9話「独占欲」
「お父様、お気をつけて」
「ああアリーゼも体をいたわれ、猫と遊ぶのも大概にな。エミリー、アリーゼを頼んだぞ」
そう言って父は公爵家の家紋入りの馬車に乗り込みました。
父が馬車が出る直前に「また来る」
と呟いたのは、私の聞き間違いでしょうか?
「でも良かったですねお嬢様、リコルヌを飼えることになって、修道院の皆さんにも紹介しなくてはいけませんね」
「リコルヌを皆にも紹介しなくてはいけないの?」
エミリーの何気ない言葉に、心臓がどきりとした。
「嫌なのですか、お嬢様?」
「別に嫌という訳では……ただリコルヌと遊ぶ時間が減るのは悲しいし、リコルヌが他の人になでられたり、他の人にしっぽを立てて近づくのが寂しいというか」
言っているうちに頬に熱が集まってきました。
「お嬢様は本当にリコルヌが好きなんですすね」
「ええ、とても」
「大丈夫ですよ、皆と仲良くなってもリコルヌの一番はお嬢様ですから」
「そうだといいんだけど」
「私、洗濯物を取り込む時間なんでもういきますね」
エミリーは洗濯物干し場に走っていってしまいました。
一人取り残された私は、抱きしめていたリコルヌの背をそっとなでました。
「リコルヌが人気者になって、リコルヌの取り合いがおきて、リコルヌと添い寝出来なくなったら寂しいわ」
リコルヌに頬ずりをしていると、
『大丈夫だよ、ボクはアリーゼのベッド以外では眠らないから』
という声が聞こえました。
「えっ?」
今誰かの声が聞こえた気がするのですが……周りを見ても誰もいません。猫が話す訳ないですし、気のせいですよね?
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