1話「王太子に婚約破棄されました」
短編「王太子に婚約破棄された公爵令嬢、父親から戦力外通告を受け修道院へ送られる」の連載版です。
1〜5話まで、短編版から加筆したものをアップしています。
6話から連載版の為に書いた内容です。
――アリーゼ・バイス・サイド――
学年の年度末に行われる進級パーティー。
私と王太子殿下の所属する一学年の生徒は全員参加していました。
私はその進級パーティーで、婚約者の王太子殿下から婚約破棄を言い渡されました。
壇上に登った王太子殿下のお隣には、桃色の髪と瞳の小柄な少女が寄り添っておりました。
王太子殿下の背後には殿下の側近の男子生徒が三人。さらにその後ろには大勢の男子生徒がおります。
王太子殿下は赤い髪をかきあげ、真紅の瞳を釣り上げ私を睨んでいました。
私が婚約を破棄された理由は、私が王太子殿下のお友達のレニ・ミュルべ男爵令嬢を虐めたからだそうです。
私は始め、レニ・ミュルべ男爵令嬢と言われてもどなたのことか分かりませんでした。
ですが、殿下のお話を聞いているうちに、殿下の腕の中にいるピンクの髪の美少女のことだと分かりました。
殿下がおっしゃるには、私がレニ・ミュルべ男爵令嬢の教科書やノートを破き、放課後裏庭に彼女を呼び出し彼女を噴水に落とし、また別の日の放課後、彼女を階段から突き落としたというのです。
男爵令嬢は王太子殿下の腕に自身の腕を絡ませ、大きく目を開き、口元を緩め、勝ち誇った目で私を見ていました。
王太子殿下の側近の三人と、三人の後ろにいる大勢の男子生徒が、私に向かって罵詈雑言を吐きました。
殿下に後ろにいる男子生徒は、私が知らない顔ばかりなのでおそらく下位貴族のご子息だと思います。
普段は記憶に残らないほどおとなしい方達なのに、殿下という後ろ盾を見つけた途端、ここまで豹変するものなのですね。
「レニ・ミュルべ男爵令嬢が何をしたというのだ!」「もはやこれはいじめではない殺人未遂だ!」「非道だ!」「人の心はないのか! この悪魔っ!」
彼らからの罵詈雑言はまだ続いております。
壇上に上がらなかった令息や令嬢もおりましたが、その方たちは面倒なことに関わるのが嫌なのか、冷めた目で私を見ていました。
彼らは私を言葉で罵ることはしませんでしたが、私を見る彼らの視線は侮蔑に満ちていました。
彼らは、私がか弱い男爵令嬢を虐める酷い女だと言っているようです。
味方のいない状態で私にできることはただ一つ。
公爵家の名に傷をつけないよう、凛として振る舞いその場を後にすることでした。
「婚約破棄、承知いたしました」
私はそう言ってその場でカーテシーをし、踵を返しました。
踵を返した瞬間、背後から卵が飛んできました。
その後もあちこちから卵やジュースが飛んできて、私の髪もドレスも汚れてしまいました。
ジュースはともかく生卵など会場にはありません。
彼らをは卵をわざわざ自宅から持ってきたのでしょうか?
用意周到ですね。そしてもったいないです。
あれだけの卵があれば何人の貧しい民のおなかを満たせたことか……。
生卵が降り注ぐ中、私はそんなことを考えながら会場をあとにしました。
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