四話 あたしの拳でノックアウト
レッスン日、何やらメンバーが二手に分かれて喧嘩を始めた。そんなことをしている場合ではないのに。彼らにもあるミッションが課せられる。世奈は胃を痛めているようだ。
今日も今日とてレッスンだ。ちょっと資料整理で遅れちゃったけど皆いるかな?
「おはようございまーす!...お?」ドアを開けると、皆立ち上がっていた。え?なになに?
「お前さぁ、調子乗ってんじゃねーよ」「なんのことかさっぱりなんだけど...」
明石くんが御影くんに大声でそう言い放った。喧嘩?見てみると二手に分かれている。明石くん、織くん、久瀬くんの側と御影くん、花咲くん、蔦屋くん、遠山くんの側。そして間で右往左往して困った顔でこちらに助けを求める雪室くん。間違いない、喧嘩だ。
「えー、いいですかー、レッスンでーす」いや皆無視してるし。
「レッスンだこんにゃろー!!話は後で聞きますから!!」私が大声で怒鳴ると一旦8人ははけた。
「そして皆さんに大切なお知らせがあります!とても楽しいお知らせですよ〜!」私がテンション上げて呼びかけたが、皆俯いたままだ。早くこの状況を打破しなければ。
「えー...話は後で聞きます。突然ですが!皆さんには一週間の合宿をしてもらうことになりました!!わーパチパチー!」そう言うと織くんが声を上げた。
「こいつらと合宿?冗談じゃねぇ俺は行かねーぞ!!」流石の私もプッチンした。
「...今話を聞きます。明石くんたちから言いたいことをどうぞ」私の顔が怖かったのか皆一瞬引き気味になったが明石くんたちが話を始めた。
「...御影、すごい上手いじゃん、何でも。だからって調子に乗ることねーと思うんだよ」「調子に乗ってるとは?」明石くんの発言に、私は聞き返した。
「皆困ったら僕を頼るんだよ、今一番僕が進んでると思うから...だってよ。どう見ても調子乗ってるだろ!」織くんがそう言った。
「僕的にもいただけないな、リーダーあってこそのユニットなのに何で君ばかり出しゃばるのか...」久瀬くんも顎に手を当て考え込んだ。
「なるほど、そんな言い分なんですね。次、御影くんたちもどうぞ」すると真っ先に花咲くんが飛び出てきた。
「明石さんたちは嫉妬してるんだよきっと!!御影さんが上手で自分たちがまだまだだからって。御影さんは本当のことを言っただけなのに嫉妬した明石さんたちが悪いんだ!」「おいクソガキ、それ以上言ったらその生意気な口縫うぞ!」「やれるもんならやってみろ〜べろべろべ〜」織くんがいちいち突っかかっては、花咲くんも子供らしく応戦した。
「御影くんが僕が一番進んでいる、と発言して明石くんたちが調子に乗ってると判断した。と言うわけですね〜なるほど...えっと、この話で悪いのはどちらもです!」はっきり言い切ると両サイドから反発された。
「あーもう騒がない騒がない!理由はしっかり説明します!明石くんたちの悪いところは嫉妬してしまっているところ。人は人。自分は自分で伸びやかに活動していけるようじゃないと色んな人に嫉妬し続けてまともに自分を成長させることができません!」不服そうな顔の三人。私は構わず続ける。
「御影くんの悪いところは空気の読めていない発言。少し心に引っかかる言葉ですね。自分が一番進んでいてもそれを公に発言しなくてもいいです。劣等感を覚えてしまう人もいますから」やはり納得していない四人。そして相変わらず間で右往左往する雪室くん。
「一番上手い人を決める必要はありません。皆得意分野は違うから。そういうことです!これで納得して合宿も元気にやってくださいね!!約束ですからね!!」そう言うと雪室くんだけが大人しめの返事をした。だめだこりゃ。
レッスン後、メールが届いていることに気がついた。なになに...?
「Rock'in Heartの二人を合宿に参加させてくれ...?」...マジか...で、次の文章...
「僕は用事が入って初日二日目はいられないことになったので二人の面倒も見てやってください...!?」マジかよ!?大地ぃ!!私十人の面倒見れる気がしないんだけど!!!
「...というわけで向こうのマネージャー、菅井世奈さんにも連絡はした。許可が下りれば一週間合宿に参加できるはずだ」
「性別もユニット人数も違えど他社のライバル...ワクワクするわね!」
「男だってあたしの拳でノックアウトだぜー!!そりゃっ!おりゃっ!!」二人の少女はそれぞれ意気込んだ様子だ。
数日後、もちろんDreaming Makerのメンバーにもその事実は伝えられた。断る理由は一応ないので許可してアイドル十人でのレッスンが決定した。私はキャパオーバーしそうでハラハラしていた。