表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番天使と悲劇の少女  作者: 製作する黒猫
天国編 待つために
2/26

2 孤独な少女



 カーペットの独特な感触を感じながら階段を最後まで降りきると、小さな部屋に着いた。

 赤を基調とした壁と絨毯。家具は小さなテーブルと2脚の椅子のみ。それが今使った階段の左手にあり、右手には扉が一つあるだけだ。正面には、また降りるための階段があるので、下層に行くのは簡単そうだ。先ほどの開けた場所とは違い空気がよどみ、不気味な雰囲気だ。あかりとして壁についている蝋燭の隣にかけてある絵が、より一層雰囲気を醸し出している。絵は、人物画で金髪の女の子が一人椅子に腰かけ、笑顔を向けていた。

「ん?この絵は君か?」

 少女は部屋にある机を眺めていたが、俺の言葉に反応して絵を眺めた。

「本当だわ。これ、私の家に飾ってあった肖像画よ。なぜこんなところに・・・」

「そういえば、現世と天国の間の階層は、人によって景色が違うと聞いたことがある。」

「そうなの・・・なら、これが私に与えられた景色なのね。」

「そのようだな。」

 少女は、この部屋に一つだけある扉に目をやった。

「あの扉、見覚えがあるわ。」

「そうなのか。どこの扉なんだ?」

「開ければわかるわ。」

「行くのか?」

「もしかしてお兄ちゃんがいるかもしれない。」

「・・・否定はできないな。」



 扉の先にはまた部屋があり、寝室のようだった。置いてある人形などを見ると、子供部屋だろうか?

「私の部屋ね。」

 少女は迷うことなく進み、奥にあった扉を開き中に消えていった。

 俺は部屋の中央にある暖炉の前に着くと、暖炉の中を覗いてみた。特に何もなく下に灰が溜まっているだけで普通の暖炉だった。

「何をしているの?」

 いつの間にか戻ってきた少女が、俺に不思議そうに見て問いかけた。

「何か仕掛けがあるかと思ってな。何もなかった。」

「それはそうよ。ただの暖炉だもの。でも、子供のころは怖かったわね。その暗闇から何か恐ろしい化け物が出るんじゃないかって・・・ふふっ。」

 少女は暖炉から目線を外すと部屋を眺めた。

「私、家が嫌いだったの。お父様はあまり帰ってこないし、お母様はいないしで・・・独りぼっちで、この広い家にいるが本当に嫌だった。」

 少女の部屋は、どこかの貴族の屋敷の一室といった様子だった。この部屋だけでも十分な広さだ。人間時代の時泊まった宿の部屋2つ分の広さがある。いや、まだ奥に部屋があるようだから3つ分だろうか?

「でも、帰ってきたという感じがするわ。いくら嫌がってもここは私の部屋なのね。」

「奥の部屋は何だったんだ?」

「お手洗いよ。誰もいなかったわ。」

「そうか。なら、もう行くか?」

 少女がうなずいたので、出口へと向かった。少女はもう一度ゆっくりと部屋を眺めて、俺の後に続いた。


下の階層への階段を降りる前に、少女が足を止めたので立ち止まった。

少女は自分の肖像画の方に目を向けてつぶやいた。

「私、愛されてなかったわけではないの。あの肖像画だって、お父様が遠出するときに毎回持って行ってたわ。そのために描かれたものだしね。」

「そうか。それは良かったな。」

「えぇ。でも、私が死んでお父様は大丈夫だったのかしら。お父様自身や、お兄ちゃんを責めていなければいいけど。」

 少女が階段を降り始めたので俺も続いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=148226332&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ