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後日談1✳︎茶番反省会

たくさんの評価、ブクマ、誤字脱字報告ありがとうございます!


本編とはノリの違う、完全おまけの後日談その1です。

軽い気持ちで書いたのでご容赦ください…。

感想欄は一旦閉じさせて頂きました。ビビリゆえ。


予告しました成人の話はまた後日となります。

また気まぐれに後日談を投稿するかもしれませんので、よろしければお楽しみくださいませ。





「……おかしい」

『どうしたのさ、竜』

「なぜお前がついて来ている。天馬」

『あははは、なになに今さらー」


 ルーナ帝国を後にして、三日。街道沿いの旅人小屋も少なくなり、久しぶりに野宿するには肌寒い季節。

 身を寄せ合う俺とリュンヌ……と、天馬。


 二人で仲良く、仲良く旅をすると二人で決めた。二人でだ。そして二人仲良く連れ立って二人で二人で二人で


「落ち着いてください、ヌーベル様。木霊ですか」

「二人旅なのになぜ天馬まで一緒なんだ、リュンヌ!」


 しかも体温が高いからと馬体を挟んでの身の寄せ合いだ。不満しかない!


「え、でも、三年前だってハーヴィと一緒でしたし」

「あれは巡礼だっただろう!」

「今回も巡礼じゃないですか。自主的にですけど」

「……巡礼、なのか」

「ですよね?」

『リュンヌ癒しの聖女だもんねぇ。巡礼だねぇ』


 断罪の憂き目に会い、国ごと滅べともくろんでいたリュンヌも、皇帝のーー竜使いの錫杖の音に正気を取り戻して、もう一度土地を癒して回ると言い出した。


 そうか、巡礼なのか。仲良し二人旅じゃなく……想いを交わしたばかりの二人の……


 わくわく気分がぷしゅうと抜けて、ついでに竜気も乱れて本体に戻ってしまう。

 竜の幼生特有の赤の鱗は、寿命を取り戻したお陰でつるつるだが心はしおしおに萎びた。


『竜ってば邪険にしすぎー。ボク活躍したのに』

「勿論です!天馬さんがいなかったら私もヌーベル様も生きてないですよ?ヌーベル様は寿命で、私はさくっと斬首ですよ。天馬さまさまです」

『でしょ?だよね!いい仕事したよね!

 まあボクもリュンヌと竜のお陰で、千年縛られた皇家との契約はよーやく終わってスッキリしたけど!』


 だからついて来たのか……。

 竜の体を丸めて尻尾を枕に不貞腐れると、リュンヌがうっとりとした声で語り出す。

 

「陛下の登場シーンは最高でしたねぇ。あれ徒歩で現れてたら、クレセント様の暴君ぶりの方にインパクト持ってかれてましたもの」

『だよねーやっぱ』


 天馬がドヤ顔で首を大きく振る。そのせいで風が起きて焚火が消えたので、小さい炎を吐いて火をつけると、リュンヌが伸ばしてくれた手に体を擦り寄せた。

 リュンヌはふふ、と可憐に笑う。

 

「せっかく斬首されたんで、デュラハンで死の贈り物祭りブラッドフライデー計画も捨て難かったんですけどね」

『え、そんな計画初耳……あれ、首なし騎士と馬デュラハンって、その場合ボクも斬首?』


 天馬がびくりと体を揺らした隙に、リュンヌの隣にのそのそと移動する。人形で隣に寄ると逃げられるが、本体にはむしろリュンヌからも寄ってくる。

 喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか……。


「元々は、土地の竜脈に注いでおいた癒しの力が、三年でいい感じに行き渡ってから暴走させて、異常回復で国土根こそぎひっくり返してやる計画だったんですよ。フルム様に邪魔されちゃいましたけど。あ、そう思うとフルム様、真の聖女!って感じですねぇ」


 リュンヌが楽しそうに笑う声を聞きながら、リュンヌが楽しければ良いと、目を閉じる。

 前回の旅では形代だったので眠りは不要だったが、序盤は帝都から離れた場所で竜気を保つことが難しく、中盤は距離がどんどん離れるので(略)、終盤は寿命が尽きかけたせいで(略)。竜気の節約のためにすぐ寝たフリをしていた。


 竜の本体はといえば、それほどたくさんの眠りは必要でないものの、水晶の檻から出たことで、幼生の体が成長する為にかなりのエネルギーを使う。

 八百歳児、と天馬に揶揄われるのも面白くないが、リュンヌに八百歳で幼生なら六歳の私なんてそりゃ赤ちゃんですよねぇと、昔の失言を根に持って責められるのも辛い。

 が、俺との思い出を大事にしてくれているのは嬉しいという、複雑な竜心だ。



『あれー?ボク清い心の処女おとめとしか契約できないはずなんだけどなぁ……』

「天馬さん、女の子は二面性があるものですよ?」

『リュンヌは敵と見做すと容赦はないが、心も体も清いぞ……ん?待て、天馬の契約?』

『うん?あれ、言ってないっけ』

「え、そうなんです?竜神様にも知らないことってあるんですねぇ」


 なにかトゲのあるリュンヌの言葉。

 経験上、無自覚に余計なことを言った時の雰囲気だとはすぐわかる。俺は馬鹿皇太子とは違って学習する竜だからな。



『癒しの力って、天馬との契約なんだよー。もちろんルーナも』

『なんと』


 祈りの力は竜神との契約なので今は失われているが、リュンヌもルーナもそれとは関係なく力を使えたのはそういうことか。

 リュンヌに関わることで、まだ知らないことがあったとは……。

 自身の未熟を噛み締めていると、天馬が曲げた足に長い首を乗せた寝る姿勢で、ついでの話のように付け加えた。



『元々、リュンヌはルーナの娘だからね。あの人、竜神のパパ竜との契約で二百歳くらいまで若いまま生きてたから』

『待て、衝撃の事実をさらっと暴露するな!』

「ちょっ、なんですかそれ!」


 目を丸くするリュンヌと共に跳ね起きた。

 半分目を閉じかけていた天馬は煩わしそうに俺を見る。おい、待て。なんだ俺が悪いのか。


『リュンヌがまだ卵だった竜の番だってわかったから、ルーナが卵から孵らない竜を心配してさ。地の気が回復した時代までリュンヌを()()すために、ボクを呼び出して契約させたんだよね』

『俺が卵の時の話だと……?つまりリュンヌは俺より年上……?』

「ものすごい片手間に半生語られてるんですけど。どう気持ちを整理していいのかわからないんですけど!」


 リュンヌが耳を塞ぐべきか、ちゃんと聞くべきか迷って手をバタバタとさせている。

 そういえば天馬は竜より長生きなのだったな。


『なのに、八百年近く()()でも地の気が回復した時代なんてないからさぁ。ほんと困っちゃったよー。竜も寿命尽きそうになってるし、これ以上はダメだなってこの時代に置いて帰ったけど』

『そうか、リュンヌがこの世に現れたのはお前が連れて来たからだったか。からと言って、それ以上、俺とリュンヌの運命の出会いに干渉することは許さんぞ』

「手遅れですよ、ヌーベル様。もはや建国から終末まで天馬さんの手垢だらけです……」


 リュンヌががっくりと肩を落とし、地面に敷いた毛皮の上に再び体を横たえる。

 おかしい。天馬が肝心な局面全てに関わっているではないか。これでは最重要人物が天馬ではないか。

 帝国は竜神の国ではなかったか。俺が主役ではないのか。……いや、皇帝にいいように使われていたのだった。

 ん?と、言うことは俺は正しく帝国の下僕であったと言うことか?皇家に都合のいいように帝史を捻じ曲げられたわけではなく?

 そういや、僕呼ばわりされてた祈りの祝詞でも竜の力使われてた。細かいことはどうでもいいかと思っていたが、あれが俺の小物感を決定づけたのでは?


『ボクがいなくちゃ……始まんなかった…くせ、に』


 天馬は満足そうな顔でぐうぐう寝息を立て、不快なセリフで言い逃げる。

 まぁ確かに、天馬の力があって今こうしてリュンヌと生きる未来を掴んだわけだが……。

 いや、待て。ルーナが余計な気を回さず、癒しの力で地の気を回復してくれれば俺は生まれたし、すぐにリュンヌと出会えて、二人で生きた後に寿命を全うできたのでは。


「さすが、クソ帝国の国母ですよねぇ。ほんと滅べばいいのに」


 あ、リュンヌも怒ってるのか。

 そうだな、天馬ごと滅べばいいのにな。


「天馬さんがいたから生きていられるけど、天馬さんがいなければもっと平和に生きていられたとは……」


 今までに見たことがないほど絶望した表情のリュンヌ。

 番の一大事に、急いで人形をとり、その背中からぎゅっと包み込んだ。

 びくりとするリュンヌだが、抵抗はせずに意識の抜けた竜の体を抱き締める力を強くする。


「だが、それでもこうして二人で居られるなら、俺はそれだけでいい」

「……それは私もです、けど」


 珍しく素直に答えたのは、泣き疲れのせいだろうか。それとも。

 なるべく優しく頬を撫でると、くしゃりと顔を歪ませて嗚咽が漏らした。


「わたし、親に捨てられたわけじゃなかった……っ」

「……ああ」


 ずっと気に病んでいたのだろう。

 クレセントはいつも、要らない子だから捨てられたのだと、ただの孤児だとリュンヌを嘲っていた。

 考えの足りないクレセントにそれを吹き込んだのは教会の人間だろう。

 リュンヌ自身もその言葉に傷ついてきたことは想像に難くない。

 ……そういえば、あいつらへのざまぁが済んでいなかったか。まぁ出て来なかったからな。



「良かったな」


 頰をすり寄せると、小さな返事が返ってくる。長年苦しんできたことから解放され、安心したのだろう。リュンヌは直に眠りに落ちた。

 形代では本体の成長が遅くなるため、見届けた後に竜に戻ると、寝ていた天馬が薄目を開けて不満げに呟く。


『ルーナが娘を捨てるわけないのにねぇ。むしろ親に捨てられたのは竜だよね』

『お前ほんと黙って寝とけよ。竜は番が一番だから、そんなもんなんだよ』


 そう、別に俺が捨てられたわけじゃないし、竜神の役目を押し付けられたわけでも……引き継いでいる代々の記憶も、竜は常にそんなものだと示しているから大丈夫だ。


『……あれ?そもそも竜の番じゃなきゃ、リュンヌはそのまま生きてられたんじゃ』

『それ以上余計なことを言うなら燃やして黒馬にしてやるからな』

『スミマセンデシタ』



 その後も、リュンヌが成人して俺が完全な竜体になるで、天馬との旅は続くことになる。





竜と天馬は幻獣同士なので、態度が砕けるという幼馴染設定…


お読みいただきありがとうございます!

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