表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番天使と悲劇の少女  作者: 製作する黒猫
天国編 待つために
3/26

3 出会った少女




 降りた先は先ほどの部屋と同じ大きさの森で、家具はもちろんないが、扉が一つあることや下層へ行く階段があることに変わりはなかった。

森のせいか、先ほどと違い空気が澄んでいる。

「また、ずいぶんと雰囲気が変わるものだな。」

「そうね。ねぇ、天使さまにはご両親はいるの?」

「親か。俺は捨て子だったからな。親代わりはいたが・・・」

「天使さまが捨て子!?天国に子供を捨てるような人がいるの!?」

「あぁ、違う違う。俺は元は人間だったんだ。捨て子っていうのは人間の時の話だ。」

「そう。天使さまって元人間がなるのね。」

「すべての天使が、そういうわけではないがな。元々天使として生まれるものもいる。俺の同僚もそうだ。そこらへんは詳しくないから知らないが、人間と同じように生まれるわけではないようだぞ。」

「へぇ。」

 少女は面白そうに俺の話を聞いて続きを促してきたが、俺は話を切り上げた。

「先に進もう。帰りが遅くなるのも、あまりよくはない。」

「それもそうね。ごめんなさい、付き合わせてしまって。」

「かまわない。」

 少女はお礼を言うと、近くにあった扉を開けて先に進んだ。


 扉の先には広いが、森というには木が少ない場所だった。なんだろうここは?

「懐かしい。この公園でお兄ちゃんと出会ったの。」

「コウエン?」

コウエンとは何だろうか?少女に聞こうかと思ったが、さっさと奥にある建物の中に消えてしまったので聞けなかった。

俺が死んだときからだいぶ時が過ぎた。「コウエン」というのは俺の死後にできた言葉なのだろう。

そういえば、俺の名付け親は元気・・・いや、ゾンビに元気というのはおかしいだろう。血の気のない顔色に、皮膚がはがれてむき出しになった肉。痛々しい見た目だったが痛みは感じないのか、いつもにこにこしていたな。

「今でも笑って過ごしていて欲しいものだ。」


 コウエンのベンチに腰を下ろして待っていると、少女が戻ってきた。

「いなかったわ。」

「そうか。なら下に行くか。」

「・・・ここならいるかもしれないって・・・思ったのに。」

「出会った場所だと言っていたな。」

「えぇ。ちょうどあなたが腰を下ろしているところに、お兄ちゃんがいたの。私はそこの花畑でお花を摘んでいたわ。」

 視線の先には花が密集していた。確かに小さな花畑のようだ。

「お父様に花束を作るために、花を摘んでいたの。」

「親思いなんだな。」

「当然よ。」

 少女は花畑に近づくと、ひとつ白い花を摘んだ。

「私は花を摘み終わって帰ろうと歩いていたら、そこの小石に躓いて転んでしまったの。それをお兄ちゃんに見られて、とても恥ずかしかったわ。」

 転んだところを見られるというのは、かなり恥ずかしい。仕方のないことだとわかっていてもだ。

「お兄ちゃんは、すぐに私の下に駆け寄って介抱してくれた。家に送るとまで言ってくれたけど、初対面だったし怖くて断ったわ。でも、それがきっかけで、ここに来ると声をかけられて、いつしか一緒に遊ぶ仲になったの。まぁ、遊んでもらっていたのよね私。」

照れくさそうに笑った少女は、自分の両手で自分のほほをたたいた。本気ではもちろんなかったので、ぺちんっという軽い音が鳴った。

「何を!?」

「行きましょう!こうしてはいられないわっ。早く会いたいもの。」

 どうやら気合を入れ直したようだとわかり安心し、立ち上がった。そこでふと足を止める。

「お兄ちゃんとは、本当の兄のことではなかったのだな。」

「えぇ。そういえば言ってなかったわね。私には兄弟はいないし、母も・・・家族は父親だけよ。」

「・・・そうか。なら・・・いや、何でもない。」

「?」

 お兄ちゃんと呼ばれる男が家族でないのなら、少女にとって何なのだ?浮かんだ疑問をなぜか口にすることができなかった。




感想や評価を頂けるとありがたいです!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=148226332&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ