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記録5

   麻衣 中学生の時の日記から


3月7日


 今日三年生の先輩たちは公立高校の受験だった。来年は私の番だ。て、考えるとなんかゆううつ…。まだ一年あるって思っていても、以外と時間は速く過ぎ去っていく。これ、ことわざで何て言ったっけ。なんとか矢のごとしだったよねえ。

 なんとかは何だ? まっ、いいか。

 それにしても、春のこの時期にも霧におおわれるとは思わなかった。一夜市も含めて、この辺りは、あさぎりの里と昔々から呼ばれていたらしいけれど、それにしてもね。

 先輩たち、こんな日に受験なんてかわいそう。カナちゃんも朝学校に行く時にそう言ってた。私が受験の時には、朝から良い天気になりますように。



    清貴の日記から


 幸いなことに、あの少女の名前を知ることができた。あの少女が歩いている時に、あの少女の名を別の少女が呼んだのだ。

 少女の名は、まいといった。どのような字で書くのかは分からぬが、良い響きの名前だ。 今度再び、まいと会えるのは、結界のほころびを知らせてくれる、あさぎりの里の霧が流れ込む季節だ。それは、まいのいるあちらの世界での寒い季節になる。

 しかし、もし、あさぎりの里で霧が出来ず、結界のほころびから霧が流れ込むことがなかったら、当分の間、私はまいに会えなくなる。

 すると、あちらの世界では数年が過ぎ去っているだろう。まいも成長しているに違いない。

 私は成長したまいの姿を見分けることが出来るだろうか。否、そんな弱気なことではいけないのだ。私はまいを必ず見つけ出さなければならない。 



   麻衣 高校の時の日記から


10月15日


 本当に久しぶりに、一夜市が朝霧に覆われた。フォグライトをつけた自動車がのろのろ運転で道路を走っていた。

「5メートル先も良く見えないような中を、自転車で学校に行くのは自殺行為に近いわ」と、美和ちゃんが言ってたけど、全く同感。本当に危険なことこの上ない。

 お天気情報で、こんな霧が発生する日々が今年は多いらしいと言ってたけど、憂鬱だなあ。

 憂鬱といえば、現国で出された宿題も憂鬱。

 なんで高校二年にもなって漢字の書き取りの宿題なんて出るのよ! それも二千字も。「君たちが大学受験の際に困らないように」って、白坂が言っていたけど、そんな課題を出された生徒が、今困ることになるってことが、なぜ理解できないのかなあ。

 と、ぼやきながらも、宿題を終わらせてしまった私はエライ! 

 宿題の成果として、憂鬱って漢字が書けるようになった。

 憂鬱っていったら、私が中学生の時に出会った、あの変な格好をした男の人を思いだした。霧の中につらそうな表情をして立っていたのを見た記憶がある。

 あの男の人には、あれからずっと会っていない。見ず知らずの人だけど、思い出したらなぜか気になる。

 あの人、どうしているんだろう?

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