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Dreaming Maker Memories  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
一章
3/33

二話 段違いの上手さ

それから初レッスンの日となった。メンバー8人がそれぞれパフォーマンスをする。専任の講師の先生の指導のもと、8人の実力が明かされる。

「改めまして、皆さんおはようございます!今日からレッスンが始まります!楽曲の練習と共に、今日は初レッスンということで皆さんの実力をまず見てみましょう!」私が呼びかけると、どこからか恨めしそうな視線を感じた。

「織くん、久瀬くん、蔦屋くん、どうしたんですかその目は?」私が疑問そうに問いかける。

「どうしたもこうしたもねーよ!見れば分かるだろこの無残な髪型!!」「あー、それは謝っておきますけど、どうせすぐ伸びますよ」

昨日、私が自分の手で3人を断髪したが、意外と難航してやり過ぎてしまったのだ。

「あちこちから女子の視線を感じたよ、でも自然と嬉しいものではなかったな」

「...恥ずかしい」「まーまー気にしない!専任の講師の先生をこれ以上待たせるわけにはいきません!いきなりですが、参考映像を見てもらいます。オーディションの時と同じやつですね。それの真似をしてもらいます!」


「じゃー俺から」映像を見終わり、リーダーの明石くんがまず立ち上がった。私がBGMをかけると振りと歌唱を始めた。私はあくまでマネージャーなのでこれについてはあれこれ突っ込むことはできない。講師の先生の言葉を待つ。

「基本は良く出来ています。でも本当に本気でやっていますか?そう思います」私も必死にメモを取る。基本に忠実、でももっとできる、と。

「次は俺だな!しかと見るんだぞお前ら!」すっくと織くんが立ち上がった。そしてパフォーマンスを始める。ダイナミックな動き、踊り慣れている様子だ。どんな言葉を投げられるのだろう。

「ダンスの実力は十分です。そして自己流のアレンジが目立ちますね、いいことでもあり悪いことでもあります。時と場合によって使い分けましょう」なるほど...

「はーい、次は僕」髪を気にしながら久瀬くんが立ち上がった。彼はどんなパフォーマンスをするのだろう。

「伸びのある歌声がいいと思います。踊りはもう少し柔らかくあるといいと思います」ほうほう、歌はいい、踊りをもう少し柔らかくと...

「...はい、次やります」同じく髪を気にしながら蔦屋くんが立ち上がった。引っ込み思案そうだがどんなパフォーマンスをするのだろうか。

「まだ全体的に恥じらいはありますね。でもどのジャンルもバランスがいいと思います」恥じらいを無くさせることが大切ね...

「ツタ兄に続いて、俺!花咲翔がやりまーす!」元気よく花咲くんが立ち上がった。愛嬌なら既に一番だがパフォーマンスはどうなんだろう...

「元気があっていいですね、でもよく映像を見ることが大切です。頭で考えてしまっていませんか?」元気さはあるけど、もっと頭を使わず目で見ることが大切、と。

「はい、次やります」雪室くんが立ち上がった。大人しそうだけど大丈夫だろうか。

「もっとこれこそが得意分野、と呼べる分野が欲しいですね、でもどれもいいバランスではあると思います」なるほど、何か一つ芽を出すべきか...

「次やります」

次は遠山くんだ。帽子を取って 立ち上がった。年長の方だから経験は豊富そうだがどうだろう。

「ダンスはコピーがうまいと思います。でも腹から声を出すことを意識してください」声をもっと腹から出す、なるほど。

「じゃあ最後に僕がやります!」最後になった。御影くんの番だ。ぼやっとした印象が目立つがどうだろう。...今まで普通にメモを取っていたが、御影くんのパフォーマンスは思わずメモを取ることを忘れてしまった。なぜなら...

「...悔しいですが指摘するポイントが今のところ見当たりません。段違いの上手さです」講師の先生も思わず目を見開いた。他のメンバーも。

「御影さんすげー!すげーじゃん!!」花咲くんが御影くんに抱きつく。

「あはは、そんなことないよ。でもまぁ小学生になる前からずっとレッスンしてきたから、それが成果として出たんじゃないかな」それにしても上手い。天からの恵みとも呼べる才能を感じた。


「御影くんすごいじゃない!思わずメモ取るの忘れちゃった!」レッスン終わり、私は真っ先に御影くんを賞賛する。

「えへへ、ありがとうございます」周りに他のメンバーも群がった。

「そういえばマネージャー、メモ取ってたでしょ?見せてよ」と言いながら明石くんは私の手からメモを取り上げた。皆メモに注目する。

「ふむ、先生の言った言葉そのまんまですね」遠山くんに突っ込まれてウッとする。

「私はあくまでマネージャーだからそんなに専門知識は無くて...」頭をかき笑ってみせる。

「でも、俺ならもっと指摘するポイントと褒めるポイントが分かるよー」そう言って明石くんがメモに何やら書き込み始めた。

「はい、これを見てしっかり勉強してね」メモを返され、メンバーもばらけて帰り始めた。とりあえず私は今日は平穏無事に1日を終わることができてホッとしている。ふとメンバーが出て行ったところでメモを覗いてみた。...そこには専任の講師の先生の口からも出なかった言葉がずらりと並んでいた。なんだろう、明石くんはちょっとちゃらんぽらんとしてるところがあるけど一応見る目はあるのかな...だからリーダーに指名されて...そういうことだろうか。感心しながらメモを読み進め、最後に御影くんのページを覗いた。するとでかでかとこんな文字が書いてあった。「バカ」。


なんだかまた嫌な予感がしているが、とりあえず今日という日は割と平穏無事に終えることができたと思ってその日は帰路に着いた。


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