3話 出会い
ついにミルとサイファが対面する。
ミルが暗号を飛ばしてから数分後、
またミルの宇宙船に向かって暗号が飛ばされた。
ミルは飛び入るようにして、モニターを見た。
するとそこには、
「わたしの宇宙船で、話をしませんか?」
と書かれていた。
***
(話をしようだって?
そもそも相手の宇宙船を発見できていないんだけど・・・)
相手の無垢な少女のようなメッセージに不思議とミルも無防備になる。
それもそのはず、ミルは異性とまともに話したことが人生で母親を覗くと数えるほどしかないからだ。
ミルの外見に惹かれて話かける女性は複数はいたが、ミルは乗り気ではなく、結局女たちは「つまらない顔だけ男」と言い捨て去って行った。
そんなこともあって、ミルは女性を「くだらない」と思うようになってしまったのだった。
しかし、この文字の羅列を見ていると、不思議とそんな彼の思いは薄れていく。
純粋に、この相手のことが気になった。
顔も、声も、もしかしたら男かもしれない相手のことがこんなに気になるなんて、ミルは初めてのことだった。
ミルは暫くぼーっとしていたが、それを遮るような通知音とともに、
「ちなみに、わたしの宇宙船は貴方の宇宙船の横にありますよ」
と続けて暗号が届いた。
(き、気付かなかった・・・僕は一体何をやってるんだ)
それほどまでにミルの注意力は散漫していた。
長旅ということもあり、ミルの精神は本人が気付いていないだけですり減っていたのだ。
ミルは一瞬、もしこれが罠だったら?と考えたが、
そうだとしても突破作が見当たらない。
この船で逃げるにしても、この船には戦闘能力がない。
それならば、相手の提案に乗るしかないだろう。
こうミルは自身の考えを正当化した。
半分以上は彼の好奇心が理由であるが、それに気付かないように蓋をした。
「では、そちらに向かいます」
ミルはそう打つと、最低限の防具を身につけ、
武器を身につけると宇宙服を着て船外へと出た。
***
ふわふわと宇宙空間を漂う。
自分の意思でこの宇宙空間に出たのは初めてで、
以前の自分が全く楽しむことの出来なかった
生身で感じる宇宙の景色をミルは楽しんでいた。
このときのミルは緊張感もあったが、それ以上に好奇心が勝っていた。
やがて、ミルは隣に止まっていたサイファの宇宙船の入り口と思われる付近まで辿り着いた。
見るとその宇宙船はぱっと見、ミルが開発した宇宙船と変わりなかった。
むしろミルのものよりも大分小型で、表面にはキズが無数についていた。
そしてこの宇宙船に戦闘能力はないと判断した。
自身が宇宙船の開発者だからこそ、その判断には自信があった。
(この大きさでは、おそらく戦闘用のものほどのスピードを出せるエンジンを搭載することは不可能、
かつ攻撃用の部品が見当たらない。しかし、戦闘用でないとなるとこの無数の傷は・・・そしてこの船は一体・・・)
ミルが考え込んでいる間に、サイファの宇宙船の入り口が開いた。
おそるおそる、ミルは宇宙船への一歩を踏み出した。
(中も普通だ・・・)
10歩くらい歩いたところで、
一人の少女がミルの目の前に現れた。
「はじめまして。私はこの宇宙船の主、サイファと申します」
そう言って腰を折って深々とお辞儀をする少女の美しさといったら、なんとも言葉に表現し難いものだった。
透き通るような白い肌に、雪のような真っ白に近い毛髪、全てを見通すように透き通った赤い瞳、その瞳を縁取る睫毛は計算されているかの如く綺麗に目を飾っており、薄い唇には艶があり果物を思い起こすような瑞々しさだ。
胸は程よく形が整っており、手足は程よいバランスの長さ、太さで、腰の括れといい、男性を魅了してしまうような身体をしていた。
ミルは、その美しさに一目で心奪われていた。
彼はこの世で出会ったどんなものよりも美しいと思った。
そしてこんな美しい少女が何故この船に乗って宇宙を旅しているのか気になった。
「・・・はじめまして。僕はモノアステ星軍部研究科所属、ミルと申します」