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門番天使と悲劇の少女  作者: 製作する黒猫
地獄編 約束の地へ
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24 白い羽の悪魔




 少子化が進み、訪れる者が減り、寂れた思い出の場所。事件現場となった、可愛らしい部屋のある建物はカギがかかっていた。

「これじゃ入れないな。」

「何を言っている?お前自分の体を見てみろ。」

 悪魔に言われた通り自分の体を見てみると、完全に透けていた。そうか、現世では俺は霊体なのかと納得した。

「これって、壁をすり抜けたりできるのか?」

「お前はできるな。わかったらさっさと行け。あ、その前にこれを。」

 悪魔は懐から一枚の紙を取り出し俺に渡した。見ればそれは俺の写真だった。

「なんで俺の写真なんて・・・」

「宝物と言っていたからな。少女に返しておいてくれ。」

「これ、あの子が持っていたのか。」

「あぁ。お前の顔はどこにでもいそうな特徴のない顔だから、忘れないようにと貸してくれた。」

 俺は悪魔の顔を見上げた。相変わらず黒いフードをかぶっていて、顔の上半分はどくろの面で見えなかった。

「お前、まさかあの子に頼まれて俺をここに?」

「いや。少女に頼まれたのは、天国にお前が来ないか見ておいて欲しいというものだった。」

「天国・・・お前、天国に行けるのか?」

「もちろん・・・あぁ、この格好だしわからないか。もう地獄ではないし、隠す必要もないか。」

 悪魔はフードを脱ぎ、どくろの面をはずした。そこに現れたのは、空色の長い髪をした男で、男だけど一瞬見惚れてしまった。

 ばさり。と悪魔の背後で音がしたので視線を移すと、先ほどまであった黒い羽に変わり、純白の羽がうっすらと輝きながら存在を主張していた。

「な・・・は?」

「俺は天界の門番。天使マーキュリーだ。」

「悪魔じゃなかったのか!?」

「あぁ。」

 確かに悪魔とは名乗っていなかったが、騙された気分だ。

「それより、さっさと行け。これ以上少女を待たすな。」

「そうだな。」

 俺は扉の前に立ち、恐る恐る手を触れた。もちろん触れることはなくすり抜け、扉に腕がめり込んだ状態になった。

「お前・・・いや、天使様は来ないのか?」

「そこまで空気が読めないつもりではない。私はお前が中に入ったのを確認したら去る。」

「天国までは送ってくれないのか。」

「俺の仕事ではないからな。」

 俺はもう一度天使の顔を見た。なぜだろう、どこかで見た気がする。

「安心しろ。管轄の天使が迎えに来る手はずになっている。」

「そうか。なぁ、俺とお前って、どこかで会ったことあるか?」

「男にナンパされても気持ち悪いだけなんだが。」

「違うんだが。」

 天使はしっしと言いながら俺を追い払う仕草をした。さっさと行けということだろう。

「・・・ありがとな、天使様。」

「全く嬉しくないな。」

「ひでぇ。」

 口ではそういいつつも、俺の口角は上がっていた。まさか、こんなやり取りをする仲になるとは思わなかった。名残惜しく感じつつ、俺は扉の中へとめり込んでいった。



次回、最終回です。

少女へのクリスマスプレゼント・・・

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