第一章第二幕 騎士の歴史
まだ説明回です
「研究は難航した。うまく生体魔力を流すことができなかったからだ。そこで研究者たちは人間に埋め込めば制御できるのではないかと考えた」
危ない話なってきたぞ…
「そういうわけで傷痍軍人に声をかけて人体実験を行った。結果は…」
焦らすなぁ
「全員爆散した」
「は?」
「力を制御できなかったようでな。元から備わってない機能を後から付け加えると体が混乱するみたいだ」
いきなりグロくなったな…
「そこで人工的に体を作り、加える力に制限をかければどうか?という話になった」
なかなか良い考えだと思うな
「そうして作られたのが私を含む12人の機巧騎士だ」
「残りのお二人は?」
「彼女たちはもっと後に作られた。そこはあとで話す」
「はい」
焦りすぎたかな?
「そして、彼らは10年の間自らの能力を把握し、鍛え上げた」
「10年もですか?」
「そうだ。私はこう見えて80歳を越えてるんだ」
機械ってすごいな…。でも人は150年分の記憶しか脳に入らないとか聞いたことがあるような。その辺はどうなんだろうか?
「この先何百年も生きていくと思うんですが、記憶とかが混乱する恐れはないんですか?」
「我々は今のところ500年分の記憶を保存できるように設計されている。実際は圧縮して文字だけにしたりするからもっと多く入るはずだ」
「なるほど」
やっぱり機械ってすごいな
「話を進めよう。10年の訓練の後、次なる世代の製作が始まった。今度は志願制で若い人々から選ばれた。それが彼女たち24人だ」
「なぜすぐに次の世代を作らなかったのですか?」
「次の世代を指導するには同じ機巧騎士が良いだろうということと、あとは初めて作られた存在だからデータ集めもしていたのだよ」
「辛くなかったんですか?」
「辛くない訓練などしても意味がないだろう?」
勉強をサボっていた身としては耳が痛い…
「話を戻そう。そうして24人の騎士も10年ほど訓練を積み、また新しい世代を作る、というサイクルで現在は3世代目を訓練している」
「つまり、この部隊の歴史は20年ちょいということですか?」
「実際は研究の下積みがあったからもっと長いが、実働年月としてはそんなものだ。ところで、君は疑問に思わないかね?」
「何をですか?」
「このちぐはぐさにだよ。魔法があるというのにわざわざ超能力を研究しているという状況にだ」
確かに魔法がある世界でわざわざ超能力を研究するメリットは薄いと考えられる。それに暴走する危険性もあるのにそうまでして研究する意味は何だろうな?
「魔法を使う人が少ないからとかですか?」
実際にそうだとしても暴走の危険がある兵器を戦争に使うにはデメリットの方が大きそうな気もする
「それもある。しかし最大の理由は超能力が魔法を超えられる、とこの部隊の創設者が考え、研究してきたからだ。我々は言わば魔法よりも超能力の方が可能性があると信じる者たちの希望となっているというわけさ」
そしてこの人は言わなかったがそんな考えを持つ人たちは少数派なんだろう。そうでもなければこんな結界を張る意味はない
「そしてその創設者は君と同じ異世界から来た人だ」
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