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アストライア  作者: 金木犀
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2話 旅のはじまりと謎の少女

ついに地球を目指す旅をはじめたミル。

彼はそして、ついに自分以外の生命体と宇宙で遭遇する。

それは地球に関係のあるものなのだろうか…。

そしてこれが、少女と科学者の出会いである。

「・・・っ」

ミルはまず宇宙船の中を見て息を呑んだ。

自分で作ったとはいえ、あまりの不気味さに、

自分がここで長期間生活しなくてはならない事実を忘れたくなるほどだった。


この船を作動するエネルギーや旅をする人間の食料が切れたらそこで終わり。

以前までは機械にはこのような問題があり、可能性には限界があった。

ならばエネルギーや人間が生きるために必要なものを船の中で作り出す装置を付ければいいのではないか?


そこでミルが思いついたのは、物体を別の物体に変えることを繰り返すエネルギーや物体を循環させる方法だった。

例えば人間の排泄物から植物や食物や水を作る。

こうすることで、入れるものと出るものが=で結ばれ、結果として新しいものが必要でなくなるのだ。

問題はそもそも循環させるためのエネルギーだが、それは水素を利用した簡易的なもので作り出す方法と、太陽付近に人工的なエネルギー受信機のようなものを付け、そこから通信でエネルギーを送るというシステムが地球で遠い昔に考案され、

現在はモノアステ星でもそれが使われている。


そのため、船の中身は非常に不気味だ。

いや、不気味というよりかは、人間らしい生活を犠牲にすべき環境というべきか。

直接ではないが、トイレと飲料用の水道(蛇口)が繋がっているし、

何よりも食べ物も軍隊で昔使われていたようなブロック形状のものしか出てこない。

しかもその材料は自分の体内の物質なのだ。


だが、ここまできて引き返すことなどできないのはわかっていた。

ミルら覚悟を決めて、宇宙船への1歩を踏み出した…。



***

宇宙船に乗って、最初の1ヶ月が過ぎた。

最初は自分の廃棄物から生み出される食事に違和感や嫌悪感しか感じなかったが、

生きる為だと思えば大丈夫だった。

彼にはそういった適応力があった。


ミルは宇宙座標を参考にしながら宇宙を彷徨っていた。

過去、大昔にモノアステに移り住んだ人々が通った経路を行けば地球にたどり着く。

これは非常に有難いことだった。

道を把握せず目的地にたどり着くことはほぼ不可能に近いからだ。

宇宙は地面がある訳ではないから、360°どの方向も考えねばならない。

XとYだけの座標軸では考えられないこと、

ブラックホールのような超重力が存在していること、

宇宙の果ては誰も証明できていないことが、

宇宙に関する難しさを表している。

しかも、ミルの専攻はそもそもが宇宙学ではない。


地球に辿りついたらどのように行動すればいいのか、

ミルはそのことばかりを考えていた。

結局スパイ行為についてのアドバイスなど貰える訳もなく、

軍部の知り合いにも機密任務なので聞くことも叶わなかった。


(どうしよう…)


このままいって、地球にたどり着けたとしても、

彼には何もできる気がしなかった。

本当に、軍部の命令は理解ができない。


「ん?」

それは突然だった。


レーダーが何か「動きが読めない物体」を検知したのだ。

「人為的」な、何かの意思を感じさせるような動きをする物体を感知する仕組みがこの宇宙船には付けられていた。

(ちなみに、この技術はモノアステにミルの祖先達が移り住む前の、地球の頃に既に作られている技術だ。)


(宇宙船か?何か他の生物もこの付近を飛んでいるというのか?)

ミルは警戒を強め、辺りを探る。

一応、役立つかはおいておいて、人為的に発せられた音や光といったもの(所謂暗号のようなメッセージ)を感知するレーダーの画面を凝視する。

もしそれを発しているのが地球人なら、その法則性から言語がわかるかもしれない優れものである。

ミルはこれ以上ないくらいに緊張していた。

手に汗が滲む。

もしも、好戦的な生物だったら、確実に死ぬ。

しかし、自分は戦闘の経験もないし、

この船自体もそもそも戦闘用ではないのだ。

焦る、どうすれば良いのか。

一応遺書は残してきた。

今回の任務を受けたことで、弟と両親の生活はきっと良くなっているはずだ。

やり残したことは、自分の研究がまだ終わっていないこと。

彼の探求心や好奇心はまだまだ満たされない。

だから、もっと続けていたかったのに。

悔しい、死にたくない、そんなことばかりを考えていたからだろうか。

その「暗号」のメッセージをなかなか理解できなかったのは。

まさか本当に地球人と会えるなんて思ってもいないじゃないか。

意味のあるものを発信しているとは思えないじゃないか。


「はじめまして。わたしはサイファです」


(なんて、なんて間抜けで平凡な暗号なんだ・・・。)


彼はまず、そう思った。

そして、地球人が相手ということは、彼の任務が急に現実味を帯びてきたということだ。


(これは・・・どう返せばいいのか。はじめましてには、はじめまして、か・・・)



「こちらこそ、はじめまして。私はミルです」

ミルはそう入力をすると、送り主とおそらく同じ方法で暗号化した電波を飛ばす。



これが、天才科学者ミルと不思議な少女サイファの出会いである。

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