0回 女子だらけの野球部
恐れていた時期が来てしまった。
時は3ヶ月前、高校の入学式の日にさかのぼる。
中学時代、野球に没頭しすぎて高校受験に失敗した俺は、軟式野球部のあった定時制高校に入学した。
この時点で硬式で甲子園に行くという俺の夢は敗れていたわけなのだけど、ここでさらに俺に追い打ちがかかる。
元から軟式野球部なのは分かっていたのが、この高校は普通の軟式野球大会ではなく、定時制通信制軟式野球大会へと出場していた。
素人の方々には違いがよく分からないだろうが、俺の目指していた高校硬式野球や高校軟式野球と比べると、定時制通信制の軟式野球、通称「定通野球」とは、雲泥とも言える実力の差があった。
確かに俺は今すぐ硬式の試合に出れる力があるわけではないけれど、それにしても目指すべき所のハードルが低すぎる。
しかも災難はそれだけではない。
これは後々わかってきたことなのだが、この定通野球では、硬式と違い女子も選手として出場可能なのだ。
確かに今年入部したのが、俺を含めて入部希望者が4人だったのに対し、内2人が女子選手として入部していた。
そんなこんなで野球部へと入部した俺たちだったが、うかうかそんなことも言っていられない。
定通野球の全国予選は、地域によりけりではあるものの、この山梨県では6月の頭には予選がある。
この鶯川高校はなかなかレベルが高く、山梨県予選を見事優勝したのだが、定通野球では予選出場校数の少ない県では、他の県の代表との争いに勝たなければ全国への切符は手に入らなかった。
山梨県はというと、隣の静岡県と一緒に「山静地区」として区切られ、両県の代表チームが戦い、勝った方が全国大会へと出られた。
結果、静岡代表に敗れ、鶯川高校初の全国出場の夢と、先輩たちの最後の夏が終わった。
そして俺は、先輩たちが引退して1年生4人と3年生のマネジャー1人のみになった野球部の、キャプテンを任された。
…ちなみに今年の山梨県の県予選出場校数は、4だった。
新連載になります。
女子野球×本格野球小説×定通野球×日常という作者の趣味を全面に詰め込んだ小説になります。
0回はプロローグとして駆け足でキャプテンの話を語りましたが、この話は群像劇であり、1話1話主人公が変わります。
毎回1000文字前後の鶯川高校軟式野球部に関わる短編をちまちま上げていこうと思います。
どうぞよろしくお願いします。