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一番近くにある日常 入!  作者: 友城にい
暑かりし、草野球編
66/78

また会おう、その時は絶対ナツ! 四十五球目

  四十五



 莉乃がコールする。


「一〇五キロ!」


 憂いている場合ではないので、僕は急いで確認する。


「ひゃく――」


 そこまで言いかけた瞬間、真卯に止められる。


「待って。真卯わかる。正確かわからないけど、一一九キロ。どお?」

「おお、すげぇ、正解」

「まじか……」


 ピタリと当て、莉乃だけじゃなく皆が驚いた。小想と雪華は誇らしげにしていた。

 そのあとの四球も、真卯が誤差一、二キロ以内を言い当てる凄技を見せるも、肝心の莉乃は誤差十二キロより縮められなかった。


「くっ……まったくわからん……」


 まだ終わったわけではない。天才肌の莉乃ならきっと感覚を掴めると信じ、ここを見送る。次に出てきたのは南雲ちゃん。


「南雲のタ~ン、南雲は~しっかりとボールを見る、を~発動~。むう。さあ~、ばっちこ~い~」


 腰を低くしてバットを肩で構え、そのままぐるぐる回す。モデルは誰だ? 野球の知識偏っているからな……。

 それと、ばっちこい、って今の子も言うの?


「この、速球の魔術師タイトルホルダーを見破ってごらんなさい!」


 莉乃が手も足も出なかったことがよほど嬉しかったのか、ヒメが調子に乗りだした。なんだよ、魔術師でタイトルホルダーって。


 それはそうとヒメが一球目を投じる。

 南雲ちゃんは微動だにせず悠然と見送る。

 果たして解答は――。


「……」


 南雲ちゃんはただ考えこむ(?)。

 それにしてもシンキングタイムが長く感じた。


「南雲ちゃん?」


 僕がそう聞くと南雲ちゃんはおもむろに口を開けて、


「姫夏ちゃ~ん、まだですか~?」


 ずこー。

 南雲ちゃんらしいといえばらしいが。きみも一緒に一週間練習したよね……。明日、大丈夫かな。

 ちなみに計測は一〇四キロだった。真卯は見事に当てた。


「んじゃあ、気を取り直して二球目来るぞ。南雲ちゃんも僕たちとおんなじぐらいたくさんヒッティングの特訓したんだ。きっとわかるよ」

「むむ! そうだね~、夜夏くんありがと~。南雲、勇気出てきた~!」


 一球目と違い、基本的な構えであるバットの先端が、頭を少し飛び出るぐらいの高さになるように立てて持つ。

 まあ打つわけじゃないけど。


 マシンが機械音を上げ、ボールを投じる。

 すぐさま南雲ちゃんがコールした。


「九十七ぐらい~?」

「惜しい。九十四キロだ。現在トップだ」


 嬉しくて真卯が答える前に言ってしまった。そもそも参加しているわけじゃないが。南雲ちゃんもぴょんぴょん跳ねている。


「やった~。南雲の~優勝~、夢の妹~、お肉食べほ~だい~」


 いやまだだけど。お肉食べ放題はべつにいいけど。

 あとの三球は更新こそ出なかったが、五~七キロの誤差で成果を見せた。

 下がっていく南雲ちゃんを見送っていると、少しねた様子のする真卯がボソッと呟く。


「……真卯わかってたのに」

「あ、ああ……ごめん真卯。悪気はなかったんだ」


「そんなの、真卯もわかってる。お兄ちゃんがさっきのお姉ちゃんが努力しているとこを見てきたから嬉しかったんだよね」


「まあ、そうだね。南雲ちゃんは、なんでも卒なくこなす器用な子なんだ。勉強もスポーツも礼儀も美容も料理も文化もお笑いも」

「お笑い……じゃあ一球目の、わざとだった?」

「かもね。だけど、これと言った特技、言ってしまえば夢中になれるものがないらしいんだ。真卯が野球を好きみたいな、いつまでもやっていたいことが」


「さっきのお姉ちゃん、窮屈そうだね」


 言い得て妙。

 おもわず感嘆する。


「でもこれは、南雲ちゃんの問題で、南雲ちゃん本人にしか解決できない。だから、無理にとは言わないけど、真卯もよければみんなの成功を喜んでくれたら嬉しい」

「お兄ちゃんは、大変そうだね」

「そう、かな。真卯たちのが毎日努力して勉強して、今回みたいな遊び半分の助っ人にも来てもらって、僕とは比べものにならないと思うが」


「お兄ちゃんやっぱり大変そう。真卯、褒められると伸びるタイプだけど、お兄ちゃん絶対褒められなれてないでしょ? 真卯そうゆうのわかる」

「あはは……かもしれないな。姉はよく褒めてくれるが、イマイチ自信……につながらなくてね」


 なに年下の、小学生の女の子に相談に乗ってもらいそうになっているのか。危ない危ない。

 ――と。


「真卯は、まだお兄ちゃんのことほとんど知らない。けど、褒めてくれる人が少ないなら真卯がたくさん褒めてあげるね」


 真卯は出会って速攻 男の人を勘違いさせるようなムーブを噛ましていたがホンモノなのかもな。小想も注意していたし。体裁を保たねば。


「だったら僕もたくさん真卯を褒めるよ」

「やっぱり真卯の見立てどおりのお兄ちゃんだった。優しい。本当のお兄ちゃんになってほしい」


 うっふ。油断したら懐柔かいじゅうさせられそうだ。


お読み頂きありがとうございます。

本当は昨日、投稿する予定だったのですがメンテナンスが長引いていたらしいので今日に持ち越しました。ホワイトデー台無しですね。

内容は真卯をメインに。どういう子か、まだイマイチ著者も掴めていません。これからもっと掘り出せたら、と思います。

では、また来週。21日?


友城にい

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