また会おう、その時は絶対ナツ! 五十五球目
五十五
「――わたしにも呼ばれたい? お、お兄ちゃん、って」
呆けた声を出す僕に、冬葉はもう一度問いかける。
一瞬でもドキっとしそうなワードを添えて、それもはにかみながら。脊髄反射で「そりゃあね」なんて言ってしまいそうな軽はずみを前歯の壁で止めた。定期健診行っていて助かった。
「冬葉からは、遠慮したい……かな?」
「な、なんで? 同い年だから?」
「そうじゃない。むしろ呼ばれたい。でも、やめておくよ」
「真卯ちゃんが呼んでるから?」
「真卯は関係ない。僕個人の、『憧れ』みたいなものだ。……真卯は、確認もなしに開口一番で呼ばれたから止められなかった……」
訂正するのが憚られた。それほどまでに真卯の瞳、上目遣いは、僕の心を一発で掴んだ。阿○連さんじゃないが、距離の縮め方が尋常じゃないほど早い。かといってギクシャクしたとはいえ、ほかのみんなとのファーストコンタクトの際はなかなか縮めようとはしなかった。
計れないってよりは、計れすぎている?
世渡り上手とも呼ぶが、それが才能か否かは僕の裁量でやるべきではないだろう。封印封印。
「憧れ……?」
「そ。憧れ。ロマンとも呼ぶ。僕には今のところ、妹や弟はいない」
今更あの義父が実の子をもう一人作るとはあんまり思えないが。いや、嫉妬とかじゃなくて……。
「なんていうか、後輩や冬葉のような可愛い子、年下の女の子に呼ばれるような、言い方が悪くなるけど〝表面上〟よりもさ、その……〝本当のキョウダイ〟から呼ばれてみたい憧れ、願望が、僕の中でずっとあるんだ」
この気持ちをわかってくれる同士は多いはずだ。多いと言ってくれ!
「だから、特別冬葉がどうとかはまったくない。となりの芝生が青く見えるような叶いそうもない夢を見ているだけに過ぎない。それに、変に真卯より近くて長い時間一緒にいてくれる冬葉に一度でも、『お兄ちゃん』なんて呼ばれると本当に妹にしたくなってしまいそうになるから、ていう理由もあるけどな。はは……」
冗談を交えて最後は笑ってみせたが、冬葉はなにやらぶつぶつ言っていた。
「……か、可愛い。いやいや言葉の綾かもだし。第一、夜夏くんはたらしなところが……」
「冬葉?」
「ひゃ⁉ な、なんでもないよ! そ、そういうことね! 納得納得……したよ!」
声をかけるなり慌てて胸の前で手を振り、莉乃たちのとこへ走っていった。冬葉が可愛いのは今に始まったことじゃないけどね。
冬葉の眩しさは僕だけの秘密だ。
結論、冬葉からはずっと、『夜夏くん』と呼ばれたい。それだけさ。
と。
近所迷惑も考え、マウンドまでは照明が届いているのだが、外野は薄暗い。それの対策として黄色いボールで行われる第二勝負。
ヒメが大きな声で合図する。
「それでは、始めますわよ!」
少し遅れてしまいましたが、更新です。ストックは2話あります。お楽しみに。
今回は夜夏と冬葉の会話だけで終わってしまいました。次回もこんな感じです。会話より野球しろよ、と強く思います。
夏も本番になりました。夜はまだ快適なほうで助かりますが、いつまで続くやら…
友城にい




