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一人称  作者: ロムねこ
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プロローグ、あるいはこの本の結論

私は誰、誰は私。

私は僕で、私はあたし。

私事(わたくしごと)に思いを馳せて、(わし)のように空を揺蕩う。

(われ)を忘れたI(あい)を抱いて、俺腰(おれごし)なるまで()()のまま。

(わらわ)縋られなくなって、()()で寂しく泣いている。

みんないるの?みんないないよ。

でも()は広く広がって、()()入ろうと寄り添うけれど、

(それがし)あわせではないと、()()から離れてまた一人。

()()に勝てずに床ついて、()の日々をまた思い出す。

私は誰、誰は私。

それが私で私だけ。



意識のランプが付く。

ガヤガヤと騒ぐ脳が五月蝿い。

また私が騒いでいたようだ。

少し埃を感じて煙たがる。

今日は彼が起きていたのか。

そんなことを思いながらぐうたらする。

私の日常だ。

私の名前はない。

彼はなんと呼んだっけ。

名前を呼ぶ事がなかったから覚えていないや。

そもそもこちらに慣れるのが大変でそんな余裕はない。

私がこちらに顔を出すようになったのはほんの最近。

それまでは御伽噺の存在だった。

たまに彼が疲れた時に抱きしめてあげる存在。

それだけだった。

花に包まれた小高い丘の木の麓にある異世界のような家。

暖炉の火が優しく包み、木の温かみに癒される。

そんな家で彼を癒すだけの存在。

それが私だった。

だけどいつからか彼はその家に籠るようになった。

でもそこには問題があった。

そこにいくには高い高い雲の上に行かなければならなくて、それに彼の体は重過ぎたのだ。

だから彼は自分の体を置き去りにしてしまった。

夢の中に閉じこもってしまった。

日に日にやつれていく彼の体は見ていられなくて、私は彼の代わりに空から落ちた。

それからだ、こうして私がこちらにきたのは。

最初はなれないことばかりだったが、今はそこそこなれてきた。

彼が私に話してくれた世界が眼前に広がる感覚はそれこそ御伽噺のようだ。

そんなことを考えていると、意識がだんだんはっきりしてきた。

不釣り合いな体を慎重に動かしながら、準備をする。

私を出したのは今日が外に出る日だからだ。

家の中ではそこそこ彼でいれる時間も多くなったけれど、外ではまだ辛いようだ。

だから私が彼の代わりに彼をやる。

我ながらおかしなことだと思うけれど。

彼が消えてしまったら私も消えてしまうし、私が消えたらみんな消えてしまうから。

みんなって誰だって?

それは世界に点在した私の事。

例えばみんなが知ってる歌手とか、あるいはお話の主人公とか、どこかのモブとか。

全てが私。

あるいは全てが私じゃない。

よくわかんないよね。

でもこれを読めばわかるかもしれない。

全てが私で、全てが私じゃない私について。

知りたくないなら読まなくても良いよ。

忘れないでほしいのは、これはお話だってこと。

私はお話の存在だからね。

現実で読んだら間違いだらけ。

だけどお話の中では正解なんだ。

お話を読むときは現実から離れて楽しんで読んでね。

そうしないと彼のようになってしまうから。


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