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10話「屋根とはしごと仔猫と」


翌日、リコルヌを修道院の皆さんに紹介しました。皆さん快くリコルヌを受け入れてくれました。


修道女の一人がリコルヌにご飯をあげようとしたのですが、リコルヌはそっぽを向いていました。


私以外からご飯を食べないのを嬉しく思ってしまう私は性格がわるいでしょうか?


中庭に孤児の子たちを集め、リコルヌを紹介しました。


子供たちは「かわいい!」「なでなでしたい」「抱っこさせて!」と言って、目をキラキラさせ私の前に行列を作りました。


リコルヌは誰にも触られたくないのか、私の肩の上にいました。


子供たちが「アリーゼ様だけずるい! わたしも触りたい!」と言って騒ぎ出すと、リコルヌは私の肩から屋根に飛び移り、そのまま屋根の向こうに消えてしまいました。


子供たちが「あーあ、行っちゃった……」と落胆の声を漏らします。


私は消えたリコルヌが気がかりで仕方ありませんでした、でも子供たちを置いてリコルヌを探しに行くわけにも行かず困っていると……。


「行ってくださいお嬢様、子供たちは私がなんとかします!」


「エミリー」


エミリーが颯爽(さっそう)と現れて「みんなーーおやつの時間ですよーー! 今日のおやつはお嬢様のお父上であられる公爵閣下からのお土産、王室御用達の製菓店のパウンドケーキとクッキーとチョコレートケーキですよーー!」と言って、絵本に出てくる笛吹き男のように子供達を引き連れて、食堂へと去っていきました。


子供たちはおやつに夢中で、リコルヌのことを忘れたみたいです。


「エミリー、ありがとう」


私はエミリーにお礼を言って中庭を後にしました。





「リコルヌどこにいるの? お願い出てきて!」


リコルヌを探して裏庭まで来てしまいました。


「ニャー」


という声が聞こえ、見上げるとリコルヌが屋根の上にいました。


よかった遠くに行ってなくて!


「リコルヌさっきはごめんなさい、急に知らない人に囲まれてびっくりしたでしょう? 謝るから降りてきて」


リコルヌは屋根の上でのんきにあくびをしていました。


夕日が西の空に傾きかけています。リコルヌが夜になっても屋根の上から降りて来なかったら、凍えてしまいます。


それに(たか)やカラスなどに襲われる心配もあります。


もしかしてリコルヌは降りてこないのではなく、降りられないのしら?


「リコルヌ待っていて、私が助けに行くわ!」


私は近くにあったはしごをつかみ屋根にかけました。慎重に一段一段登っていきます。


はしごに登るのなんて初めての経験です、今まで図書室にある本を取るためのはしごにすら登った事がなかったのに、人は変われば変わるものです。


でも誰かを呼びに行っている間にリコルヌが鷹やカラスに襲われたら……!


私にしかリコルヌを助けられないのなら、躊躇(ちゅうちょ)している場合ではありません! 私はリコルヌの飼い主、親も同然、あの子を守る義務があります!


女は弱いですが母は強いのです! 子供のためなら何でもします!


「ニャッ!」


リコルヌが驚いた顔でこちらを見ています。


「大丈夫よリコルヌ、怖くないからね、今私が助けて上げるわ……キャッ!」


もう少しで屋根に手が届くところまで来たとき、足をかけた瞬間はしごの()みざんがバキッと音を立てて壊れました。


『危ない、アリーゼ!』


真っ逆さまに落ちていく私に、誰かが声をかけてくれた気がします。



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