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門番天使と悲劇の少女  作者: 製作する黒猫
番外編 過去の記憶
14/26

(14) 兄と弟



これは、お兄ちゃんと呼ばれていた男の記憶。


 がたがたと強い風が窓を揺らす。読んでいた新聞から目を外し、外を見れば快晴で気持ちの良いことこの上ないが、今外に出れば少女なら、赤い帽子を追いかけまわすことになるだろう。

「ふふっ。」

 想像の中の少女を見て、笑いがこぼれた。

「兄さん、入るよ。」

声と共に、今の扉が開かれ、弟が入ってきた。

「うわっ。何?」

「どうしたんだ?」

「いや、僕がプレゼントを渡す前に嬉しそうな顔をするから、知っていたのかなと。」

「プレゼント?なんのだ?誕生日はまだ先のはずだが・・・」

「何?理由がないとプレゼントしちゃいけないわけ?兄さんだって、よくお土産買ってきてくれるじゃないか。」

「いや、嬉しいよ。ありがとう。」

「渡す前からお礼言われちゃったよ。僕、強請られてる?」

「そんなわけないだろ・・・」

「冗談冗談。はい。」

 弟に手渡されたのは、水色のハンカチで、隅にリスの刺繍が施してあるものだった。はっきり言って可愛い。男の俺が持つのには可愛すぎるぐらいで・・・

「渡す相手間違えていないか。」

「だって、兄さんリスが好きなんでしょ?この前も、クレープを食べるあの子がリスみたいに可愛かったって、のろけていたし。」

「な、のろける!?」

「俺のまわりをリスのように、歩き回るあの子も可愛いとかも言っていたし・・・リス好きでしょ。ロリコン。」

「いや、リスが好きだとロリコンなのか!?」

「いや、あの子が好きだとロリコンなんだよ。でも、いいじゃん。僕はね、犯罪者にさえならなければ、いつまでも兄さんの味方でいるから。」

 こちらに温かい目を向ける弟に、ハンカチを投げつけてやりたくなったが、好意でもらったものを投げつけるのもどうかと思い、思いとどまる。

「だいたい、なぜあの子が好きな前提なんだ・・・」

「え?好きじゃないの?嫌いなの?あの子がかわいそー。」

「なんでそうなるんだ。嫌いじゃない、好きだ。」

「やっぱり好きなんだ。ふーん。」

「好きだが、お前と同じだよ。あの子のことは、妹だと思っている。」

「え、兄さん僕のこと好きなの?ごめん、僕にそういう趣味は・・・」

「おい。」

 いい加減にしろと睨みつけるが、弟はにやにやと笑って全く効果がなさそうだった。

「ま、気持ちだけ受け取っておくよ。それじゃ、僕忙しいから。」

 それ大事に使ってね、と言い残し弟は去って行った。

 俺は、もう一度リスの刺繍を見た。可愛い。あの子みたいに。クレープを両手で持ち、ちょびっとずつ食べる彼女と、ドングリを手に持ち食べるリスの姿はそっくりだし、よく見ればこのリスは目も青かった。

「芸が細かいな。」

 俺はハンカチがもう洗われて、アイロンがけまでされていることに気づいた。弟は本当にできるやつだ。そのままポケットにハンカチをしまうと立ち上がった。

「そろそろ行くか。」

 


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