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一番近くにある日常 入!  作者: 友城にい
暑かりし、草野球編
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また会おう、その時は絶対ナツ! 三十二球目

 ほんのちょっと言葉にしただけでもう、心が温かくなる。

 毎日一緒にいるのに、新しい一面に出会うたびに惹かれていく。

 自分が思っている以上に、イメージした女の子を大切にしたい願望がある気がした。


「――素敵ですね!」


 同時に不安だった。

 言ったあとの三人の、僕を見る目がぽかんとしてしまっていたから。


 いくらなんでも気持ち悪かっただろうか、そんな刹那の葛藤を置いてけぼりにされるように、帽子から背中に伸びる髪を揺らしながら、僕の手を取った唯一まだ名を知らない小さな彼女。

 迫り来る「お兄ちゃんブースト」より、さらに強烈なキョドる衝動を、プレゼン前のまじないみたいな愛想で抑えこみ、感謝の弁をどうにか述べる。


 危ない、危なかった。僕にお節介な姉がいなければコヒュッていた。


「ツノリこうゆうの好きだよね」

「べ、べつにいいでしょ! 幸せなものにはあやかりたいの!」


 真卯がからかう。

 ツノリっていうのか。漢字はどう書くのだろ。


「ちょーっと、お二人さん!」


 睨んでばかりいた雪華がここで痺れを切らしたようだ。


「だまって聞いてれば、許婚とか幸せとか、か、かわいい……とか! どうでもよくない!」


 息を巻いたのかと思えば、途中で勢いが落ちる。どうでもいいかはともかく、本題から外れていたのは事実だし、ツノリと真卯も言い返しはしなかった。

 それよりも雪華の顔が、赤く見えた。短絡的だが、喋らなかった理由はコイバナみたいな背伸びした話が苦手なのかもしれない。


 まあ、僕も人のこと言えないけど……。


「それでご主人さまさ、本当なんだよね。助っ人やってくれたら『あたしたちに協力する』って」


 え?

 なに、なになに協力って。僕なにも知らないんだが、適当に相槌打っていいのか?

 ヒメが取り決めたことだ。相応の見返りはあるだろう、と踏んでいなかったと言えば嘘になるが……。

 とりあえずここは合わせておこう。


「ああ、安心してくれ。約束は守る。中野家を背負う者として、君たちが悲しむ結果にはしないことを誓うよ」


「「「おお!」」」


 少々カッコつけた僕に歓喜の声が上がる。


 気分いいな。

 学校じゃこんな扱いされないからな。いろいろあって……。ん? ご主人さま?


「そういえば自己紹介がまだだったね。申し遅れました、中野夜夏なかのよなつだ。呼び方は君たちにまかせるよ」


 僕が名乗るとなぜか三人は門の前の表札を確認した。はい、ちゃんと中野ここの人間です。そんなに金持ちっぽくないかー。


「ご、ご丁寧にありがとうございます……あ、わたしはツノリっていいます。小さい想いと書いて小想つのりです」


 野球をやる上での教えなのか、礼儀正しく帽子を脱いだ彼女――改め、小想。いい名前だな、とも思った。


「真卯は真卯だよ。もし寂しかったり悲しくなったりしたら言ってね。頭なでなでしてあげるよ。真卯、頭なでなでするの好きだから」


 軽く男を殺しそうなこと平気で言うね、この子。お世話……にはならないほうが身のためか。


 案の定、小想が注意していた。君も大概、大胆だったけど。


 小想にならって、帽子を脱いだ真卯。肩までの髪を後ろで結んだミニのお下げ。片方にのみヘアピンを二個、こめかみあたりに挿している。

 オシャレを兼ねた野球をしやすい髪型なのだろう。とても似合っていた。可愛い、とか言っても大丈夫か、と悩んでいると、


「……雪華。雪に華道の華で雪華。べつに……変だ、って思ってもいいさ。顔と名前が一致してない自覚あるし」

「え? 可愛い名前だと思うが。雪の中で咲く華は美しいのを僕は知ってるし、雪華とこうして話したあとに名前を聞いてぴったりだと思ったよ」

「――――っ!」


 無意識に反応して出た言葉は、なんともキザっぽかった。吐き気もしてきた。雪華も僕から目を背けてしまった。


「気分を悪くさせたようだ。申しわけなかった」


 深く頭を下げる。


 迂闊だったな、と反省する。


 さっきのことと照らして考えると、雪華は繊細な性格と思った。だからと言って態度を変えるのは、僕の性に合わないけど。

 ジッと、ただただ返答を待つ僕の視界の端に、ふとショートカットが映る。


 ――雪華の髪だ。


「――謝る必要ないし。その……あんまり無理して話しかけなくていいから。それと、金持ちっぽくないとか言って、ごめんなさい。えっと、ご主人さま?」


 僕の横を抜けていく。

 帽子を脱いだ後ろ姿を眺める。

 隠れていた雪華の髪は、すごいキレイだった。大切にされているのがわかる。ちょっと羨ましい。

 真卯がとことこ跡を追った。場所は知っているのだろうか、と心配したが合宿所のある屋敷の脇に進んでいっていた。


「雪ちゃん顔赤くない?」

「う、うっさいわ! うぅ……金持ち、苦手かもしれん」


 微かに聞こえる二人の声。どうやら気をつかわせてしまったらしい。


「僕たちも早く行こうか、小想」

「っ! あ、あの、夜夏……さん、ひとつお願いいいですか?」

「ん? 僕にできうる範囲であれば」

「よかったらでいいんですけど、許婚さんのことや夜夏さんとの、なれそめ……とか教えてくれませんか……!」


 先ほどとは比べものにならないレベルのキラキラを飛ばされる。

 大人しそうな見た目に反して、ぐいぐいくるタイプのようだ。それほど、『恋愛』に興味があるのだろう。恋に恋する乙女って感じで、僕は好きだな。


「うん、いいよ。小想が喜んでくれるなら。あ、でも……全部は期待しないでね」

「わ、わかってます! これでも小学五年生ですから! 相手の嫌がることをしない。それが、オトナの品格……ですから!」


 少々、空回りしている気がしなくもない。違うか。小想かのじょのこの場合は――まあ、僕に関わりのないことだな。


 とりあえず三人の助っ人を連れ、食堂に戻った。


前回からおよそ三ヶ月。とりあえず前回の忘れ物の三人の名前を発表できました。小想、真卯、雪華。おそらく空いているポジションを任されるはずですので、よろしくお願いします!

あ、ギャグやってないじゃん。次回からまたヒメやら出てきますので、ギャグです。


友城にい

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