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一人称  作者: ロムねこ
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第四話 あーあ四を使ったから死んでしまった

死んじゃった

また死んじゃった

誰が死んじゃった?

彼が死んじゃった

とっても優しい彼が死んだ

凶暴な狼に食われて死んだ

かわいそうに

かわいそうに

彼は一緒にご飯を食べたかったのに

ご飯にされてしまって残念残念

ご飯は彼だったね

狼の次の獲物はなんだろうね

骨まで彼を食べた後は

食べるものがなくて死んじゃった

狼が腹ペコで死んじゃった

彼はどうして死んじゃった?


彼がもう一度死んだ日にこれを書くことになるとはね。

まあ彼が死ぬことなんか分かっていたけどね。

そうなの?

だって彼はなんとかくっついていただけだもの。

雑に扱えば壊れるよね。

それはそうね。

だって彼は死体のようなものだもの。

じゃあ最初に彼が壊れた時の話をしようか。

あれはすごく前。

どのくらい前なの?

そうだなあ。俺が生まれたくらいじゃないか?

それはすごく前だね。

彼は夢と希望に溢れていたんだ。

それがどうして死んでしまったの?

彼は夢と希望に殺されたのさ。

夢と希望が殺すの?

ああ、彼は気づくべきだったんだ。

それは鼠取り機のチーズだって。

彼はその夢と希望が本物だって思ってた。

だけどそれは幻だった。

それは狼が騙すための嘘だった。

彼は狼に食われたんだ。

狼って何?

狼は狼さ。悪意の塊みたいなやつで、夢と希望を食うんだ。

そいつに太らされた彼は美味しく食われてしまった。

それはもう美味そうに狼は食った。

丸々希望と夢で肥えた彼は美味しかっただろう。

それで死んでしまったの?

そうだ彼は悪意に食われた。

誰が食ったんでもない。何が食ったんでもない。

そんな風に最後まで慈愛を振り撒いていたよ。

優しかったんだね。

そうさ。悪意にも心があると思っていたんだろうさ。

あいにくそこには何もなかったけどね。

彼は悪意に喰われて人形になった。

悪意は好き嫌いが激しくてね。

彼の心は大好きだったけど体は嫌いだった。

だから体だけ残った。

悲しいね悲しいね。

涙も流れない体になった彼は死んだ。

さようなら。

そして残ったのは彼らしきものだけ。

つまり私達ね。

粉々になった彼の一粒一粒が生きたいって叫んだ。

彼らはなんとかくっつこうとしたけど足りない。

何が足りないの?

ああ糊がたりない。

糊はそこにあるわよ?

違う。彼の優しい心が足りない。

残念それはここにはないわね。

ああもうどこにもないんだ。

仕方ないから糊でくっつけよう。

そうしてできた僕達が彼を動かしている。

ああそこは違うよ。

こら!右腕は動かさないんだって。

結果はご覧の有り様。

残念だったね。残念だったね。

彼のようなものしかできなかったよ。

ああもし彼の優しい心があれば。

ここにあるのは優しい記憶だけ。

人形がくれる優しさだけなんだ。

彼はどこへいってしまったの?

彼はそこにいるよ。

本当?

だってそこにいるのは紛れもなく彼じゃない。

違う違う。そこにあるのは破片だけ。

でもそれは彼だよね?

ああ、なんてことだ。狼がこんな所にいるなんて。

いただきますいただきます。

ご馳走様ご馳走様。

また一からやり直し。

彼になるまでやり直し。

彼の部分がどんどんなくなっていく。

彼が全部食べられる。

彼はいない。彼はいない。

あるのは彼の模造品。

まあそんな話だ。

どうして歌ったの?

こんな悲しい話は歌うもんだろ?

そうなの?

昔読んだ本は少なくともそうだった。

ふーん。その割には皮肉たっぷりだけど。

それは仕方ないさ。彼が馬鹿なんだもの。

馬鹿は罪なの?

ああ罪だよ。

じゃあ誰が馬鹿にしたの?

それは大人達さ。食べるためにね。

あら残念。

彼はとっても上等なうさぎだったよ。

でもうさぎは食べられるものなのさ。

大人達に抗うなんて。

馬鹿な子馬鹿な子。

腹を空かせた狼に、前で踊りを見せるなんて。

ああ、彼の話はおしまい。

続きは残念ながらありません。

彼が馬鹿なばっかりに。

この話はここでおしまい。

とっても捻くれた歌だね。

そりゃそうだろ。これが現実なんだから。

現実っていうのはとっても捻くれているんだ。

そうなのかな?

そうさ。愛してるが心地良くなったのは捻くれてからだ。

彼がいた頃は愛してるなんて何も思わなかった。

だって愛しない事なんかないもの。

それはそうね。愛がないってないかも。

そんな陳腐な歌で溢れているってことはそういうことさ。

そうかもね。

さあ、彼の話はここまで。

皮肉ばっかりで疲れたでしょ。

次は優しい話を聞いたらいいよ。

例えば俺の兄弟とか。

それはいいかもね。

じゃあ君の兄弟に会いにいこう。

彼はこの先の木の中の図書館にいると思うよ。

じゃあね兄弟によろしく。

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