後日談3✳︎番の成人
予告していたリュンヌ成人のお話になります。
7,000字超えてしまいましたがそのまま載せます!
色鮮やかな花飾りを身につけた数人の男女が、火を囲んでくるくると回る。
楽しげに笑いながら踊る彼らは、この祭りで、成人した証である房飾りを渡して求婚し、互いの伴侶を見つけるのだ。
「成人の儀で求婚、ですか」
村人の説明を聞いたリュンヌが、成人の祭りのご馳走に目を奪われながら嘆息する。
「皆さん早熟なのですねぇ」
見目麗しいヌーベルと清楚なリュンヌに近付こうとする若者達を牽制するように、ヌーベルはリュンヌの腰に手を回して引き寄せる。
「地方の農村では、成人即結婚という風潮も珍しくはない。とは言え、この祭りでの求婚は形式だけだろうな」
「形式?」
『だよねぇ。みんなもう爛れた空気がすごいよぅ』
「ただれ?」
処女の気を好む天馬が、げんなりとした様子で体を震わせる。
要領を得ないリュンヌが首を傾げるのを見てヌーベルが柔らかく笑い、リュンヌの背を押して先を促した。
「リュンヌが気にすることではない。この村に留まっては祭りの邪魔になろうな。行こう」
『そうそう。お邪魔さまー』
「はーい。お話ありがとうございました」
口々に引き留める声を無視して、二人と一頭はさっさと村を後にする。背中に不穏な圧を嫌と言うほど感じながら。
『この近くで野営は危険かもねー。少し跳ぼうか』
「それがいいな。ギラギラした気が満ちている」
『外の血を混ぜたいのかな。期待されても、竜は不能なのにね』
「ふのう?」
「リュンヌは気にしなくて良い。時間の問題だしな」
「はぁい」
首を傾げながらもにこりと笑うリュンヌと、本体に戻ったヌーベルを背中に乗せ、天馬は山をひとつ超えた場所へと跳んだ。
「どこかでリュンヌの成人を祝いたかったのだが、この辺りの村ではどこでも同じような風潮だろうな」
ヌーベルは結局の野宿にため息を吐くが、成人したてのリュンヌ自身は、天馬の体にもたれてすやすやと寝息を立てている。
赤ん坊の時に、遥かな昔より時を超えて親元を離れたリュンヌは、自身の正確な誕生日を知らない。
なので、孤児ではよくあるように、新年を迎えると共に歳を重ねてきた。
それ故に、この年明けに18歳になったとはいえ、暦で成人の儀を行う日である今日、成人しているかどうかは定かではないのだ。
『竜に変化がないし、まだリュンヌの生まれ時は来ていないんだろうね』
「だろうな」
ヌーベルは特に気にした素振りも見せず、リュンヌに寄り添うように体を横たえ、そのさらさらとした赤毛を撫でた。
『ほんと、竜はそういう欲がないよね。二人の周りは空気が綺麗で気持ちいいや』
天馬は満足げに目を細めたが、ヌーベルは少し不満そうに天馬を睨む。
「だからと言って、リュンヌの前で不能などと言うな」
『ごめーん。に、しても、この時期の人間はいつでも組んず解れつお盛んだよねー。今年は特に、人口が減ったせいもあるのかな。種を残そうとする本能的な?』
「その理屈で言えば、俺やお前の方が圧倒的に数が少ないだろう」
『幻獣は寿命が違うからねぇ』
そもそもの存在意義が違うのだと、父竜から受け継いだ記憶が窘めるようにヌーベルに流れてくるのを振り払い、今は天馬より一回りほど小さい大きさに育った本体に戻り、リュンヌの側に寄り添った。
それを見て少し笑った天馬は、誰に聞かせるともなく呟き、目を閉じる。
『竜とリュンヌが逝ったら、ボクも寂しくなって伴侶を探すのだろうねぇ』
ーーーーーー
夜半、ヌーベルは、寄り添っていたはずのリュンヌの気配がないことに気付いて目を覚ました。
やはりリュンヌの姿がなく、天馬が呑気にすぴすぴと鼻を鳴らして眠っているのを睨め付け、目を閉じてリュンヌの居場所を探る。
そう遠くない場所に佇んでいるのを見つけて、念のためにとゆっくり近づいて行くと、リュンヌは木々の少ない開けた場所で夜空を見上げていた。
『リュンヌ?』
振り返ったリュンヌの顔がどこか不安げに曇っているのを見て、ふわりと飛んで残りの距離をゼロにする。
形代を練ろうとする竜を制止して、リュンヌはその滑らかな鱗を纏った体に額をくっつけた。
「私、卵を産めるのでしょうか」
『は?』
思いがけない問いに竜の縦に伸びた瞳孔がぶわ、と開く。
「ヌーベル様は卵から生まれたのですよね?ならば、ヌーベル様のお母様が卵を産まれたのでは」
『いや、そうではない』
番の口から出た生殖の話にまだ少し混乱しながらも、ヌーベルはリュンヌに竜の生態を説く。
『俺が卵生なのは、竜神であるためだ。竜は番に体を合わせると言っただろう?人間である母と番った父竜は竜人となり、竜気で俺の卵を作った後はほとんど人と変わらぬ者となった』
とは言え、父竜との契約で200歳まで生きたという聖女ルーナと同じく、人となってからも人の倍以上の寿命を生きてはいたのだが。
「では、ヌーベル様にも人の弟妹がいらっしゃるのでしょうか」
リュンヌの言葉に首を傾げる。
父竜の死と共に引き継いだのは、竜の記憶のみ。父竜が人に近い者になってからのことは継がれなかったため、リュンヌの問いへの確実な答えは持ってはいないが。
『考えた事もなかったが、いたやもしれんな。とうの昔故、孫子がいるとしても、竜の血までは継がれていないだろうから、会ったところでわかるまいが』
「それもそうですね」
体を離したリュンヌが苦笑を浮かべたのが見えて、俺は竜の首をもたせかけるように傾げる。
「母の孫子は皇帝の一族ですけど、陛下や皇太子殿下に血縁を感じたことなどありませんもの」
孤独を吐き出したリュンヌが、俺の頭を撫でながら腕を回してくる。
八百年。俺の生きた時間とほぼ同じ分だけ、リュンヌは自らの時を失っている。
正しく出会って番うことができていれば、俺は何の疑問もなく次代の竜神の卵を産んで、人に近い者になって、リュンヌと共に生きて死んだのだろう。
『竜は番に出会うために生きる』
竜だけではない。生き物は、元を辿れば自分の命を継ぐために生を受ける。その中、竜と人間だけは、ただ自分のために生きることが出来る。
『余すところなく全て、俺はリュンヌのものだ』
竜にとって番は唯一。
すぐ側で光るリュンヌの瞳が揺れる。
番であることを明かして以来、ずっと、リュンヌの中に恐れのようなものを感じていた。
それが卵を産むと誤解してのことなのか、人でないものと番うことそのものに対してか、人のものではない寿命を生きることに対してなのかはわからない。なにせ不安にさせる心当たりが多すぎる。
番であることを感じられない人間であるからこそ、その全ての不安は仕方のないことだと理解できる。だが、それを良しとは到底思えないし、許せない。
だから、俺はリュンヌの不安を取り除くための言葉を紡ぐ。
『リュンヌの望みが叶うように俺は変わるだろう』
竜の瞳を細め、愛しいリュンヌの惚けた顔を映す。
その赤髪を撫でたい衝動に駆られ、やはり人型をとるべきかと考えた時、リュンヌがハッとしたように目を瞬いた。
「そ」
『そ?』
「それが困るんです!ほんと、そういうとこですよ!?」
口を何度かはくはくと開け閉めした後、急に眉も目もきっと吊り上げて怒られた。
なにが困らせたのかと首をうねらせ傾げる俺に、リュンヌは目元を怒らせたまましがみついてくる。
「それが不安なんです!なんだったら私は、今のままを望んでいます!ヌーベルさまの形代は眼福だし、竜体のヌーベルさまは可愛らしいし、天馬さんと一緒の旅も楽しいです!」
『……そうなのか』
少し思っていたのとは違うが、それも番の願いとあれば叶えよう、と心に決めたところでリュンヌの小さな手のひらが俺の頰の辺りを両側から挟んだ。
まっすぐに向き合うように視線を合わされ、鼻面の分だけ遠くに見えるリュンヌの瞳がゆらゆらと涙をたたえるのを見て心臓がぎくりと震える。
「……私の望むように、ヌーベル様が変わってしまうなんてーー今と違うものになってしまうなんて言われても嫌だし、第一重い」
『重い……』
少し傷付いてしょんぼりとする俺に、リュンヌが今度は困ったように眉を限界まで下げてしまう。
「私は、今のヌーベル様が好きです。だけど形代は姿を変えられるから、私の知っている人形のヌーベル様は、ほんとのヌーベル様かもしれないのが少し不安なんです。私が今のヌーベル様の顔が好きだと言ったせいで、ほんとのヌーベル様の姿に戻れないのではないかって」
『リュンヌ、それは』
「だから、違うんなら、ほんとの姿を見せて欲しいって思います。もしかしたら好きじゃない顔かもしれないけど、それでも、ヌーベル様が好きですから」
頰を真っ赤に染めて、微かに震えるリュンヌが俺の鼻先にキスをした途端、竜の心臓が燃えるように熱くなった。
そうか。リュンヌが恐れていたのは、自分の願うように俺を俺じゃないものに変えてしまうことだったのか。
自分が自分でなくなることより、自分の都合で俺を俺でなくしてしまうこと。
誰より清らかで、腹黒で、まっすぐで、素直になれなくて、たくさんの傷を抱えた癒しの聖女。
そしてなにより、俺の唯一。
愛しいと、苦しいほどに、愛おしいと心が叫ぶ。
俺が俺でなくなったとしても、きっとこの心だけは変わらないことがわかる。
「リュンヌ」
「ヌーベル……さま?」
竜気を練ることなくその場に現れた人形に、リュンヌがこぼれ落ちそうなほどに目を見開いた。
安心させるように微笑みかけ、手を伸ばすと慌てたように後ずさられる。
少し傷付いた。
「ああ、俺だ」
「え、あの……竜体は、」
高速で辺りを見回すリュンヌに、心の底から申し訳なく思う。
これが形代ではなく、竜人となった本体なのだとわかってはいるのだろう。
「すまぬ、リュンヌ」
「は、え、えぇと?」
「其方の悩みは全くの杞憂だ」
「そのようですね!?」
人形ヌーベルと全く同じ姿で謝ると、耳まで真っ赤になったリュンヌが両手で顔を覆ってしまった。
ーーーーーー
ウワァァァ。恥ずかしいぁぁいぁ!
勝手に深く考えすぎて、悩んで、性の話とかカマトトぶってとぼけまくって逸らし続けて、思い切って打ち明けたら全く無駄だったぁぁぁい!!
いつも通りの、いやむしろ血の通った分だけ夜目にも鮮やかに染まる肌のせいなのか、表情が増した分なのか、人形よりもずっと麗しいんですけどォォ!!
だめだ、直視できない、と顔を隠して悶えていると、柔らかな感触に熱くなった耳朶を摘まれた。
「ぎあっ」
「……柔らかい。それに、熱いな」
「ちょ、ぬべ、ぬーべるさまッ!?」
さすさすと指先で耳朶を弄られ、感動に震える感想をセクシーボイスで呟かれ、全身が沸騰せんばかりに熱くなる。
「形代では温度も感触もわからなかった。これは良いな」
「ふぎゃっ」
次いで髪を指先で梳かれ、後頭部に沿って撫でられる。ヌーベル様の手も、熱い。
色気のない悲鳴を漏らす私を、この上なく愛おしいと見つめるいつもの眼差しの奥に、ちらりと灯る熱に気付くと、もうそれが限界だった。
「天馬さんッッ!!」
『はいはーい。仰せの通りぃー』
私の絶叫のような呼び声に応え、颯爽と現れた天馬さんが私の襟首を咥えるようにして飛びあがる。
「リュンヌ!?待て、降りてこい天馬!!危ないだろう!!」
「え、この体勢怖っ!でもとりあえず全力で退避!」
『はーひ』
目を剥いて叫ぶヌーベル様と、口が塞がってるため間抜けな返事をする楽しそうな天馬さん。
勇気ある撤退を選択した私の体が、ぽーんと宙に投げ出される。
「ぎゃぁああっ!」
「リュンヌ!!くっ、竜体の戻り方がっ!」
『よいせーっと。大丈夫だよー竜人、夜明けには戻るからー』
「なにが大丈夫だ!!」
ぼすんと天馬さんの背中に受け止められて、慌てて馬首にしがみついた。ちょっ、洒落にならん高さですよ!
天馬さんはいつもみたいに跳ぶのではなく、普通に翼で羽ばたいて空を飛んでいるだけなのだけど、速い。
あっという間に聞こえなくなるヌーベル様の声に、ようやく冷静になった。
星の瞬く夜空を飛ぶ天馬さんの背中は、不思議なことに風を感じない。鬣をそっと撫で、その温もりに顔を寄せる。
「就寝中にすみません、天馬さん」
『ううーん。起きてたし覗いてたから大丈夫だよー』
「ひぇっ」
なにが大丈夫だ。
『竜人の成体に恥ずかしくなっちゃったー?』
「……なんですかあれ。人形の時はひたすら綺麗!って感じだったのに」
『そりゃあ生身の雄だもの。性欲も色気も出るでしょ』
「オ……」
そうか、雄。性別はないって言ってたヌーベル様に、そういう性的な空気が皆無だったのは、性欲がなかった故の……え、あれ性欲ですか!?耳をなぞる熱がよみがえってきて震える。
「いきなりあれはダメです、反則です」
天馬さんの背中に顔を埋めて突っ伏すと、天馬さんの笑い声が体を伝って響いてくる。
『二人してお目覚して、めでたいねぇー』
「おめざ……って、」
『ほんと、大きくなった』
しみじみと告げられる言葉に、さっきとは違う羞恥が込み上げてきた。
「……天馬さんは、赤ん坊の頃の私を知ってる唯一の方ですもんね」
『あは、竜人に殺されそう』
「私、それなりに寂しかったんですよ」
温もりに目を閉じて、記憶の限り、自分の幼い頃のことを思う。
「だから、母の願いで天馬さんに連れてこられたって聞いても、感謝とかできなかったです。母にも、天馬さんにも」
『だろうねぇ』
「だから、今から言うの、その辺りの分は差っ引いて聞いてくださいね?」
『んー?はは、わかんないけど、いいよー』
「たくさん助けてくれて、ありがとうございます」
天馬さんの首がぴくりと揺れるのを感じながら、天馬さんを伝って返ってくる、自分の鼓動に耳を澄ませた。
「私を産んでくれて、ありがとう。……お母さん」
見たこともない人だけど。
とんでもなく、お節介な人なのだろうけど。
貴女のおかげで、今、ヌーベル様といられます。
あのとんでもない奇跡のような、優しく美しい人と。
『……会いたくなった?』
誰に、と言う主語のない天馬さんの質問に、笑う。
会いたい人の何人かは、もういない。
その人達が遺した国も、もうすぐなくなってしまう。それも、私の願ったことだ。
「そうですね。自分から逃げたのに、変なの」
『大丈夫、追いかけて来てるからー』
「え?あ、ほんとですね」
後ろを振り返ると、確かにぐんぐんと近づいて来る竜らしい姿。
『あは、ほんと心配性』
「夜空の散歩もお終いですね。残念」
『ねー。……ね、リュンヌ』
「はい?」
『竜人と仲良くね。そしたら多分、ボクにも良いことがありそうな気がするから』
「……天馬さん?」
『リュンヌ、今までありがとうね』
「なん、」
なんですか、それ。まるで、お別れみたいなーー
言いかけた言葉が、再び宙に投げ出される感覚に途切れた。
『リュンヌぅぅぅぅーーーーぐふっ!!』
「天馬さん!?」
混乱するまま、つるりとした鱗のついた背中ではなく柔らかな竜の腹の上に落ちて、鈍い呻き声。
それに構わず、私は慌てて体を支えながら天馬さんを探す。
夜空に浮かぶ、美しい翼と真っ白な馬体。
神秘的なその姿で、いつもの軽い口調ときらきらした瞳で、天馬さんは確かに、優しく微笑んだ。
『二人の残りわずかな未来に、幸多きことを』
そして、かき消すように跳んだ。
『……相変わらず、一言多い』
「ヌーベル様、天馬さんは……」
『リュンヌと天馬の契約は、ルーナとの契約ありきだからな。契約を果たして戻ったんだ』
「天馬さんとの契約は、私をこの時代に運ぶことで終わりだったのでは?」
『番である俺と添わせるために、だから、リュンヌの成人まで見守ったのだろう』
「……じゃあ、私がヌーベル様と添わなければ戻って……すみません嘘です添います」
竜のままこの世の終わりのような顔をしたヌーベル様に口をつぐみ、ご機嫌をとるように柔らかな腹を撫でる。
『ぐぅっ』
「でも一旦、帝都に返りませんか?天馬さんとの契約がなくなったなら、癒しの力も消えますよね」
巡礼も中止だし、と寂しさをごまかすように、ヌーベル様が幼体の時に好きだった場所を撫で、顔を見上げる。
『……そうだな。とりあえず、戻るか』
「じゃあ、帰りのルート、考えないと」
今はまだ月明かりだけで地図が見えないから、朝になってからかな、と考えながら手を動かしていると、押し殺したようなヌーベル様の唸り声がした。
『……必要ない。このまま飛んで戻れば良いだろう』
「え、でも、大変じゃないですか?」
なんせヌーベル様は成体になったばかりだ。
人になられるとそれはそれで私が大変なので、竜でいてくれる方が少し安心ではあるのだが。
『大丈夫だ。その方が速いし、それに、もう、限界だ』
「へ?」
大丈夫なのに、限界?どっちだ。と首を傾げて見上げると、なんか睨まれた。
『いいから、リュンヌはもう大人しくしていろ』
「はぁい……」
仕方ないので、私は大人しく今日一日を振り返る。
成人の儀の今日も、当たり前の延長で一日が始まり、だからいつものように当たり前の延長で終わる気がしていたのにこの様だ。
私が成人すればヌーベル様も変わってしまうし、天馬さんとの契約もずっと続くはずはないとわかっていた。
だけど、成人したってその日々が続いていくって、どこかで甘えていたのかな。甘えになにがしか償いが発生するのが大人というものなのだろう。
償いにと処刑までされかけた身としては、そんなに変わらないけど。
とにかく、リュンヌは無事に成人しました。
一人じゃ生きてこられなかったし、これからも一人で生きるなんてきっと無理だ。
ヌーベル様はもう二度と一人にはしてくれないだろうし、どうやら卵は産まなくても子供は産めるらしい。
癒しの力は無くなるだろうし、ヌーベル様の竜の力もどうなるかなんてわからないけど、未来は続いていく。
天馬さん曰く、残りわずかではあるけれど。
ふ、と笑みをこぼして、私は身を乗り出してヌーベル様を見上げる。
危ない、と注意をしながら私を見る優しい紫の瞳。
「陛下にもご挨拶に行きましょうね!」
『……わざわざしなくて良いだろう』
「でも、結婚するなら承認もらわないと」
『っ!そ、そうか、なるほど』
「元竜神様でも知らないことがあるんですねー」
その後、全力で飛ぶ竜ヌーベル様の腕に抱き込まれるようにして帝都に戻った後、人ヌーベル様にさんざん成人を祝われることになるのだけど、それはまた別の話。
一旦これにて完結設定に戻します。
あと、先帝陛下の話と、天馬の話を更新予定ですが、今まで以上にのんびりの予定。
また更新で見かけたらよろしくです!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!




