければ幸いです!
宣伝みたいになって申し訳ないですが宜しくお願いしますm(_ _)m