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門番天使と悲劇の少女  作者: 製作する黒猫
天国編 待つために
7/26

7 羽のない天使様



 あれから何度か景色が変わった。私はずっとそれを見ていた。私の姿は彼らに認識されないようで、ただ私は見ていることしかできなかった。

 天使さまは酒場で勇者と出会い、勇者パーティーに入った。そこで一人の女性に恋に落ちたようだ。ずっと彼女を目で追っている。あれだけ見つめられたら気づくだろうに、とうの彼女は気づいたそぶりがない。それもそのはず、彼女の目は何時も勇者しか入っていないからだ。

 

景色が変わり、次は剣だとか鎧が置いてある店になった。

 天使さまたちは武器屋と防具屋と言っていた。まるでファンタジーの世界ね。勇者や魔王といった単語が出た時点で、そう感じていたけど・・・


 景色が変わりうっそうとした森になった。

 天使さまたちは魔物の試し切りとか言っていた。眉一つ動かさずに牛のような魔物を斬る天使さまは少し怖かった。戦闘中も彼女のことが気になるようで、さりげなく見て守っていた。

 完全に天使さまの片思い。驚くべきことに仲間は誰もそのことに気づいていなかった。彼女は勇者様しか見ておらず、勇者様も仲間のうわべしか見ていない様子。

 他の2人はいつもくっついていて、主に女性の方がくっついているだけだが、男の方はどうも上の空といった感じだ。


 景色が変わった。なんとなくこれが最後だと思った。

 毒々しい雰囲気の場所。墓石が並ぶ部屋の奥に座るまがまがしい姿の男。あれが魔王なのだろう。天使さまたちの間に緊張が走る。

「あれぇ、おかしいわねぇ?肝心の勇者様がいないじゃない。」

「勇者様は、今四天王を相手にしている。」

「ここは俺に任せて先に行けと。勇者のためにも、お前を倒す!」

 勇者とはいったい何なのか、という考えが頭によぎった。勇者が言ったセリフは本来この中の誰かが言うものではないかと。はたして、勇者なしで魔王を倒せるのか?

「つまらないわねぇ・・・」

 魔王は、なぜかオカマ口調の魔王は、手をひらひらっとさせると、天使さまたちに私の腕ぐらいはある氷のとげを放った。狙われたのは女性二人だ。

「危ないっ!」

 それはあっけなかった。最終決戦といえばもっと派手な戦いが繰り広げられるのだろうと思われたが、魔王が放った最初の魔法で男2人は戦闘が困難になった。

 2人とも女性をかばい、もちろん天使さまはいつも目で追っていた彼女を助けたのだ。そこへ、勇者が駆けつけてきた。

「みんなっ!?」

 何を驚いているのだろうか?自分が仲間を魔王の下へ送ったくせに。だんだんと怒りがこみあげてくる。天使さまはがんばっていた。色ボケが入ってはいたが、仲間を一番気にかけて助けていたのは天使さまだった。彼女をかばったように、今まで彼は仲間をかばい何度もけがを負っていた。それに誰も気づかない。

「勇者、彼女を頼む・・・」

 そして、最後まで仲間を思った・・・これは多少色ボケが混じってはいるが・・・そんな天使さまに彼女は言った。

「誰・・・?」

 我慢ができなかった。誰もかれも天使さまを何だと思っているんだ。幸いにも天使さまは聞いていなかったようで、何の反応も示すことはなかった。


「まさか・・・これが天使さまの最後?」

 私は茫然とした。正直ひどすぎると思った。天使さまのすべての人生を見たわけではないが、私が見た人生は到底幸せと呼べないだろう。

 私は後退した。もう見ていたくなかった。しかし、後ろも見ずに下がったせいで、後ろに床がないことに気づかなかった。

「え・・・」

 一気に冷や汗が流れた。死んでいるから気のせいかもしれないが・・・





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