第一章第五幕 教師の前に
畳+布団でぐっすりと眠れた俺は翌朝起きてすぐにシンガルさんがいる(と思われる)最初に入った大きな建物に向かった。
そこにシンガルさんはちゃんと居てくれて安心した…村中を探し回るのは新参の俺にはきつそうだからな
「それで、私に話とは?」
「子供たちに勉強を教えることについて質問があります」
「わかった」
「教える内容は俺が知っている内容でいいんでしょうか?この世界のことを全然知らないので心配で…」
「ああ、大丈夫だ。午前中はネシアにこの世界のことの授業をさせる予定だ。君の授業は午後にしてもらおうと思っていてね。朝御飯が終わった頃にこちらから出向こうとしていたところだったからちょうど良かったよ」
「わかりました。ありがとうございます」
物理法則についても聞いておこうかなと思って聞いてみると
「おそらく基本的には同じだと思う」
と言われた。なんでもこの星と地球との間に地学的な差はほとんどなく、唯一の違いは魔力があるかないかなので魔法を使う限り物理の運動には問題ないそうだ
また電気はこの世界にまだ伝わっていないようで、聞いてみてもわからなかった
これで理科も俺が知っていることをそのまま教えることができるようで、安心したよ…
「ところで朝御飯はまだかな?」
「はい」
「では一緒に食堂へ行こうか。今日の献立はパンにベーコンだそうだ」
雑談しながら少し歩くと横に大きな建物についた。焼きたてのパンの臭いが空腹を加速させてくる
食堂は日本における学食みたいなシステムで、あらかじめ決まっているご飯を順番にお盆に乗っけていくものだ。高校のときは学食だったから少し懐かしさを感じる
朝御飯を受けとると俺は宋ちゃんたち異世界人組(日本人組)のところに向かった。もちろん、交流を深めるためだ
宋ちゃんのところには小学校高学年と思われる少女が2人ほどいた
「おはよう、宋ちゃん」
「おはようございます」
「お、おはようございます」
「…」
宋ちゃん以外の二人は典型的な人見知りっぽかった。たしかにあの家に男はいなかったもんね
「俺は日野本樹って言うんだけど、君たちの名前を教えてもらっていいかな?」
「鬼庭 清と言います。小学校六年生です」
「…金元 夏紀、です。五年生…」
「ふたりともよろしくな。みんなはどのくらいここで生活してるんだい?」
これには清ちゃんが答えてくれた
「一番長い子でも半年くらい前からです」
「清ちゃんは?」
「私は三ヶ月くらいですね」
こっちと地球とで流れる時間が同じだと仮定すれば、夏休みくらいの時期からこっちに来ているのか…
「寂しくないかい?」
「あんまりむこうのことを考えないようにしてますし、みんながいるから大丈夫です」
「それはよかった」
おしゃべりしながら朝御飯を食べているとすぐ時間がたってしまっていた
「勉強するところはどこにあるんだ?」
「校舎があるのでそこで」
「案内してもらえるかな」
「はい!」
ついに俺の教師人生が始まる…
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