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第百六十話 光り輝く笑顔





『処置が終わりましタ』


 談笑にふける俺とディーヴァのもとに、シシィが戻ってきた。

 処置が終わったという言葉を裏付けるかの如く、その姿は頭から足元まで真っ赤な血で濡れていた。


「えええええっ!? お、おま……なにそれ!? 何があったの!?」


 たとえ手術が終わった後であっても、全身血まみれと言うことは中々ないだろう。

 そもそもルーンの症状は魔法によるものであり、メスを入れるなどの外科手術が行われるわけもない。

 すなわちシシィの姿はツッコみどころが多すぎるのである。


『ご心配なク。ただのトマトジュースでス』

「本当に何があったんだよ!!」

「なぜ魔法の治療にトマトジュースを頭からかぶる必要が……」


 俺たちの疑問をよそに、マイペースにタオルで全身をぬぐうシシィ。そしてそんな彼女の後ろから、ルーンが遅れてやってきた。

 その頭はうなだれており、足取りも重い。


「る、ルーン? 大丈夫か? 酷いことされてないか?」

『失礼ナ。きちんとした魔法の治療に当たっただけでス』

「「はぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」とか叫ぶのがきちんとした治療ですの?」


 心配の声をかけるも、ルーンは中々反応しない。やはりシシィに酷いことをされたのだろうか。

 だが、しばらくするとようやく反応を見せた。

 

「さ、サトーさん…………」

「どうした? おなか痛いか? 胃薬持ってこようか?」

「お母さんですの?」


 心配の声が効いたのか、ルーンはようやくうつむいていた顔を上げ、



「治りましたぁ!」



 と、今まで見たことの無いような満面の笑顔を浮かべた。

 その笑顔はまさに天使のごとし。思わず顔をそむけてしまうほどのまぶしい輝きを放ち、辺り一面をホワイトアウトさせるようだった。


「うわぁっ! まぶしい! まるで天使のような笑みだ!」

「思った事そのまま言ってません!? と言うかルーン、これに関しては本当にまぶしいですわ! どうなってますの!?」

『ああ、治療の副作用でしばらく笑顔が発光するようになっていまス』


「「本当に光ってた!?」」


 どういう治療なんだよ。





*    *    *



 ルーンの喜びの笑顔は中々収まらず、しばらくの間病院内が物理的に明るくなっていた。


「す、すみません。思わず顔がほころんでしまって」

「いや、シシィから借りたサングラスでなんとか……お、でもかなり弱くなってきたな」

「これならサングラス無くても良さそうですわね」


 ようやく落ち着いたルーンの輝き。今更ながら凄い字面である。


「で? 結局治ったってどの程度なんだ? 何度か通う必要ありそうか?」

『ワタシの腕前をもってすれバ通院の必要などありませン。ルーン様のチ〇コは完璧に治っておりますヨ』

「えっ!? あ、あの……シシィさんちょっと……」


 ルーンは何やらシシィを連れて部屋の隅に行った。口元を隠し、何やらひそひそ話をしているようだ。


「実は…………で…………ぜんぜん……」

『はいはい……えっ…………えぇっ!? マジですカ……あれデ!? …………ワァオ』


 冷静な口調をするシシィだったが、ルーンの言葉に激しい動揺を覚えたように叫んでいた。

 そしてひそひそ話が終わったのか、二人は俺たちの元へと戻ってきた。シシィは少しうわの空で、ルーンは顔を真っ赤にしてうつむいている。


『失礼しましタ。まだ進捗4割程度でしタ』


 そういえばルーンのアレはフランクフルト級だったなぁ。


「じゃあやっぱり何度か通院が必要そうだ…………はっ!? そういえば元に戻ったってことは……まずいっ! 合法的に結婚できなくなった! なんてこった!!」

「そもそも私は男の子なので結婚できません」

「ルーンもこのボケに慣れてきましたわね」


 さて、ひとしきり天丼も終えたので、ひとまず落ち着くことにしよう。


「ところで、すさまじい叫び声でしたけれど、どんな治療をしていたんですの? そこそこ長い付き合いですが、シシィさんの治療は定期健診以外拝見したことありませんでしたわね」

『馬鹿は風邪ひかない──いえ、健康体のディーヴァ様は利用されたことがありませんからネ』

「あら? 今のでスルー出来ると思ってらっしゃる?」

『はっはっは……それで治療の件ですガ』


 笑ってごまかせると思ってらっしゃる。


『まあ説明は専門的な用語がたくさん出ますのデ少し省略しますガ、我が特殊能力【48手の治療術体位】を使用しましタ』

「…………体位だと治療術じゃなくて姿勢の話なんじゃ……」

『今回はそのうちの一つを用いてルーン様の治療に当たった次第でス』


 あら、無視をしていらっしゃる。


「で? その治療って具体的にどういうものなんですの?」

『その名モ────【ティンコハ・エール】』

「あ、もう良いですわ」

『まず初めにローションで濡らしタ指を穴に突っ込むのですガ……』

「良いって言ってるでしょうが!! 女性が話して良い内容ではありませんわ!!」

「あと治療を受けた私も恥ずかしいので勘弁してください」


 どうやら扉の向こう側でとんでもない光景が繰り広げられていたようだ。……俺も立ち会えばよかった。


「で、でもちゃんと治してもらえましたし、結果オーライというやつですよ」


 と言うルーンの表情はすがすがしく、またもや満面の笑みを浮かべ光を放った。


「ぎゃあああああっ! 目がっ! 目がぁっ!!」

「ああっ忘れてた! ごめんなさいサトーさん!!」


 某アニメ映画の悪役のようなオチがついてしまった。




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