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一番近くにある日常 入!  作者: 友城にい
暑かりし、草野球編
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四十一・七 中野家の一族 中の上編~後継者探し編~

 初代はすでに意識していた。


 後継ぎの存在に。

 後継ぎは絶対に男! と時代背景と性別による能力差を、さほど気にしていたわけではなかったものの、二年後そのまた一年後と順風満帆に子を増やしていくも全員女の子という結果になった。

 三人もいれば誰かが継いでくれるだろう、そんなふうに楽観視し、問題を先延ばしにしてしまったのがすべての始まり。


 凄惨な時代を越え、平和を目指しだした国の中の一企業は十三年後、三女の後継ぎ拒否で後継者問題に直面する。

 圧倒的男社会の世間で、女の子はやはり社長になりたがらなかった。無理強いをできるはずもなく、かといって四子は見込めなかった。初代と数個しか歳が違わない妻に、これ以上のリスクと負担はかけられない。


 我が子への後継させる道は諦め、部下の誰かに託す道を模索した。


 しかし一年後。

 思ったよりも難航を極めた資質のある部下さがし。まだまだ創設二十年そこらの発展途上の会社。未来、いわば将来性を感じなければステップアップは望まない。

 自身が以前いた会社でも、昇進を望もうとも社長になろうとは微塵も思わなかった。


 やはり何十年かかろうと我が子に。そんな一年越しに再燃した子孫へのバトンパスの夢。が、妻に身籠らせることはできない。

 そこで初代は、苦肉の策という名で妻に土下座した。



 〝どうしても子がもう一人欲しい〟



 それは遠回しに不倫させてほしいと言っているようなものだ。現実そうだったが。当然OKなんて出るわけもなく、三ヶ月ほど粘りに粘って頼みこんだそうだ。


 誓約書の内容は明かされていないが、許しを得た初代は、べつの女性とのあいだに子を身籠った。

三子と、じつに十六歳差の「しし」の誕生だった。


 初代は嬉しい反面、この子に断れたらいよいよ後がなくなる。懸念は消えなかった。もし仮に男の子だったとして心配がなかったのかと言うと、想像が難しい。


 そんな私欲な想いとは裏腹に、経営は年々右肩上がりな業績を叩きだし、七十手前となった初代もとい、父親に十三の四子の答えは拒否だった。

 あまりにもわかりきっていた返答に、初代はすんなり受け入れた。

 途方に暮れた旅がまだまだ続きそうだな、と出そうになる溜め息をグッと堪えた次の四子の言葉に、初代は目を丸くした。



 〝父の気にいった人と結婚したい〟



 要するに婿養子として迎えて次期社長になってもらう。いわば政略結婚を申し出たのだ。

 こっちとしては願ってもない提案だが、初代は本心か慌てて尋ねた。



 〝父のためなら私はそこを幸せな場所に自分でする〟



 と言ってのけた。


 片親が異なるだけでこうも人間が変わってくるのか、とびっくりした。育て方や環境は上三人と平等に、愛を持って成長を惜しんだ。


 性格は圧倒的に母親似だった。

 小さいときから勉強も運動も不得意で、というよりもやる気がなく、好きなことだけして遊んでばかりの子だった。


 努力を嫌い、なんの苦労も知らないくせして他人ひとを使うのだけは天性の才能があり、そのせいのように思える。


 世渡り上手とも呼ぶのか。

 継ぎたくはない(面倒そうだから)けど、社長夫人になったほうが楽しそう(ラクできそう)で、思い返してみても楽しかったと話してくれた。


 それはそうと、本当の三年間の最終判断ファイナルリミットが始まった初代。


 結果――認めてもいい逸材は見つからなかった。結婚相手ともなれば、より条件を厳しくしてしまっていたのだ。


 そんな折、他県の支店で働いている息子の自慢話をする部長を見かけた。歳は四子よりひと回り上。ルックスが良く、営業マンとして活躍しているそうだ。

 ここに初代は、自分と重ねる。まるで過去の自分を見ているようだと。部長からさらに息子の話を進めていくと、どうやら社長じぶんのように起業したい夢があるらしく、数年後に独立する旨を昨晩聞いて感動したのだとか。


 普通であれば応援または出資でもしてあげたいところなのだが、切羽詰まっていた初代は、その場で娘の婿養子になってもらえないか懇願したのだという。


 部長は返事をするよりも前に、頭を下げる社長の姿に戸惑い、まずは子らの見合いだけを了承した。

 部長の息子――つまり祖父に当たるわけなのだが、のちに祖父はあるインタビュー記事にて、このように述べている。



 〝一目惚れだった〟



 と。


 男手ひとつで育ててくれた父を安心させたくて言ったとはいえ、いくらなんでも大きいホラを吹いたことを後悔していたらしい。

 突出した取り柄もなければ、勉強も運動も並以下のどこにでもいる学生だった。しかし加えて能力値スペックの低さを際立たせてしまったのが、鼻につく言い方をしてしまうと顔がよかったからである。

 今風で言うところの残念イケメンってやつだ。


 そんな自分に縁談の話、それも社長の娘。どんな都合があるのかこのときの立場では見当もつかなかったが、あまりにも不釣り合いに感じた。

 年齢も中学を卒業に控えた子というのだから尚更断ろうと思っていた。


 だったのだが――


ちょうど4ヶ月ぶりとなりました。前中後の三部構成のはずが気づけば六部に。どうか最後までお付き合いくださいませ。

予定は15、22、29日の週一で更新する予定です。

内容につきましては、初代だいぶやらかしてますね(笑)


友城にい

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