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Dreaming Maker Memories  作者: 菖蒲P(あやめぴー)
一章
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一話 アイドルをやる気はありますか?

新しい男子アイドルプロジェクト、Dreaming Maker が始動した。その初日は、かなり濃ゆいものとなった。世奈も疲弊感に身を潰されそうになった。

いつも通りに出社。いつも通りにデスクに着く。それはほぼ毎日行なっていることなのだが、今日から少し私、菅井世奈の生活リズムは変わる。我がシャインエール・プロダクションが大きく変わろうとしていて、私もそれに関わっているのだ。関わっている、というよりかなり重要なポジションなのだが。


「菅井さん、そろそろですよ」上司の声で私は緊張した面持ちでデスクを立ち上がった。向かったのは事務所に併設されているレッスン室。そろそろ時間だ。徐々に彼らも集まって来る頃だろう。


「あれ...?誰もいない?」「いませんね、確かに」私と、ついてきた上司はきょとんとする。この部屋に、新たにアイドルになる8人の少年が集まる、と聞いていたはずなのだが、誰一人として部屋に来ていない。

「今頃なら一人くらいは来てておかしくないはずですけど...私ちょっと見てきていいですか?」そう言って一旦私は部屋を出た。


とりあえず事務所内あちこちを探すことにした。一旦一階ロビーに降りることにした。

「ん?」一階ロビーに降りると急に大声が聞こえてきた。何事かと思って覗いてみると、見覚えのある8人。が、二手に分かれて何かをしている。声をかけたいが、夢中になっていてこちらに気づく様子もない。じっと覗いてみると、ボードゲーム?らしきものをしていた。警備員のおじさんも困ったようにこちらに目を合わせてきた。とりあえず私は勇気を出して大声を出した。

「ちょっと何してるんですか!?貴方達もしかしなくてもDreaming Makerのメンバーですよね!?」

その声に一番小さな少年が悪気なくこう返した。

「おばさん、だーれ?」「貴方達のマネージャーです。何か問題でも?」どう見ても彼らは私がマネージャーを担当する新しいアイドルユニット、Dreaming Makerのメンバーだ。

「あ、こんにちは...皆、そろそろ行かない?」大人っぽい顔立ちの少年が皆に呼びかける。

「いや待て、まだ俺のターンが終わっていない。話はそれから...」髪を一部伸ばし、ピアスをつけた少年の言葉を頬をつねって遮った。

「もう時間ですけど?」その言葉にメンバーは一瞬の静寂の後、「えー!?」とそれぞれ叫び声をあげた。


「全く...初日からなんですか!やる気あるんですか!?」レッスン室にとりあえず全員入り、私が叱ると一部のメンバーは反省したように下を向いた。

「まあまあ初日だから仕方な...」「仕方なくありません!先輩は優しすぎるんですよ!」優しい上司の言葉を遮り私は続けた。

「全く、雄大がどうもすみません」「いててっ、テメ頭を掴むな押すな!」糸目の少年がピアスの少年の頭を無理やり下げた。

「貴方も頭を下げてください。全員です!」私の言葉に皆不服そうに頭を下げた。


「...とりあえずお説教はここまでです。あ、そういえば持ってこいって言ってた書類、ありますよね?出してくれると嬉しいんですけど...」私が言うと、皆カバンを漁り出す。そんな中、白髪の少年がはい、と手を挙げた。

「どうしました?」「書類忘れてきたので取りに帰ります〜」「はい、そうですか...って」私は思わず言葉を失った。

「マジで!?マジで言ってんですかアンタ!!ちょっと!!家遠いんですか?」「あ、かなり近所だから15分くらいで帰ってきます〜」腑抜けた声でそう答えた。

「全く...!急いで取りに帰ってきてくださいもう!」私はイライラしながら他メンバーの書類を受けとった。


「ただいまです」白髪の少年が帰ってきた。そして書類を受け取り、改めて話を始めた。

「皆さんには今日からDreaming Makerというアイドルユニットとして活動してもらいます。これから一週間に数回、レッスンなどを行います。レッスンに関しては配布したカレンダーにありますので確認してください。そして...」私は一息置き、続けた。

「早速自己紹介をお願いします!第一印象は大切ですからね!」するとメンバーもおー、とそれぞれ反応した。

「では右の彼からお願いしてもらいましょう、お願いします!」一番目に指名されたのは糸目の少年。立ち上がって自己紹介を始める。

「えっと、初めましての人は初めまして、明石圭人でーす。高3です。普段は流行りの曲とか聞いてます。まあよろしくー」ズボンに手を突っ込みながらダラダラと自己紹介をした。私的にはあまりいい第一印象ではないが。次に立ち上がったのはピアスの少年だ。

「次は俺だな、こいつ、明石圭人と同じ高校に通ってる織雄大だ。高2だ。俺の夢はビッグスターになること!お前らも俺のビッグスターになる夢を応援して支えてくれよ?俺のいいお立ち台になるんだな!」夢は大きくて結構だがちょっと言葉に棘がある気がする。だいぶある。色々今のところ難がありそうだなぁ...次は...何やらすごい髪型の少年だ。

「チャオ〜!俺は久瀬凰太、19歳!高校は卒業したけど一応さっきの二人の先輩ね。ところでこの髪型、かっこいいと思わない?よろしくね!」全くカッコいいと思わない。だいぶ顔に合ってない。これは断髪させなければいけないな...他にも断髪させたい子はいるし...次の子とか特に...

「...蔦屋永遠です...中1です。えっと、仲良く楽しくやりましょう...」「あ?聞こえねーよもっかい言え!」 蔦屋くんの声を遮って織くんが突っ込む。確かにそうだが...蔦屋くんも少し困っているようだ。織くんもとりあえず諦めて座り込んだ。次に立ち上がったのは威勢のいい小さな少年。

「花咲翔!12歳!蔦屋永遠さんを、ツタ兄として尊敬してます!皆さんのことももちろん尊敬してまーす!よろしくお願いしまーす!」ぴょんぴょこ跳ねながら元気に自己紹介した。そのあどけなさに私も他のメンバーも思わずほっこりした。次は大人っぽい顔立ちの少年だ。

「えっと、雪室充です...最年長の21歳として皆を影で支えたいと思います、よろしくお願いします」大人しそうな印象を受ける。でも今のところ一番まともそうだ。次は帽子をかぶっている少年。帽子を取って立ち上がった。

「遠山千鶴です。20歳です。得意なことは料理、家族構成は父、母、犬、俺。今日のファッションはとりあえずしまむらで揃えてみました。服にはあまり金をかけない主義なので。よろしくお願いします」...何だか自己紹介としてずれている感じがするが、まぁいいだろう。最後は白髪の少年だ。

「はい、僕は御影天です。15歳です。可愛い弟のため、アイドル頑張ります!よろしくお願いします!」割とまともな方...なのか?キャラが濃すぎてよく分からないが。

「全員自己紹介終わりましたね?とりあえず言いたいことがいっぱいあるんですがまず一つ。織くんと久瀬くんと蔦屋くんは髪切りましょうね!」その言葉に3人は思わず顔をしかめた。

「俺の頑張って伸ばした髪の毛を切るなんて!どういうことですかマネージャーさん!」「これがカッコいいんだろうが!何が悪いんだ一体!」「...お母さんが仕事で忙しいから美容室はなかなか行けなくて...」それぞれ言い訳する。

「私こう見えて髪を切るのは得意なので、お好みのヘアスタイルにしてあげますから今日は残ってくださいね」にっこり笑うと苦笑いを返された。

「そして、皆さんに改めて問います。アイドルは皆を楽しませる、笑顔にする仕事。皆さんにはその自覚があるのでしょうか?時には自分を犠牲にしても観客に手を振り愛を振りまかなければならない、それがアイドルだと私は思います。特に明石くんはリーダーですよね。一番その自覚が顕著に出なければなりません。明石くんに問います。あなたはアイドルをやる気はありますか?」「やる気はあるんだけどー、そのリーダーって初耳なんですけど」きょとんとした顔でそう答えた。

「はぁ!?言ったでしょ事前に!!忘れたんですか!?」「うん、多分忘れたっぽい。割とどうでもいいことはすぐ忘れるから〜」私はビンタしそうになる手をなんとか抑えて明石くんの眼前に迫った。

「お伝えしました。そしてこれは大重要な事項です。もう2度とその舐めた口を聞かないように」流石の私の気迫に参ったのか手を挙げて降参のポーズをする明石くん。


「とりあえずこれで今日は終わり、次のレッスン日から楽曲のフリやらボーカルやらに順次入っていきます。本日は以上で解散です!」そう言うと各々帰っていった。部屋には私と上司と髪を切られるメンバーだけになり、ついに私は尻餅をついた。額に汗を浮かべながら。

「...かなりクセが強いですね」「全くです...」どうにかなるんだろうか、このプロジェクトは。どうにかなってくれ、頼む神さま...

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