第9話
次回、最終回!
翌日、珠希は個人の突入に向けて準備をした。
(……本当は、使用したくねぇっすけど)
チョッキを中に忍ばせながら、そう思う。
……しかし、相手が相手じゃあこちとら準備を重ねなければならない。
「装備、よし。さて」
一通りの準備を終えて、珠希は外へ出た。
▫▫▫
珠希が警視庁に着いた時、丁度車両を準備をしていた。
「自衛隊専用の重装甲車か。まあ、何かあったらアレですしね……」
ギリギリ見えない範囲から、様子を見る。
その数分後に、《メージェント》のメンバーが建物から出てくる。
それを見届けながら、珠希はインナー・イヤーでゾルファーに連絡をかける。
ゾルファーは直ぐに出た。
『タマキ君か、そろそろだな』
「ええ」
乗り込む姿が見える。
「《メージェント》側、動きましたね」
『頼んだぞ、タマキ君』
「……はい、向かいます」
珠希はバイクのエンジンをかけ、走りだした。
▪▪▪
珠希が現場に着いた頃には、バリケードが張られ両方の攻撃が行われていた。
「さて、僕は」
裏口から侵入するのが、妥当だろう。
傍観している一般人の中を通りながら、建物の裏へ回る。
念のため、拳銃を手に持ちながら裏口へ接近する。
(よし、ここまでは完璧だ)
無事に回り込めたが、問題はここから先だ。
裏口のドアノブに手をかけて、変異で鍵を開ける。
「突入!」
ドアを勢いよく開け、中へ入る。
周りを確認しながら、上の階へ上がっていく。
「……侵入は許さん!」
二人の男性に阻まれた。
マントを着ていることから、《反組織部隊》の輩だろう。
(こっちから入ることも想定してたんすね……だったら!)
珠希は、煙玉を出して発煙線を引き抜く。
そして二人の目の前に投げ込む。
「その手には乗らねぇ!」
一人が言った瞬間、煙が立ち込める。
(今のうちッ!)
珠希は煙に飛び込んだ。
そして二人に対して拳銃を放つ。
「「!?」」
煙が消えると、二人の肩から血が流れ、手には手錠がかけられている。
「貴様、いつの間に……?」
もう一人の方が、言う。
「これでも、FBIの一員なんでね。これくれぇ余裕さ……あと、一応は致命傷の傷じゃあねえから、そこだけは感謝しな」
二人は苦虫を噛んだような顔をした。
「この先に、行かせて貰うぜ」
そう呟いて、珠希は奥へ進んだ。
▪▪▪
珠希は、とある部屋を通った時だ。
「……だ、誰か、たす、け……」
小さな声が聞こえた。
(……ッ!?)
この声は、汐莉の声だ。
外の騒がしさを聞いて、助けを呼ぼうとしているみたいだ。
案の定、鍵がかかっていたが自身の変異で開ける。
部屋は倉庫として使っているみたいだ。
電気を付けると、そこには汐莉の姿があった。
「……珠希君!」
「汐莉さん!」
珠希は直ぐに彼女へ駆け寄り、手足に結ばれていたロープを切った。
「良かったっす、汐莉さん。無事で……」
一先ず、彼女が生きていて良かった。
「外、騒がしいけど……何かあったの?」
汐莉が聞く。
「《メージェント》が、今ここで《反組織部隊》と戦っています」
そう返すと、汐莉は目に涙を溜める。
「それだったら、玉座に早く行って欲しいわ。アイツを、止めて……!」
「分かりやしたよ、汐莉さん。動けるようだったら、ここから逃げてください」
「………」
汐莉は口唇を噛み締める。
その表情を見て、三島武瑠を止めたいのは彼女の本心だと確信した。
「さっきの言葉、取り消します。動けるようになったら、来てください」
彼女に言葉をかけて、珠希は部屋を出た。
「……ありがと、珠希君」
汐莉は小声で、そう呟いた。