また会おう、その時は絶対ナツ! 五十球目
五十
ピッチングマシンで捕球を繰り返しやっていた真卯の元に帰還する。今は三人で内緒話のように丸になっているが……。
「回復なされたようですわね。しかし冬葉、無理は禁物ですわよ」
「うん、ありがとう。待たせてごめんね。もう大丈夫、わたしが来た」
「?」
首を傾げる真卯。
場を和ませようとでもしたのだろう、冬葉の渾身のギャグも空振りに終わる。
ちなみに平和の象徴のフィギュアは部屋に飾ってます。
心の平和も遠い今日この頃。
「な、なんでもない……。よ、四球目からだよね。お願い、姫夏ちゃん」
「では、再開致しますわね」
ゆっくりと右のバッターボックスに入り、練習通りにバットを構える。明らかに先ほどより冷静になれている。
目線をマシンの発射口に合わせ、じっと待つ。
放たれた白球がミットに渇いた音とともに収まる。
「一〇〇キロ――」
最後までボールから目を離さなかった冬葉がコールする。
☆☆☆
やはり、そう上手くはいかないものだ。
「全然だったね」
ボールボーイ用(なぜある?)の腰かけイスに座る冬葉が弱々しく零す。
「しょうがないよ。運動あんまやらない人からしたら八十キロ以上の球は全部高速に見えるものだ。それが経験則ってやつだし、次に活かせばいい」
結局、冬葉の誤差は一〇〇→八十七。九十五→一〇九に終わった。
一巡してトップは誤差三キロの南雲ちゃん。次点で莉乃の十二キロ、冬葉の十三キロとなった。
「……うん、そうだね」
心なしか元気がない。緊張、というよりは落ちこんでいた。
「漫画だったら、夜夏くんみたいな人に元気づけられたあとに、すっごい成績叩きだす展開なのになぁ、って」
最近はそうでもないのも増えたけどね。リアル志向を悪く言うつもりはないが、締めつけを強くすればするほど、フィクションの幅が失われるのでは、と懸念を訴えたい。
「わたしじゃやっぱり、漫画やラノベの主人公にはなれないのかな。それはそれで、わたしらしい身の丈なのかもしれないけどね」
悔しそうに笑う冬葉。
僕もきっと違ないよ。それでも――
「一矢報いることはできるんじゃないか」
「え?」
「たとえスポットライトが僕らを見向きもしなくたって、気にすんな。僕が冬葉の勇姿を見ていてやる」
「夜夏くん……」
「僕だけじゃない。ヒメや莉乃、南雲ちゃんだってきっと忘れない。だから、あとでスポットライトのやつに後悔させてやるぐらいの活躍をしてやれ。冬葉のカッコイイを僕らが独占するぐらいのさ」
「うん……」
そんな大それたこと出来っこないって顔をしている。でも、それでいい。人間ってのは勝手に設けられた期待値に応える必要はないのだ。
僕はあえてオーバーに言った。冬葉に明日の試合で他を圧倒する活躍をするのは、不可能に近いのだから。
でも、それでいいのだ。
オーバーに言葉をかけることで、明日への努力目標を下げることが目的だから。明日だけじゃない。このあとの二打席目だって。
気負う必要なんてないのに。
ただ、笑っていて欲しいだけなのに。
そう思いながら莉乃の二打席目の測定を始めた。
少し久しぶりです、友城です。
今回で野球エピソードが50話を迎えました。変わらず試合が始まりそうにないです。
それはそうと先月投稿する予定がずれてしまいました。申しわけないです。
あとは51球目はすでに書いてます。近日投げておきます。ぜひお読みいただければ。
暑い日が続いています。皆さま、エアコンは使いましょう!
友城にい




