記録2
清貴の日記から
再び、あの少女と出会えた。
たゆたう霧は、私をあの少女へと誘ってくれているのだろうか。やはり、あの少女は鶴姫の生まれ変わりではなかろうか。
そんなことを考えながら佇んでいると、少女も私のことに気付いたみたいだった。目があったような気がする。
話しかけてみようかと思ったが、それは我慢した。
私と少女は住む世界が違うのだ。話しかけて親しくなったとしても、どうなるものではない。
少女に私たち一族の秘密を知られてはならない。あちらの世界の者に接するのは禁忌となっている。
それに、仮に禁忌を破って、少女に浦嶋子の話をしたところで、少女は信じないだろう。 しかし、私はそれでも諦めきれない忸怩たる思いがある。ああ、なんと侘びしいことだろう。
麻衣 中学生の時の日記から
12月31日
今日で今年も終わりだ。来年は受験生になる年だ。「頑張らないと」とちょっと思ってる。
今朝もすごく霧が出ていた。外に出てみたら、今日の霧はとても冷たかった。やっぱり12月最後の日の霧は、冷たくなるんだ。
もしかすると、あの変な格好をした人に会えるかもしれないと思ったけど、残念。
なんかあの人のことが気になるのよねえ。イケメンだったから、じゃないと思う。何で気になるんだろう? 分からない。
1月3日
冬休みもあとわずかで終わってしまう。あと何日なんて数えたくない。宿題は終わっているから大丈夫だけど。
今日はうれしいことがあった。あの人とまた出会えた。今朝も霧が出ていて、外に出てみた。今日の霧は、なぜか知らないけど、冷たく感じなかった。誰かに見られているような気がして振り返ると、あの人が霧の中に立っていた。何かつらそうな表情で、こっちを見ていたから、私はニコッと笑って手を振ってみた。遠目でも、あの人が微笑んだのが分かった。
それを見たからじゃないけど、自分でもビックリするぐらいだいたんになった私は、あの人の方に歩き出した。でも、あの人に近付く前に、あの人は霧の中に消えてしまった。ふしぎ?
もしかしたら、私は、あの人のことを好きになってきている?
とりあえずって感じで投稿です。