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一番近くにある日常 入!  作者: 友城にい
暑かりし、草野球編
56/78

また会おう、その時は絶対ナツ! 四十一球目

  四十一


 ヒメにしてはまともな意見。

 本名でネットゲームする感じだろうか。

 と、感心と疑惑を巡らせているとヒメが意味ありげにウインクする。


「?」


 な、なんだ……?

 なにかサイン決めていたっけ? そうでなければ弟に突然ウインクするやべぇ姉になる。


「呼び捨てがあだ名……。しかしいいんでしょうか。さすがのあたしも気が引けるというか……抵抗が……」


 妙案だとは思ったのだが、いくらなんでも無理難題ハードルの位置を高くしすぎたようだ。

 逆の立場になって考えるとためらって当たり前だよな。失念してた。

 そもそもがヒメの案。同じ価値観の僕の賛成。改めなくては。


 ここで少々自分語り。

 ひけらかしているように聞こえても致し方ないのだが、僕は三歳――いわゆる自我が芽生えたときには下の人間しか周りにいなかった。


 正確には、養子である僕にさえ周りの大人もその子どもたちも敬語を使って頭を低くして話しかけてくる人たちばかりだった。

 世界でも有数の権力と影響力を持つ大企業――中野財閥の後継者の一人。多少の威厳をねじ曲げてでも媚びへつらっておきたいものだろう。


 それを約十年、十三のときまでほぼ毎日続いた。それでも僕を正していてくれたのは、ほかでもないヒメだった。


『ビジネスとは売り場でのみ行われるのであり、結果である。』


 創設者(曾祖父)の言葉らしい経済理念が、本社のエントランスに大きく飾られている。三代目である現・最高責任者の義父からすれば、グローバル化が進む現代は、


『ビジネスとは人である。そして買い手を選ばなければならない。』


 のが、合っているとよく言っていた。

 数年経った今もまだ、理解の域に達していないが、いずれ来るのだろうか。理解できる日が。 


「あ」


 さっきのウインク、作戦の一環って意味か。

 とりあえず今は、実の娘であるヒメを理解するほうが先決に思えた。


「――じゃあさ」


 腕を組み、少し長かった考えを述べる。あんまし考えることをしない(糖分が欲しくなるから)莉乃の理性的な答え。レアだ。


「あたしのことは、ライバルだと思え」

「ライバル?」

「そうだ。あたし気を遣われるのが苦手でな。ライバルぐらいがちょうどいい。そして大の負けず嫌いを自負している。どっちゃにしろ明日の試合で、誰が一番活躍できたか勝負がしてぇんだ」


 対等な関係の所望。

 僕が南雲ちゃんと同じ一年生の後輩である莉乃を呼び捨てにしている理由もここにある。

 莉乃は決して上から目線や見下したりしない。真っ向からぶつかってくれる。が、果たしてそれを雪華がどう受け止めるか。


「……」


 難しい顔が終わらない。

 どれくらいの割合が、呼び捨てをしていいに傾いているのだろう。ないものを強請ねだる、知りたくてたまらない僕の感覚。

 頭おかしいやつの思考だ。そうでもないか。


「……明日まで、悩んでおく」

「いいぜ。あたしはべつに名前でも、激甘でも歓迎だからよ」


 チャームポイント(非公認)の八重歯を見せ、ニカッと笑う。神ではない。

 莉乃がこの際、雪華に呼び捨てを強制してあげたほうが気楽だったのかもしれないが、莉乃にそれをやらせるのは酷か。


 どっちにしろ明日、雪華が自ら決める。それだけの大きな違いだ。

こんにちは、友城です。

今回のお話は実を言いますと10日ほど前には書き終わってまして。ではなぜいつものように即投稿!とはならなかったのか、それは『中野家』についてこの際少し情報を出しておこうと思い立ったわけです。

そして情報をいろいろと整理しているうちに暑かったり、調べたりしていたらまたしても遅れてしまった、といつものやつです。

本当はこの後書きに全部書こうとしたのですが、あまりに長くなったので次話として次回(二話分け)番外編として投稿します。

よろしければ読んでもらえたら、と。読まなくても支障はありませんが。


友城にい

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