21話 選んだ道とこれから
布団に入り込んで眠りに着く寸前、枕元のスマホが鳴り響いた。表示を見るとパパからだった。
この前怒られてしまったのでどうにも
話しにくいなという気持ちを抱えながらも電話に出る。
「もしもしパパ・・・?どうかした?」
「実は明日家に帰ることになった」
いつもと変わらない冷静沈着な声がパパらしかった
明日帰るというのも急だけれどもまたそれもいつものことといえばそう。
「そうなんだ・・・」
「それと。話しがあるんだ。帰ってから話す」
「わかった」
話しってなんだろう?気になるけれど・・・明日になればわかるか。
翌日
「最近ネットのクレーンゲームも人足が途絶えたような気がする」
リアルのゲームセンターはどうなんだろう?
またあおちゃんと行ってみたいな。今度はみゆちゃんも一緒に。
などと朝からネットに勤しんでいると。階段を上がる音が不意に聞こえてくる。
「パパかな・・・?」
予想的中。むしろパパ以外だったら怖い。
雪をわずかに積もらせたパパは冷静ながらも少し驚いた様子だった。
「エレナ。もう起きてたのか・・・!?」
「うん・・・?」
最近では早起きする生活にもなれていて違和感がなかったけれども
良く考えてみたらパパにしてみれば私が早起きするようになったのは知らない事だった。
「そうか、お土産居間にあるから降りてきて食べなさい」
「わかった」
パソコンをシャットダウンし
1階の居間へと向かうとテーブルの上に箱に入ったお土産がたくさん置かれてあった。
パパはというとキッチンの方で何やら作業をしている。
甘い良いにおいがする・・・。
「そういえば、旅の月が置いてあったけど・・・あおいさんから貰ったのか?」
「みゆちゃんから貰ったの・・・みゆちゃんは新しい友達」
「そうなのか?あれからまた友達が出来たのか?」
パパはテーブルの方にやって来てココアが入ったマグカップを置きながら隣りに座る。
甘い香りの正体はこれだったんだ。
「うん・・・。お土産開けていい?」
「あぁ。もちろん」
大きな箱の包みを開けると中にはチョコレートが入っていた。
「エレナは随分と変わったようだな・・・実は話があるんだ」
「なに・・・?」
「パパと海外で一緒に暮らさないか?昔のお前なら外に出ることも出来なかったが
出れるようになったし。海外に行っても大丈夫だと思うんだ」
私は嬉しいはずなのにその提案にびくりと強張ってしまった。
海外・・・一緒に暮らす。それはここを離れるという事というのがすぐに頭に浮かんだ。
昔の、一人だったころの私ならすぐにその提案を受け入れていたかもしれない。
でも・・・今は。
「考えさせて・・・」
「エレナ。この前の事もあるだろう?急に入院したりして。何があるかわからないし一緒に居た方がいいと思うんだ。友達に迷惑かけることはないんだぞ」
「それはそうだよね・・・」
それからどこか居心地の悪さを感じながら居間で過ごしやがて隙を見て部屋へと戻った。
「・・・なんか落ち着いた」
どうしよう、これから。部屋の中のドアの前に立ち尽くしたまま悩んでしまう。
パパと海外で暮らした方が良いのはわかる。すごく。でも・・・あおちゃんとみゆちゃん。
二人と離れくない。そんな気持ちが強くあった。
迷惑・・・。パパの言うことも正しい。確かにこの前みたいに急に倒れたりしたら迷惑もかけるし心配もかける。
家族の愛は無償だけれど、友達の愛は多分きっと無償ではないから。
「とりあえず二人に連絡しよう・・・」
『実は海外からパパが帰ってきて、海外で一緒に暮らそうってことに
なったんだけどどうしょうか悩んでるの・・・。あおちゃんとみゆちゃんと
離れたくない』
そんな文面を二人に送る。
『海外・・・・!?離れたくないなら行かなくていいだろ?私も嫌だよエレナと離れるのは』
直ぐにみゆちゃんから返信が来る。
みゆちゃんもそうなんだ・・・。
ただあおちゃんは学校だったのか、夕方になってから返信が来た。
ちなみにパパが呼びに来ることもなかったのでずっと部屋で過ごしていた。
パパ怒ってるのかなぁ・・・。
『今からみゆちゃんとエレナちゃんの家に行っても大丈夫?』
『大丈夫だけれど・・・?』
一応パパにも伝えておかないと。空気は重いけれど
不安になりながらも居間へと向かうとパパは特に何も気にしている
様子は無く。ご飯の支度をしていた。
「これから、あおちゃんとみゆちゃん来るけど・・・大丈夫だった?」
「あぁ、そうなのか?別にかまわないが。何か用事か?」
用事・・・・?どういう理由で来るのかよくわからなく
私は曖昧に返す。
「うん。そうだと思う」
再び部屋に戻り部屋で過ごしているとしばらくして
玄関のチャイムが鳴り響く。扉を開けると同時にみゆちゃんが抱き着いてくる
「海外へは行くな!ずっと一緒に居てくれ」
「みゆちゃん・・・・」
「とりあえず、3人でお話ししようか?」
打って変わってあおちゃんは落ち着いていた。
あおちゃんはあんまり離れなくないと思っていないのかな・・・。
そんなことは無かったのにこの時はそう考えてしまい少し胸が痛くなった。
「行きたくないなら行くなよ・・・」
「うん、私もそうしたいけれど・・・入院した時あおちゃんに迷惑をかけちゃったから」
私はあおちゃんとは目を合わせずにうつむいて話す。
目を見るのが怖かった。怖気づいている自分がいた。
きっとそんな事を言っておきながら期待していたのかもしれない、そんな期待を
切られるのが怖かった。
「私・・・迷惑だと思ってないよ。・・・だって困ったとき助けるのが友達だから」
「私もそう思うなー。だからさこれからも迷惑いっぱいかけていいんだ、私と
あおいで助けるから」
「あおちゃん、みゆちゃん・・・」
私は泣いてしまっていたけれど顔をあげると二人は笑っていてくれた。
「エレナ、良い友達が出来たね」
振り返ると扉を開けパパがやってきた。
恐れくいつからか扉の外側で話を聞いていんだと思う。
「パパ・・・」
「エレナ、せっかく素敵な友達が出来たんだ。日本に残りなさい」
パパは私の頭を優しく撫でた。
「うん・・・ありがとうパパ」
「お父さんありがとうございます。私、エレナちゃんの事絶対に幸せにします」
あおちゃんは立ち上がり深々と頭を下げる。
「あぁ、よろしく頼むよ」
ー
それからみんなで居間に行きパパが作ってくれた夕ご飯をみんなで食べた。
それはそれはとても賑やかな夕食だった。
初めてだな、こんな夕食。慣れていなくてどこか照れくさかったりもしたけれど。
「それにしてもさっきのあおいの言葉、恋人みたいだったなー
お父さん娘さんをくださいっていうあれ・・・」
みゆちゃんはまた小悪魔的な表情をしてあおちゃんをからかい始める。
言われてみればそんな感じもする・・・。
あおちゃんを見やると少しばかり顔を赤くして動揺していた。
「もう・・・みゆちゃんったら!」
「なー、とうちゃんはどう思う!?」
「あおいさんみたいにちゃんとしてる人なら問題ないな」
冷静な対応過ぎて本気かもわからない・・・。
「もう・・・お父さんまで・・・」
それから困った人たちだねと言わんばかりの笑顔で
私の方を見やる。思わずドキドキしてしまう。
(良いな・・・なんだか)
ひとりじゃない、大事な人が傍にいる環境に幸せを感じる。
そして私はいつか二人にちゃんと与えられて貰った幸せの分返せるようになろうと決意した。




