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門番天使と悲劇の少女  作者: 製作する黒猫
地獄編 約束の地へ
26/26

次の世界へ

ハッピーエンドのまま終わりたい方は、この話はスルーでお願いします。



 こつこつこつと靴で音を鳴らしながら階段を上がる。

 男を現世へ連れて行った俺は、役目を終えた。これから門番としての日々が再開するのを理解し、寂しく感じた。

 少女が天国から飛び出した後は、色々あったが充実していたのだ。人と関わることにこれほど心が動かされるとは思わなかった。いや、俺も元は人なのだ。当たり前のことだろう。


 階段を上がりきると、真っ赤な扉があった。この扉の先は、誰の記憶だろうか?男か少女か・・・それとも、俺か?

 俺は、いまだに昔の自分のことを思い出せないでいた。俺が覚えているのは、名付け親に出会ってから後のことのみ。出会いは覚えていない。もう、思い出すこともないのかもしれないと、なんとなく感じた。それはなぜかというと、俺は一度赤子になったから。



「マーキュリー!?」

 扉の前に立つ俺の背後から声が聞こえた。それは、聞きなれた声。つい今思い出していた名付け親の声だった。振り返って確かめれば、黒髪のゾンビが2人いた。髪の長い、紫と黒の縞々の服を着た方がしまちょ。髪の短い、ピンクのシャツと破れたアイマスクをした方が、タピオカ。笑顔の2人を見て、ほっとする自分がいた。


「よかった~心配したんだよ、マーキュリー。」

「もう、どこ行ってたの?って、ここか。急に消えたから驚いたよ、本当に。死んで死体が残っていたなら、ゾンビにすればいいだけだけど・・・何もないんじゃねぇ。」

 ゾンビか。ゾンビ化・・・嫌だな。俺は天使のままでいい。いや、元は人間だから人間のままが・・・いや、天使の方がいいな。


「心配かけて、すまなかった。どうやら、俺は前の世界で死んだようだ。」

「そうだろうなーとは、思ったよ。」

「うんうん。マーキュリーの特殊能力だもんね。死んだら別の世界に行くっていう。運よく見つかって良かった。ね、ねぇさん。」

「・・・もういいかな。」

 唐突に真顔になったゾンビに、俺は後ずさった。この後の展開がよめたので、逃げ出したいと思ったのだ。しかし、それは出来ないことを知る。ドンと体が扉にぶつかる。素早く扉の先に行けば逃げられるとは思わない。彼女らは狙った獲物は逃がさない。


 あまり変わらない背丈のしまちょが、俺を捕まえた。

「頑張ったね、マーキュリー。おーよしよし。」

 頭をなでられる。超高速で・・・

「やめろっーーーーー!ハゲるっ!」

 顔が熱い。お願いだから、子ども扱いはやめてくれ!

 俺が叫ぶとあっさりと解放してくれた。いつも一瞬の出来事だ。彼女たちは、スキンシップはあるが、さっぱりしたものが多いので助かる。


 ポンと、優しく背中を叩かれた。タピオカがにやりと笑う。

「元気出しなよ~初恋は実らないものだって。」

「おい、待て。どこから見ていた。」

 サーと血の気が引いて、今度は顔が青白くなったと思う。初恋ってなんだ。初恋って。俺は恋なんてしていない。断じてしていない。


 浮かぶ顔は金髪蒼眼の少女。いや、違う。違う・・・


「でも驚いたよ、本当に。君はおじ専だったんだね。」

「・・・違う。」

 おじ専ってなんだ。聞き間違いだろうか?

「相手はロリコンだったからね、マーキュリーに勝ち目はなかった。仕方がないよ。」

 ロリコン。ぐさりと、俺の胸に痛みが走る。いや、違う。俺は別に少女のことをどうとか思っていない。


「って、まさか・・・いや、ありえない。でも、おじ専とロリコン・・・まさか、俺の初恋相手がアレだと・・・?」

 先ほど現世に送った男を思い出し、ぞわりとした。あの男自体は悪い奴ではない。気に食わないが。なんだかもやもやとする男だった。いや、そんなことはどうでもいい。今大事なのは、アレを初恋相手だと思われている誤解を解かなければ。


「ま、前世でも男性と付き合っていたし、別に驚かないよ。」

「子供の顔は見たいけどね、われらは君が幸せならそれでいいよ。」


 新事実に、俺は何も言えなくなってしまう。前世で男と付き合っていた!?


 別に、同性愛は否定しない。しないが、自分がそうなるかどうかは別だ。俺は、自分に問いかけた。俺が好きなのは、女性か男性か。

 女性だ。即答だった。


 うん、今は今だ。過去・・・前世のことは忘れよう。いや、覚えていないのだが。そうだ、今聞いたことは忘れることにしよう。




「それで、本題だけど。マーキュリーはどうしたい?ここに残る?それとも他の世界に行く?」

 聞かれて思い浮かべたのは、3人の顔。少女に男に同僚。それなりに親しく、離れるのは寂しいと感じた。でも、もう答えは出ている。

「ここを出る。」

「わかった。よし、行こっか!」

「我らも忙しいからね、特にねぇさん。だからもう出発するけど、いい?」

「あぁ。心残りは・・・あるが、いい。」

「あるならだめだよ。もうここには戻ってこれないんだからー。ほらほら、おじさんに挨拶してきなよ。」

「いや、おじさんはいい。同僚の方だ。」

「同僚?ってことは、天使!?」

「そうだが・・・」

「わー。ねえさん、ねえさん。本物の天使が見れちゃうよ。やっぱり金髪に青い瞳かな?」

「よし、見に行こう!」

 一気に騒がしくなった俺の周り。なつかしい。


 前世のことは、何も思い出せないが、別に構わない。だって俺は、マーキュリーだから。


 ゾンビの名付け親がいて、楽しい日々を送った。

死んで天使になって、門番をやっていた。そして、これから別の世界へ行く。


それが俺。




 気づけば俺は、真っ暗闇の洞窟に立っていた。目の前には光り輝く魔法陣。後ろの壁には穴。

「俺は・・・」


 誰だ?


 ここは、とある少年の夢の中。俺は、その少年の願いを叶えるために存在する。


「そうだ、俺は少年を殺すために、ここにいる。」

 とても辛いことだが、それが俺の役目。抗うことは許されない。


 青い瞳に黒い翼。後に少年から悪魔と呼ばれる彼は、名のない存在だ。




ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


この後の話である、ゲーム「僕の願いを叶えて」も公開中です。こちらもぜひよろしくお願いします。

この話でも登場したしまちょ(スマイリーしまちょさん)とタピオカ(タピオカ星人さん)が、上記のゲームを実況してくださいました。楽しい実況なので、少しでも気になる方は視聴していただけると嬉しいです。


僕の願いを叶えての小説版も、いつか書けたらと思っています。



連載中の「血染めの楽園」もよろしくお願いします!

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