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記録6

進み方が遅くてすみません。

10月16日


 二日続けての濃霧の発生だ。今朝は昨日よりもっとひどくて、5メートル先は真っ白で何も見えなかった。

 仕方がないので、歩道を自転車を押して歩いた。おかげで朝の補習には間に合わなかった。学校も学校だ。なんでこんな日の補習を律儀に行うんだろう。

 美和ちゃんに聞いたら、美和ちゃんも間に合わなかったらしい。一体何人の生徒が補習の開始時間に間に合ったのだろう。絶対にみんな間に合っていないと思う。間に合ったのは、学校の近くに住んでる人たちだけに決まっている。

 そんなことより、その美和ちゃんから気になる話を聞いた。

 美和ちゃんも自転車を押して登校したらしいのだけど、その途中で変な人を見かけたというのだ。

 その変な人の様子を美和ちゃんが話してくれたけど、私が中学の時に出会ったあの男の人によく似ていた。

 もしかして、同じ人なのだろうか?



11月15日


 今朝も霧が発生した。おかげでまた自転車を押しての登校になった訳だけど、今日は霧が出てくれて良かったと思う。

 気になっていたあの人と再会することが出来たのだから。あの人は、あの時と全く同じ格好で霧の向こうに立っていた。霧のせいで、顔ははっきりとは見えなかったが、確かにあの人だった。あれから3年経っているのに、あの人は全く変わっていなかった。

 私には、あの人が何か言いたそうにしているように感じた。

 というか、私があの人に何か言ってもらいたかったのかもしれない。

 私が淡い期待を込めて、あの人が何かを言ってくれるのを待っていると、フッとかき消すようにあの人の姿が見えなくなった。

 私の方から声をかけたらよかった……。

 ちょっと後悔した。



    清貴の日記から


 まいを見つけることができた。霧の中でまいを見た時、成長はしていたが、すぐにまいだと分かった。まいも私の方をじっと見ていた。

 声をかけるべきかどうか迷った。声をかけたら、まいが私のことを訝しがるかもしれないという思いがあった。

 そうこうしている内に、結界のほころびが閉じようとしているのに気がついた。ほころびが閉じる前にこちらの世界に戻らないと、禁忌を犯してしまうことになる。それでなくとも、まいに私の姿を見せたこと自体、やってはいけぬことなのだ。

 私は慌ててこちらの世界に戻らねばならなかった。



   麻衣 高校の時の日記から


12月31日


 11月のあの日から、一夜市に霧が発生することは一度もなかった。

 朝霧の君には、とうとう会えずに一年が終わろうとしている。

 私は、あの人のことを朝霧の君と呼ぶことにした。でも、冬休みに入ってから読み始めた源氏物語の影響なんかじゃないからね。

 11月のあの日、あの人に再会した時に、あの人のことをそう呼称することを思いついていたんだから。って、私誰に言い訳してるんだろう?

 あの人の古風な出で立ちや、霧の中でしか会えない(会わない)ことから、朝霧の君と名付けた。

 そう言えば、一夜市やその近辺には平家の落人伝説があるそうだから、朝霧の君ってネーミングはすごく良いと思う。もしかすると彼、平家の子孫だったりして。

 源氏物語の光源氏はイケメンみたいに書いてあるけど、朝霧の君みたいな人だったのかな。だったら、女の人たちがとりこになったのもうなずけるけどね。

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