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一番近くにある日常 入!  作者: 友城にい
暑かりし、草野球編
72/78

また会おう、その時は絶対ナツ! 五十一球目

  五十一


「ちょっと、いや、かなりキモかったかな……」


 無意味に素振りをする莉乃を横目に、先ほどの冬葉への投げかけを思い返していた。思いあがるのも大概にしろ、とでも言われそうなセリフだったな、と。

 今夜は一人反省会だ、と決めているとヒメが「行きますわよー」と合図を出す。


「さあこい!」


 なんて気合いを入れる莉乃。


 ――すぱんっ!


 軽快にキレイに収まる球を見送って数秒。莉乃が答える。


「……速いな。一一六キロ」

「真卯は?」


 ルールを忘れる前に確認。


「多分、今日一の球。一二四キロだと思う」

「真卯が近い。一二二キロだ。莉乃の誤差も六キロ差。さすがだな」

「くそっ! 自信あったのに! ああもう、次っ!」


 記録更新であったものの、常に高みを目指す莉乃だ。この調子だと南雲ちゃんの暫定記録を抜かせるかもしれない。

 ところでヒメは何キロで設定したのだろう。かなり攻めた数値だ。

 タイムを入れる間もなく、二投目が来る。


 ――すぱんっっ!


「……これも。うーん、一二二キロぐらいか?」

「真卯はもっと速いと思った。ギリギリの一二五」

「……ああ、真卯が当たりだ。てなわけで莉乃の記録と南雲ちゃんの記録が並んだ」


 しかし莉乃は顔色一つ変えずに三球目に意識を向ける。


「お兄ちゃん……?」

「真卯? どうした」


 なにやら不審に感じたらしい真卯に心配される。


「…………ん、べつに」


 とくに尋ねられることはなく、前に向き直った。


 ……ごめん。

 嘘だ。

 本当は、一二七キロだった。


 じゃあなぜ止めないのか。それはまだ「誤差の範疇」だからだ。ルールの都合上、僕のスピードガンで判定しているに過ぎない。

 たとえヒメが一二五キロで設定しても、正確に一二五キロばかりを出せるわけじゃない。ここで止めては何度も止めることになるだろう。

 だからあえて一度隠しておく。


 ……が、僕も安全面の考慮は賛成派だ。真卯を危険に晒したくはない。もう一度、一キロでも越えていれば全力で阻止する次第。


 ――と。


「……逃げて」

「え?」


 突然ヒメがマウンドから降り、こちらに走ってくる。


「皆さま、今すぐそこから離れてくださいまし! マシンの速度調整が反応しなくなりました。ですので、早く逃げ――」

「るって言葉は、あたしの辞書には」

「真卯の辞書にも載ってない」


 二人は退くどころか闘志を燃やす。莉乃は毎度のことだが、真卯もそっち側の性質持ちなのか。こりゃ息が合いそうだ。


「なにをおバカなことを。おそらく最高速度が――」


 ヒメが言い終わる前にマシンがうなりを上げ、発射口からボールが放たれる。

まるで空気を割くような音。

 明らかに次元の違う球の速度。ヒメを目にも止まらぬ速さで追い越し、真卯のミット目がけて突き抜ける。


「よそ見してんな。よく見とけ! あたしは逃げねぇ! どんな勝負だろうと、最後まで全うする、これが! あたしなりの! 諦めないってことだぁぁぁぁ!」


 雄叫びを上げる莉乃。


 グリップのギリギリを握り、迫る豪速球と相対する。


 一歩も引かない。極限までボールを引きつける。

 バットは――


 バシィッッ!


「うっ……」


 けたたましい音を出した真卯のミットからボールが零れる。


 莉乃のバットは――回らなかった。

皆さま、久しぶりです。昨年の八月ぶり。十ヵ月ってところでしょうか。友城は元気にやってます。そんなこんなで今年もまた暑い季節が迫っております。昨年よりマシになることを祈って。


P.S

最近パソコンを買い替えました。

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