また会おう、その時は絶対ナツ! 五十一球目
五十一
「ちょっと、いや、かなりキモかったかな……」
無意味に素振りをする莉乃を横目に、先ほどの冬葉への投げかけを思い返していた。思いあがるのも大概にしろ、とでも言われそうなセリフだったな、と。
今夜は一人反省会だ、と決めているとヒメが「行きますわよー」と合図を出す。
「さあこい!」
なんて気合いを入れる莉乃。
――すぱんっ!
軽快にキレイに収まる球を見送って数秒。莉乃が答える。
「……速いな。一一六キロ」
「真卯は?」
ルールを忘れる前に確認。
「多分、今日一の球。一二四キロだと思う」
「真卯が近い。一二二キロだ。莉乃の誤差も六キロ差。さすがだな」
「くそっ! 自信あったのに! ああもう、次っ!」
記録更新であったものの、常に高みを目指す莉乃だ。この調子だと南雲ちゃんの暫定記録を抜かせるかもしれない。
ところでヒメは何キロで設定したのだろう。かなり攻めた数値だ。
タイムを入れる間もなく、二投目が来る。
――すぱんっっ!
「……これも。うーん、一二二キロぐらいか?」
「真卯はもっと速いと思った。ギリギリの一二五」
「……ああ、真卯が当たりだ。てなわけで莉乃の記録と南雲ちゃんの記録が並んだ」
しかし莉乃は顔色一つ変えずに三球目に意識を向ける。
「お兄ちゃん……?」
「真卯? どうした」
なにやら不審に感じたらしい真卯に心配される。
「…………ん、べつに」
とくに尋ねられることはなく、前に向き直った。
……ごめん。
嘘だ。
本当は、一二七キロだった。
じゃあなぜ止めないのか。それはまだ「誤差の範疇」だからだ。ルールの都合上、僕のスピードガンで判定しているに過ぎない。
たとえヒメが一二五キロで設定しても、正確に一二五キロばかりを出せるわけじゃない。ここで止めては何度も止めることになるだろう。
だからあえて一度隠しておく。
……が、僕も安全面の考慮は賛成派だ。真卯を危険に晒したくはない。もう一度、一キロでも越えていれば全力で阻止する次第。
――と。
「……逃げて」
「え?」
突然ヒメがマウンドから降り、こちらに走ってくる。
「皆さま、今すぐそこから離れてくださいまし! マシンの速度調整が反応しなくなりました。ですので、早く逃げ――」
「るって言葉は、あたしの辞書には」
「真卯の辞書にも載ってない」
二人は退くどころか闘志を燃やす。莉乃は毎度のことだが、真卯もそっち側の性質持ちなのか。こりゃ息が合いそうだ。
「なにをおバカなことを。おそらく最高速度が――」
ヒメが言い終わる前にマシンが呻りを上げ、発射口からボールが放たれる。
まるで空気を割くような音。
明らかに次元の違う球の速度。ヒメを目にも止まらぬ速さで追い越し、真卯のミット目がけて突き抜ける。
「よそ見してんな。よく見とけ! あたしは逃げねぇ! どんな勝負だろうと、最後まで全うする、これが! あたしなりの! 諦めないってことだぁぁぁぁ!」
雄叫びを上げる莉乃。
グリップのギリギリを握り、迫る豪速球と相対する。
一歩も引かない。極限までボールを引きつける。
バットは――
バシィッッ!
「うっ……」
けたたましい音を出した真卯のミットからボールが零れる。
莉乃のバットは――回らなかった。
皆さま、久しぶりです。昨年の八月ぶり。十ヵ月ってところでしょうか。友城は元気にやってます。そんなこんなで今年もまた暑い季節が迫っております。昨年よりマシになることを祈って。
P.S
最近パソコンを買い替えました。




