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まるで無意味な召喚者~女神特典ってどこに申請すればもらえるんですか?~  作者: 廉志
第八章 まるで暴挙なラブコメディ
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第九十四話 見て見ぬふり






「帰ってきて早々、なんでこんな苦労をしなきゃなんないんだろうな」

「苦労性ッスねぇ支部長さん。将来ハゲるタイプと見たッス」

「俺の頭皮の心配なんてしてもらわなくて結構だ」


 まあでも、ストレスと関係があるという一説もあるので、少し気をつけて生活することにしよう。


 季節は秋の終盤。

 冬の閑散期に向けた冒険者たちの仕事ラッシュも一通り終わり、冒険者ギルドは少し暇を持て余す季節となっている。

 おまけにコースケと言う散々場を荒らす人間が来訪した事で、平均的な冒険者がこなせるランクのクエストは完全に駆逐されている状態。

 ある意味今回の来訪は良いタイミングと言えるだろうが、秋の前半にサボっていた冒険者連中からすれば、仕事がなく冬を越せるかどうかの瀬戸際であった。

 もちろん、そんな計画性のない命知らずの連中はごく少数。村の中の皿洗いや掃除などの雑務を仕事として与えるのも、数時間程度で片がついた。


「しかし、アヤセも仕事上手くなったよな。ペンも念力で持てるようになってるし」

「秋の繁忙期で相当働いたッスからね。元々、OLとして働いてた身の上ですし、慣れたものッスよ」

「え、アヤセって働いてたの!? てっきりニートかなにかかと……」

「失礼この上ないッスねぇ……社会人でしたよ、一応? 入社して二年目くらいでこっちに召喚されたんスけど」


 確かに、見た目は二十代前半の彼女。順当に大学を卒業していれば、新入社員として働いている年頃だろう。

 日頃からエクスカリバーやコースケなど、社会の常識を持ち合わせない召喚者連中を相手にしていたものだから、てっきりこいつもその類なのだと思いこんでいた。

 ちょっと反省しなければいけないかもな。人の本質など、出会って数ヶ月で理解できる訳がないのだから。


「……なんで悟った表情で頷いてるんスか支部長」

「いやなんでも…………と言うか暇だな。仕事も大半終わらせたし、午後からはどうしようか」

「とりあえず、見回りでもしましょうか? コースケさんとやらも、そろそろ活動を始める時間帯ッスし」


 …………やはり、見回らないといけないか。いや、自分でもその仕事はしなければならないと理解しているのだが、どうにも体が拒否反応を示している。

 せっかく厄介な奴らを知り合いたちに任せて放逐したのに、わざわざそんな火中の栗を拾う真似などしたくはないのだ。

 しかし、一応地方のギルドの長である俺に選択肢など無い。何か騒ぎを奴らが起こせば、その責任は俺へと帰属するのである。

 

「気が重い」

「死にそうな顔ッスよ。どんだけ嫌なんスか」

「アヤセも召喚者の相手をすればわかる。体力的な面よりも、精神的な面がガリガリ削られるんだよ」

「と言っても、自分も支部長さんも召喚者じゃないですか。そんなに違うもんッスか?」


 俺の主人公補正の無さは例外事項としても、確かにアヤセは召喚者。そう考えると、彼女に補正はあまり効いていないように見える。

 仕事が上手いのは先程聞いたとおり、地球時代の経験が生きているだけらしく、ゴーストとしての能力である念力も強力であるが規格外とは言い難い。

 短い付き合いだが、未だ異性とフラグを乱立させている気配もない。平和そのものである。


「ところでアヤセ、今お付き合いしてる人は……」

「何スか支部長さん。セクハラッスか? 自分そういうのは許せない質なんスけど」

「ち、違う違う! 召喚者ならハーレムの一つでも作ってるんじゃないかと思ったんだよ。コースケを見ろ。今村にいるパーティー以外にも大量にいるんだぞ、ハーレム」


 アヤセはうーんと唸りながら腕を組む。


「確かにイケメンッスもんねぇ、コースケさん。あれ? でも確かハルカさんも召喚者でしたよね? 彼女は逆ハーって気配はしなかったッスよ?」

「甘いなアヤセ。これは噂だが、あの子はパーティーに男を加入していない代わりに、現地妻ならぬ現地夫を大量に保有しているそうだ。しかも無自覚にな!」

「あわわわ、末恐ろしい子ッスねぇ……」


 召喚者は大半、召喚されてすぐにハーレムを形成する。現地人に転生した場合でも、幼い頃に結婚の約束をするのは当たり前。学校に入っては可愛い子を手当たり次第。しかも無自覚だから始末に負えない。


「自分も異世界召喚系のラノベはたくさん読んでましたけど、現実に起こると少し複雑ッスねぇ」

「しかも問題なのは、俺たち召喚者以外の現地人が、この事をおかしいと思わないことなんだよ。違和感を感じていても、なぁなぁで事を済ませるというか……」

「いわゆるご都合主義ッスね。あ、なんだろう。ちょっと腹が立ってきたッス。なんで自分はその恩恵に預かっていないんスか? 自分も逆ハーとかやってみたいんスけど」

「ちなみにアヤセの女神特典ってなんだっけ?」

「地球での自分の部屋をまるごと転移してもらいました。インフラも完備ッス」

「ああ、変なところに転移してもらって、餓死したんだっけ?」

「その通りッス!」


 えっへんとアヤセが胸を張る。どこに誇らしい要素があるのだろうか。 


「ちなみに、その他にもステータスのカンストや魔法全適正。最高ランクのスキルをてんこ盛りでもらいました!」

「欲張りすぎだろそれ!? なんで初手全力なんだよ! 過保護すぎるだろ女神様!」


 その内一つでも俺によこしてはくれないだろうか。


「けどそれも死んじゃってリセットッス。うぅ……勿体無い」

「まあともかく、召喚者の不始末は同じく召喚者である俺たちがしなくちゃならない。異世界の洗脳まがいの主人公補正が効かない、俺達がな!」

「本当に苦労性ッスねぇ。やはり将来禿げると見たッス」

「だから俺の頭皮の心配はするな!! え、まだ禿げてないよな!? 育毛剤の世話になんてなりたくない!!」




 という訳で、嫌々ながらも冒険者ギルドの外に出た。扉にはクローズド板を掲げて、俺は意を決して一歩を踏み出した。



チュドーン!!

ドッカーン!!

「ああ! やってしまった!」「ちょ、これ大丈夫なの!? サトー呼ばなくて大丈夫!?」



 以上、一歩を踏み出した瞬間に聞こえた爆音と叫び声である。

 具体的に言うと三箇所からの音。村の外で一箇所、村の広場で一箇所、そしてパプカが寝泊まりしている宿屋で一箇所。

 ……明らかに俺が指示出しした連中の場所じゃねぇか!! ルーン以外全滅ってことか!?


「………………よし! じゃあまずは俺の家に行こう!」

「あれぇ!? そこはまず被害現場からなんじゃないッスか!?」

「逆に考えるんだアヤセ。被害がすでに出ているのならば、先でも後でも変わらないさ……ってな!」

「いや、そこは被害の拡大を防ぐべきなのでは……」


 と言うか、あいつらが関わった状態で被害が出ている以上拡大は必至。俺が行こうが行くまいがそれは変わらない。

 だったら、この身に被害の余波を受けるよりも、すべてが終わってからその後処理をするほうがずっとマシだ。

 そんなこんなで、俺はアヤセとともに、ひとまず被害の出ていない平和な空間。我が家へと歩みを進めるのであった。



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