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第五十九話 敗者と勝者




水着コンテストもそろそろ終盤。残すところは後二人となっている。

一名はすでに脱落。一人はロリすぎて審査対象外。

となれば、残る二名と合わせて、最終審査は計四名の中から選ぶことになりそうだ。……残る二名がまともな人選だったらの話だが。

俺が不安を覚えるのも無理はない。なぜならば、コースケハーレムの一人であるティアルが言うに、そのハーレムからもう一人、この祭りに来ているらしい。

憎きコースケのパーティーは、例外なく美少女で構成されている。だとすれば、残る一人も確実に美少女であろう。

そんな存在を、主催者側が見逃すはずもない。つまり、残る二名の内一人は、ティアルの連れである可能性が高い。


ちなみに、参加者はパプカとアグニスが集めた最初の三人に合わせ、主催者である村の人間が祭りのさなかに声をかけた、飛び入りの三人で構成される。

先程アグニスがティアルの存在に驚いたのも、これが原因である。


『お騒がせ致しました! それでは、審査の続きに入りたいと思います! エントリーナンバーファイブ! ティアルさんに続いて、コースケハーレムからのご参加です! 最初はツンツン後からデレデレ! もはや各様式に近いツンデレ娘! ハルカさんです!』

「ちょっと! 何なのよその紹介!」


早速ツンツンしながら裏から登場したのは、コースケハーレムの中の重鎮。コースケと同じ召喚者である、ハルカと呼ばれる美少女であった。

純白のビキニを恥ずかしそうに着こなす姿は、男どもの歓声を呼び込んで、会場は先程の警戒心を払拭するように盛り上がった。

ジュリアスよりも澄んだ赤色の髪を、両サイドでくくり上げたツインテール。ツンデレって、なんでツインテール率が高いのだろうかと疑問に思うところだ。

だがそれ以上に、俺は強く思う。


なんで召喚者なのに、ファンタジー的な髪の色をしているのだろうか、と。


召喚者は俺の知る限り、全て日本人である。そして、大体の日本人の髪の色は、黒か茶色で構成されていたはずだ。

間違っても、あんな赤色の髪の毛をたなびかせるミュータントは存在しない。地球世界を見渡しても、生まれたときから赤色の髪の毛を持つ人間はそうそう居ないだろう。赤毛という言葉も、ビビットカラー的な髪の色を指す言葉ではないのだ。

まあ、人工的に染めたならその限りではないのだろうが、彼女の髪の毛は純正正規品。天然モノである。


時々思う。俺と他の召喚者や転生者って、実は別々の次元から来たのではないのかと。

コースケやハルカが居た日本というのは、こちらの世界のように、色彩豊かな毛髪を持つ人間たちで構成されている世界なのかもしれない。

なるほど、それならば、俺が女神特典を受け取っていないというのにも頷ける。別枠というやつなのだろう。いや、納得はしないが。


「か、勘違いしないでよね! ティアルの付き添いで、しょうがなく参加してるだけなんだから!」

『おーっと! ファーストツンデレ頂きました!』


ファーストツンデレってなんだよ。

もはやテンプレと言っていいほど使い古されたツンデレの代名詞。「か、勘違いしないでよね!」と言う言葉は、フィクション作品ならまだしも、現実に面と向かって使われては、正直カチンとくる言葉である。

会場の男性諸君も、今の台詞に興奮する奴らが半分。微妙な表情を浮かべる奴らが半分という状態だ。


いや、そもそも、最初はツンツン後からデレデレ。この表現は果たしてツンデレの意味合いと合致するのだろうか?

ツンツンの部分は理解できる。先程の台詞も、若干の批判を孕んだツンと言う要素を用いた表現だ。

だがしかし、ではデレの部分はどこにある? デレ、すなわち好きな相手を前にして、だらしのない様子を表す擬態語だ。

コースケハーレムであるハルカは、もちろんコースケに対して恋愛感情を持っている。つまりこの場合、デレを表すのはコースケの前でのみということではなかろうか。

すなわち、コースケが居ないこの場で、彼女の言動を表現するならば、ツンツンとだけ言うべきであり、デレという言葉を用いてはいけないと、俺は主張したい。


「さっきから何一人でブツブツ言ってるんですか、気持ち悪い」

「独り言なら、せめて他人に聞こえないように言ったほうが良いぞ、サトー」


あれ? モノローグのつもりだったんだけど、口から出てしまっていたらしい。コレは恥ずかしい。

ハルカのパフォーマンスは無事終了。ツンデレの言動がそのままパフォーマンスとなったようだ。男たちの様子を見るに、かなりの高得点が期待できるだろう。



『レディース・アンド・ジェントルメン! 会場の盛り上がりは最高潮だけど、残念ながらお次が最終参加者だ!』



アグニスの言葉に、ブーイングの嵐が巻き起こる。まあ、これは批判的なものではなく、お約束のような表現方法であり、男たちも本気ではない。

普段は中々見れない女冒険者たちの柔肌。次で最後となると、中々名残惜しいものだ。


『では最後の参加者の紹介に移ります! 彼女が終われば、最後に審査を行って各受賞者の発表に移るから、楽しみにして下さい!』


審査員として、厳正な審査は行うつもりだ。

だが、下手に低い点数を知り合い達に入れてしまうと、コンテストの後が非常に怖い。ここは、全体的に高得点を入れつつ、僅差で勝敗が決するように調整することにしよう。

誰に入れようかかなり悩みどころだ。パプカは特別枠として、ジュリアスはかなりの高得点だろう。贔屓目なしのナイズバディ、眼福である。

ティアルとハルカは、美少女であり水着姿も非常に良いものであったが、コースケハーレムと言う時点で点は落ちる。爆ぜろリア充どもめ。

とするならば、俺が入れる点数としては、最後の一人が誰であるかによって、ジュリアスとの一騎打ちになる可能性がある。期待はずれならばそれまでだが、これまでの飛び入り参加者の質を考えれば、平均以上というのはまず間違いないだろう。


『…………おおうっ!? あ、えっと……良いのかなこれ……最後の参加者は皆様おなじみ! 我らがギルドの紅一点(?)! 老若男女の癒し系! ルーン・ストーリストさんです!』

「「「!?」」」


最後に登場したのは、ワンピース型の水着の上に、ショートパンツとパーカーを着た男性。ルーン・ストーリストであった。

驚愕の後のしばしの沈黙。会場は祭りのさなかとは思えないほどに、静まり返った。


「あ、あの…………やっぱり私は辞退したほうが……」


恐る恐る舞台裏へと戻ろうとするルーン。

俺は無言のまま審査員席から立ち上がり、ルーンの元へと歩み寄る。そして震えるルーンの右腕を手に取り、天へと大きく掲げた。



「優勝!!」

「「「異議なし!!」」」


俺の言葉に同意の叫びを上げる男たち。やはり、彼らなら分かってくれると思っていた。


「「「「ちょっと待てぇぇ!!」」」」


そんな俺達に反論の声を上げるのは、残る出場者である女性たち四人。なんだようるさいな、勝負は決したんだから黙ってろよ。


「いやいやおかしいでしょ! と言うか、今の異議なしの掛け声、お父さんも一緒になってませんでしたか!?」

「許せよ娘! 父親である前に一人の男として! 本能には抗えないし、抗うつもりもない!」

「それはおかしいだろゴルフリート殿! ルーンは確かに美人だが、あれはれっきとした男だぞ!」

『何もおかしくなんて無いぞ、ジュリアスちゃん! 可愛ければ、性別など何も問題ではないのだ!』

「いやぁ、流石に男性に負けるというのは、女としてはちょっとニャア」

「右に同じだわ。べ、別に勝ちたいだなんて、これっぽっちも思っていないんだからね!」

「「「リア充どもは黙れ」」」


自分が言うのもなんだけど、なんだこのハイテンション。

ルーンが優勝という現実はゆるぎはしないが、まあ彼女たちの不満も理解できないわけではない。

ここは、ルーンが優勝した理由について説明しておいたほうが良いだろう。

俺はステージのマイクを分捕って、俺は全員の視線を一身に浴びながら、その理由について語るため、思い切り息を吸った。



「聞け! 俺がお前らに、優勝理由を教えてやる! それは――――ルーンだから! 以上!」



再び静寂に包まれる会場。

俺の言葉足らずの一言が、その場に居た全ての人間の心に突き刺さる。

男たちはウンウンと頷いて、女たちはうなだれる。出場者達に至っては、一様に膝をついて、


「「「「ぐうの音も出ない!!」」」」


と敗北の言葉を発した。その心意気、潔し。


「いや、おかしいでしょ! 皆さんそれで良いんですか!?」

「悔しいが、ルーンであるという理由には反論の余地がない」

「ルーンが出場した以上、最初からわたし達に勝利などあり得なかったのですか……残念ですが、その勝利、祝福させていただきます」

「男の世界とは、ウチラには理解不能ですニャア」

「とんだ茶番を見た気がするわ」


「ですから! 私はれっきとした男なんですけどー!?」



こうして、なんともまあアッサリと、水着コンテストの優勝者が決定したのである。




『余命三日の異世界譚』同時連載中です。

書き溜めが無くなるまでは、毎週火曜、金曜、日曜日に投稿予定です。

シリアス系ですが、こちらも合わせてお楽しみください。

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