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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ちょっと黒い白雪姫

作者: キリアイス

※ タイトル通り、ちょっと黒いお話です。血とか肉とか、そういう意味で。

  若干のカニバリズムを含みますので、苦手な方はご注意を。


 むかし、ある国の王妃様は、女の子をお産みになりました。

 とてもめでたい日でしたので、王様はお城でパーティーを開くことにしました。

 それを聞いた民衆たちも、めでたい日だと喜び、小麦や野菜、獲れたばかりの新鮮なお肉を王様へ献上し、夜が明けるまで陽気に飲み明かしました。

 お城では、民衆から献上されたものを使って料理が振舞われ、名立たる魔法使いを呼んで女の子に祝福を授け、盛大なパーティーとなったのでした。






 あれから七年。女の子は病にかかることなく、健やかに成長しました。


 白く輝く雪のように色白の肌も、血のように赤い頬も、黒檀のように深い黒髪も、すべて王妃様ゆずりの、たいへん美しく、そして文句のつけようがないほど可愛らしい女の子へと成長しました。

 その美貌は性別を問わず、誰もが見ほれる程の美しさがあり、女の子の愛らしさは、ついつい甘やかしてしまうほどでした。

 しかし女の子は、甘やかされたからといって傲慢になることもなく、思慮深く、そして賢い子へと成長したのでした。

 女の子は『白雪姫』と呼ばれ、愛されました。


 何もかも平和で、穏やかな日々でした。

 王妃様と同じ、白い肌と赤い頬、そして艶やかな黒檀の髪。

 王様と同じ、民を思いやれる心と聡明さ。

 そんな白雪姫は、国の誰からも愛され、とても、幸せでした。







 ほころびは、王妃様でした。

 王妃様は不思議な鏡を持っていて、「世界でいちばん美しいのはだれ?」と尋ねると、答えが返ってくるという魔法の手鏡でした。

 白雪姫が七歳になるまでは、鏡の返事は「王妃様、あなたがいちばん美しい」と返ってきていたのですが、七歳をすぎた時、鏡は「いまは王妃様、あなたがいちばん美しい。でも、白雪姫が、いずれいちばん美しくなる」と答えたのでした。


 今までは、誰からも美しさを否定されたことがなかった王妃様は、それはもうショックを受けて寝込むほどとなりました。

 急に臥せた王妃様に、王様をはじめ、家臣も、そして心優しい白雪姫もたいそう心配しましたが、王妃様は誰とも会おうとしませんでした。

 従者が食事を部屋に運ぶものの、ほとんど手を付けることがありません。


 従者が食事を運ぶ以外は部屋に一人でこもった王妃様は、いつしか悲しみは憎しみや嫉妬になりました。


 愛しい愛娘は、憎き怨敵へと変わったのです。

 従者は食事を運び、机に置き、そして一言声をかけるだけでしたので、その変化に気づくことはありません。


 王妃様が負の感情に狂われてから、平穏な日々は崩れ去っていきました。


 まず、見た目が王妃様と白雪姫は瓜二つだということ。

 王妃様は、これが許せませんでした。


「わたくしの美しさは、あの子が奪っていったのだわ」


 そんな恨みを抱いた王妃様は部屋から出て、白雪姫の元へ向かいます。

 途中、なんども家臣たちや兵士たちに呼び止められましたが、王妃様は「白雪姫に会いたいの」と言って、強引に突き進むのでした。

 なぜ、なんども呼び止めるのか。王妃様は不思議に思いましたが、部屋にこもっていた期間が長すぎたのね、と自分の中で結論を出しましたが、一番の原因には気付きません。

 気付かないまま、王妃様は白雪姫と廊下でばったりと会ってしまいました。


「ああ、白雪姫!」

「そのお声……まさか、お母様ですか?」


 白雪姫は王妃様の声を聞くまで、自分の母親であることに気づきませんでした。

 それもそのはずです。

 王妃様は部屋にこもっていた期間が長すぎたと自分でも思うくらいなのです。


 食事も睡眠もロクに取らず、そしてお手入れだってしていないのですから。


 痩せ細った体は、骨に皮がついただけと思える程やつれており、自慢の黒い髪もパッサパサで、すっかり枝毛が多くなっています。

 白い肌だって、今では青い肌と言ってもいいほどで、肌質はカサカサです。

 赤い頬はまるで血が通わなくなったかのように消えておりました。


 ――まるで、死人のよう。いや、それよりも酷い。


 口にはしませんでしたが、王妃様を見た者たちは皆、心の中で思いました。

 しかし、顔や雰囲気で王妃様に伝わってしまいました。

 すっかり顔から浮き出た目が、ギョロギョロと光り、睨みます。

 目の合った者は、白雪姫でした。

 かわいそうに、白雪姫は蛇に睨まれた蛙のように、動くことができません。

 そんな白雪姫をより鋭い目つきで睨む王妃様は、自分が部屋にこもる前よりも白雪姫が美しくなっているのを見て、心が黒く塗りつぶされます。


「あの、お母様……? とても、顔色が悪いように見えますが、本当にお部屋から出られても大丈夫なのですか?」


 怖いと思いつつも、心優しい白雪姫は王妃様に頑張って声を掛けます。

 その姿に家臣や兵士たちは「白雪姫はやはり素晴らしい」と思い、王妃様はますます面白くありません。

 それでも王妃様は、家臣や兵士たちのいる前で白雪姫を害することは今はできないと判断し、黒い心を抑えて答えます。


「これでも、調子が良くなった方なのよ――でも、そうね。まずはしっかり栄養をとることにするわ」


 言うが早いか、踵を返して白雪姫の前から立ち去ります。

 視界に収めていると、美しい白雪姫に嫉妬心が爆発してしまいそうだからです。

 そんな王妃様の心など知らない白雪姫は「お労しい姿になってしまったお母様の役に立ちたい」と思い、後を追おうとします――が、それは叶いませんでした。

 睨まれた恐怖心が残っていて、足を動かせなかったからです。

 家臣や兵士たちも王妃様の背を見送るだけで、王妃様の姿が見えなくなるまでその場から動けずにいました。

 が、王妃様が部屋から出られたことと姿がかなり変わられたこと、そして栄養の良いものを王妃様が所望していることを理解すると、各々が蜘蛛の子を散らすように行動に移しました。


 いきなりたくさんのものを食べるのは体に悪いので、林檎をすりつぶしたものを食べておりましたが、いつしか王妃様は林檎を取り憑かれたように食べ続ける様になりました。

 その林檎への執着というのは、森になる林檎をすべてとりつくすだけでなく、お店にある林檎の在庫すら買いつくす程でした。

 毎日毎日林檎ばかり食べる王妃様を見た白雪姫は「林檎を食べると林檎しか食べられなくなる」と恐れるようになりました。







 さて、幾日か経ったある日、林檎はとうとう無くなってしまいました。

 林檎ばかり食べ続けた王妃様は、お肌や髪質は良くなったものの、肉付きはそのままでした。

 林檎はもういらないと王妃様は告げます。

 骨に皮を張り付けただけのような華奢を通り越したその体を、美しい状態に戻すために今度は『血肉』を求めました。



 ――王妃様は、若い生娘を所望します。



 王妃様の家来は国中から娘を連れては、王妃様の願いを叶えるために『血肉』を捧げます。

 それでも、王妃様は一向に満足しません。


「どうして白雪姫が食卓に並ばないの?」


 王妃様に心酔している家来は、白雪姫を食卓に並べるために白雪姫を探します。

 しかし、一人の狩人が王妃様の言葉を聞いていて、森の中へと逃がした後でした。

 狩人はこのままだと自分が殺されてしまうので、森の中にいた猪の子を狩り、内臓を持ち帰りました。

 王妃様の好んで食べる肺と肝臓を塩ゆでにし、血のワインと一緒に食卓へ並べたところ、王妃様はたいそう喜んで食べたのでした。



 一方、狩人から逃がされた白雪姫は森の奥をさまよい歩き、小さな家へと辿り着きました。

 家の中にいた七人の小人に事情を話し、家事全般を引き受けることを条件に住むことを許されました。

 しかし王城暮らしの白雪姫は家事なんてできるわけがなく、ご飯は焦がすし、食器は割るし、掃除は効率が悪いので、その日は小人たちがつきっきりで家事を教えることになりました。






 翌朝。お城にいる王妃様は、白雪姫を食べたのだから私が一番に戻っているだろうと自信をもって鏡に問いかけます。

 しかし、白雪姫は生きているので、鏡の答えは王妃様の望まぬもの。


「森の奥にある小人の家にいる白雪姫が、一番美しい」


 怒り狂った王妃様は、黒いローブで姿を隠し、籠に適当なものを放り込み、魔法で老婆の姿へと化けると、記憶を頼りに小人の家へと向かいます。

 朝ですので、小人たちは森に狩りへ出かけているだろうから、王妃様は自分の気配や存在を魔法で薄くして、見つからないようにして進みます。

 記憶通りに小人の家を見つけると、そこでは叱咤されている白雪姫。

 王妃様は小人がまだ家にいることに驚きつつも、小人が全員家から出ていくまで待ちました。


 それから数時間後、白雪姫は自分で作った炭に近いお肉を食べてお皿をとても慎重に洗うと、家の周りの掃除をするために外へ出ました。

 本当ならば家の中の掃除をするところですが、怒られた気分転換に外へ出たかったのです。

 そんな不用心な白雪姫に、老婆に化けた王妃様は近づきます。


「おや、まあまあ。ごきげんよう、お嬢さん。ここは小人さんの家ですよ」

「あ、おはようございます、お婆様。訳あって小人さんたちに昨日から住まわせてもらっております、白雪姫です。お婆様は、いったい何のご用でしょうか」

「あら、そうなの。わたしゃこの森のもっと奥、七つの山を越えた先にある森からやってきた物売りでね。時々小人さんに物を売っているのさ」


 そういって籠を白雪姫へと見せました。心が真っ直ぐな白雪姫はその話を信じて、商品を見せてもらいました。


「ああ、そうだ。お嬢さんがこの家に住まうというのなら、この真っ赤な林檎を差し上げよう」

「えっ、林檎……ですか」


 白雪姫の脳裏に、取り憑かれたように林檎を食べる王妃様の姿が浮かびます。

 それだけで「林檎はお母様の食べ物だから、食べてはいけない」と思います。

 そんなことを知らない老婆に化けた王妃様は、林檎を白雪姫の手に少し強引に乗せると言いました。


「これは七つ山の先に自生している栄養満点の林檎でね。小人さんたちも良く買うの。でも、お嬢さんがきたお祝いに、一つはプレゼントしましょう。それはあなたのよ」

「あ、ありがとう……ございます」


 七つ山の先ではありませんが、奇跡的に王妃様の行った林檎狩りから免れた林檎の木が森の奥にあり、身を付けていたので来る途中に収穫したただの林檎です。

 林檎を執着して食べていた王妃様ですが「わたくしが好んで食べていたのだから白雪姫も食べるでしょう」という思いから、林檎に魔法をかけて「王妃様の好きなタイミングで毒林檎へ変化させることができる林檎」を白雪姫に手渡しました。


 あとは白雪姫が食べるのを待つだけ。

 ですから「小人さんが帰ってくる時間になったらまた来ます」と言って、老婆に化けた王妃様はそそくさと立ち去ります。


 困ったのは白雪姫で、この林檎をどうするべきか、迷います。

 迷いに迷った白雪姫は、小人さんのご飯として林檎を食卓に出すことにしました。


「――大丈夫。だってあのお婆様は、小人さんたちがよく買うって言っていた。けど、小人さんたちは林檎以外も食べてるから、林檎の呪いにはかかってない」


 そう言い訳をして、でも自分が食べることは怖くてできないので、早速調理の準備を始めます。


 やがて、お昼になって七人の小人が帰ってきました。

 白雪姫は林檎を八等分にして、七切れは小人の皿へ、残った一切れは小人の採ってきた山菜と一緒にサラダの具として料理に使いました。もちろん、白雪姫のお皿の中には林檎はありません。

 小人たちはやっとまともに包丁が使えるようになった、具を混ぜれるようになった、と思っていたので白雪姫のお皿には目もくれず、お昼を食べます。

 林檎も、兄弟の誰かが採ってきたものだろうと思って、疑問も持たずに食べました。


 さて、白雪姫と小人たちがお昼ご飯を食べ始めた様子を、家の窓が見える森の木々の合間からのぞいてみていた王妃様は、しめしめと思って林檎を毒林檎へと変化するように念じます。

 心躍る気持ちを抑えて慎重に窓から家の様子を見れば、なんとそこには七人の小人の亡骸と困った様子の白雪姫の姿があるではありませんか。

 どうして白雪姫が生きているんだ、と王妃様は苛立ちます。

 まさか、林檎にかけた魔法を見破られていたのか、と王妃様は考えて、再び老婆へと化けて家を訪ねます。


「ごきげんよう、小人さんは帰ってきましたか?」


 そう言って戸を叩きます。白雪姫はとても慌てました。

 どうにかして隠そう、隠れようと思っても、王妃様の方が先に戸を開けて、七人の小人の亡骸を見られます。

 白雪姫は見られたことに酷く狼狽しました。うわ言のように「違う、違うの」と言い続けます。

 流石に王妃様もこの様子は予想外で、でも自身から美しさを奪った白雪姫に対して良い気味だと思っていました。


「お嬢さん、わたしゃこのことをお城に報告しないといけないよ。そしたら、お嬢さんは死刑だ」


 毒林檎を渡したのは王妃様ですが、そんなことは棚に上げて王妃様は追い打ちをかけました。

 酷く怯える白雪姫に優越感に浸る王妃様は、二つのものを籠から取り出します。


「もし、罪を償うつもりがあるのなら。この林檎を食べるか、この鉄の靴を履くか、どちらか選びなさい」

「……これは?」


 林檎と靴。いったい何の共通点があるのだろう。

 疑問で困惑顔を浮かべる白雪姫に、王妃様は鼻で笑いつつ得意気に解説しました。


「まず、この林檎。この林檎は、青い林檎だろう? この林檎はね、食べると何かを失う、そんな毒林檎なのさ。あまりに罪が重いと、命を失うものでね、食べるだけでその人が罪人かどうかわかるから、七つ山の向こうではとても貴重なんだよ」

「そう……ですか……」


 それでも白雪姫は、林檎だから食べたくありません。それと同時に、やっぱり林檎は呪いがあったのだと白雪姫は勘違いをします。

 もちろん、この青林檎に罪を裁く効果なんてなく、王妃様の魔法で毒林檎となっているだけの、ただの青林檎なのですが、白雪姫はそんなこと知りません。


「次に、この鉄の靴。これは昔存在した悪い魔女を裁いたと言われる、罪人を裁く靴なのさ。罪人が履くと真っ赤に靴は色を変え、死ぬまで踊り続けるという裁きの靴なのだよ」

「まあ……」


 林檎を食べないとするならば、この靴を履くことになる。

 でも、履けば死ぬまで踊り続けるのだから、もしかしたら長い間ずっと踊ることになるかもしれない。

 白雪姫は一瞬だけ迷いましたが、小人たちが亡くなったのは自分のせいだと思ったから、償うために鉄の靴を履くことにしました。


「わざわざ、苦しんで死ぬのかい? 林檎の方なら、失くすものが命じゃないかもしれないよ?」

「良いのです。それに、わたしは林檎が……嫌いなの。だから、林檎を食べるくらいなら、踊ることにします」


 履いていた靴を脱いで、鉄の靴へと両足を履き替えた時、靴は真っ赤に燃え上がります。

 真っ赤に焼けた鉄の靴を履いた白雪姫は、その場でピョンピョンと跳ねました。

 この跳ねる踊りを見て、老婆に化けた王妃様は「何度見ても、愉快な踊りだ」と笑っていました。



 やがて、糸が切れたように白雪姫はドサリと倒れて動かなくなりました。




「――林檎が嫌いだったのね。良い子だと思っていたけれど、悪い子の部分もあったのね」


 王妃様は一瞬だけ、親の顔になりました。それでも白雪姫に対する思いは負の感情が多く、親の顔は一瞬で戻ります。

 魔法で変えた老婆の姿から王妃様の姿へと戻し、こと切れた白雪姫を抱きかかえます。

 このまま王城に戻っても騒ぎになるので、小人たちの家でご馳走してから帰ろうと王妃様は思ったのです。


 王妃様は王城で生娘たちから血肉を得たこと、森の中で逞しく動いたこともあって、目は鋭くなりましたが、元の体型へと戻っておりました。

 むしろ力は増しているようで、白雪姫を抱きかかえるのは苦ではないようです。


 早速調理しようと思った矢先、人の近づく気配を感じます。

 王妃様は小人の家から出て、魔法で施錠をしっかりすると、近づいてきた気配を待ちました。


「――お呼びでなくてよ、七つ山の先の王子よ」

「酷い挨拶だ、我が国の白雪姫(・・・)


 お互いがにこりと笑って牽制しますが、やがて七つ山の先にある国の王子様がため息を吐きました。


「親殺しの次は、子殺しですか。大変残念なことに、どうやら僕は白雪姫をお持ち帰りできないらしい」

「あら嫌ですわ。なにを申されているのかしらね」


 目を細める王妃様の迫力を、なんとでもないと言わんばかりに肩を竦めて王子様は笑います。


「まあ、いいでしょう。僕はお嫁さんを捕まえきれなかったということで、帰路につきましょう」

「そうしなさい。わたくしはご馳走を食べた後、愛しき王のいる城へと戻りますから。もう、会うことはないでしょう」

「だと、良いですね」


 お互いにこりと微笑んだ後、王子様は七つ山の先にある国へ、王妃様は小人の家へと入ってご馳走を食べた後、王城へと戻りました。







 しかし、王妃様がそこで見たものは、塵と化したお城でした。


 王妃様のしていたことが、積りに積もって民衆たちが反旗を翻したのです。

 王様は王妃様のしていたことを知らず、それでも娘たちが何者かに攫われている状況を知っていたので調査していたのですが、原因を突き止めることができなかったのです。

 だからこそ、王妃様が犯人であると民衆たちの声を聞き、抵抗を止めてお城は塵になるまでめちゃくちゃにされたのでした。

 といっても、めちゃくちゃにされた理由は、王妃様がいなかったから、という八つ当たりでしたが。


 民衆の怒りは収まらず、王妃様を探す怒声が響きます。

 もちろん、そんな声は森の中にいても聞こえますので、王妃様は森の中で塵と化した王城を黙ってみることしかできません。



















 悪しき魔女として自国を追われ、幾日幾年。


 ほとぼりが冷めたのか、追手がいなくなった時、王妃様は一人の王族の男性に見初められ、その男性の国の王城へと招かれました。

 魔法で美貌と若さを維持していた王妃様でしたが、見初めた男性は王妃様の年齢と変わらない年齢のようでした。

 第一王妃は娘を産んだ後に亡くなったようで、母を知らずに娘が育つのは可哀そうという理由から王妃様は第二王妃として運命を歩きました。


 第一王妃の産んだ子は、白く輝く雪のような色白の肌、血のように赤い頬、黒檀のように深い黒髪をした女の子へと成長しました。

 たいへん美しく、そして文句のつけようがないほど可愛らしい女の子です。



 ――いつしか、その子を『白雪姫』と周りは呼びました。



 王妃様は魔女となり、再び『白雪姫』を襲います。






















 月日は流れました。


 魔女の渡した毒林檎を食べた白雪姫でしたが、七つ山の先の国の王子によって息を吹き返しました。

 そのまま王子に見初められ、幸せな生活を送るのです。


 王子は妻になる白雪姫の幸せを守るため、魔女となった王妃様を式場へと呼びました。

 彼女が産み、そして殺した白雪姫と同じ鉄の靴を履かせ、魔女となった王妃様が動かなくなるまで、多くの人が静かに見届けたのでした。




 七人の小人が白雪姫に魔法の手鏡を結婚祝いに送り、鏡の答えを聞いて世界で一番美しい王妃様として君臨しました。

 王子は、そんな誰もが羨む白雪姫と幸せに暮らすでしょう。




 めでたし、めでたし。



閲覧ありがとうございます。


『白雪姫』だった女の子が王子様と結婚して王妃様になり、産んだ子供が『白雪姫』になったのが前半部分です。

こちらの『白雪姫』は王妃様になった『白雪姫』の美の執着のあまり、林檎は呪いの食べ物と思っているから林檎を食べて死ぬくらいなら、他の方法で死のうと潔く死にました。

美への執着の凄いお母様を見て、精神が削られていたのでしょうね。

後半は王妃様が新たに産まれた『白雪姫』の継母兼恐ろしい魔女になって、よく知ったお話として幕を閉じますが……次の『白雪姫』も王妃様になりましたね。

幸せが続けば良いですね。


誤字・脱字等ありましたら、教えていただけると嬉しいです。

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