また会おう、その時は絶対ナツ! 三十球目
一気に時を進めるのは惜しい気持ちがあるのだが、いつまでも淡々と練習風景やらを綴っていても飽きてしまうだろう。
エッチなトラブルがあるわけでも(宿舎にヒメだけのいつもの環境になったし)、謎のチカラに目覚める超展開(非日常は別作品をご覧で)が起きるわけでもないんで、省略を余儀なくされたと思ってください。
では、試合前日まで――
「カット」
――決戦前夜。
低くなっていく夕日を背中に焦りを感じていた。
僕たちの意識と伸一郎さんの意識の差を身を持って知った。
「そろそろリミットか。次がラストバッターだ。打てなかったら、私共の勝利。いいね、姫夏くん」
「わかってますわ。ここで打てばなんの問題もないのですから」
長く息を吐いて、左打席に入るヒメに僕は叫んだ。
「なんで右に入らない! 左じゃカーブは打てないって何度も――」
「――うるさいですわ!」
「!?」
ガン! と金属バットをホームベースに叩き落とす。
「黙って見てなさい。安心してくださいまし。私がただ〝三打席空振って〟いたとでも?」
不敵に笑うヒメに唾を呑んだ。
あのカーブに対抗する手段を見つけたとでも言うのだろうか。いや、ヒメならありえない話じゃないか。
「姉弟喧嘩はお済みかな?」
「いいから投げなさい。ご自慢のカーブを」
「ほほう。口だけは達者と聞いていましたが。いいでしょう。ご希望どおり、三球三振でゲームセットです」
長身の右腕から振り下ろされるボールがヒメを襲う。
「くっ!」
一球目は空振り。
「もう一丁!」
「ふぬっ!」
二球目も空振り。あっという間に追いこまれてしまった。
「ヒメ、そんな折れたバットで打てるわけないだろ、ほら、こっちの新品の――」
僕が駆け寄り、新しいバットを持った瞬間、ヒメが大声を上げてバットをさらに投げるために叩きつけだしたのだ。
「うわあああああーー!!! ふん! ふん! ふーんっ!!!」
真っ二つになりそうなレベルに曲がったバットをそのまま肩に乗せる。
「正気の沙汰じゃないね」と伸一郎さんも汗を垂らした。
「おい、ヒメ……」
「次で決めますわ。見てなさい、ヨル。最高にカッコいい姉の姿を」
なんか酔ってんのか知らんが、僕はそのままベンチに下がった。
始まる最後の一球。
今のところすべてインコースに食いこむカーブ。後ろに下がらないと当たらないコースだ。だからといって下がれば、アウトコースに逃げるボールで結局終わってしまう。
それを承知でヒメはバッターサークルギリギリに立っていた。
「打てよ、姫夏」
横で悔し涙のあとが残る莉乃も祈る。
「大丈夫だ、ヒメなら、なんか、打ちそうな気がしてきた。冬葉と南雲ちゃんもそう思わない?」
「え? うーん、たしかに。姫夏ちゃんなら負けっぱなしで終わりそうにないね」
「南雲も~姫夏ちゃんの熱意を買いま~す」
南雲ちゃん、それなんか違う。
まあいいか。
なぜか期待してしまう。
ふざけているようで誰よりもどんなときでも願いの数だけ大成してしまうヒメが。
「これでトドメだ」
「きましたわ。ふんっ!」
手元で大きく逸れるカーブ。
しかし!
「なに!」
「それ!」
曲げたバットの分だけ届かなかったコースに行きついた。
そして、
きーーーん、
打球は見事、ライト線のヒットゾーンに落ちた。
「バカな」
がっくし肩を落とした伸一郎さん。
だが、すぐヒメの元に歩きだし、
「私共の負けだ。君たちを認めよう。ぜひとも、楽しんでくれたまえ」
そう言って伸一郎さんは去っていった。
「これで無事、明日の試合ができるな。よかった。ありがとうな、ヒメ」
「なんてことないですの。これが実力と戦略の勝利です」
曲がったバットを処分袋に突っこんで、ベンチ裏に消えたヒメ。今後使えんよな、あれ。
「ふう」
伸一郎さんって誰だよ?
なんで打席勝負してんの?
なにを認められたんだよ?
と疑問に思った方。
正解。
僕もです。
伸一郎さんとは、少年チームの監督です。そこで一人四打席勝負で誰かが一球でもヒットを打てたら、明日の試合を正式で認めてくれると来た。
どうやら僕たちがズブの素人だと知って、時間の無駄だと正論をぶちまけられたんだが、そこにヒメと莉乃が突っかかってこうなったのが成り行きでございます。
では、次回、ついに少年チームとの試合をします。
長らくおまたせしました。
よーし。
やってやりますか。
一時間くらいで書きました。
もう出ません。伸一郎さん。ありがとう、引き立て役。
ヒメのカーブへの対抗策はドラ○ースのエーモンドがやってたやつです(笑)
友城にい




