また会おう、その時は絶対ナツ! 二十五球目
夜も更けていく。
「夕方のおさらいと言うより、冬葉の気持ちの整理みたいになったな。僕としては役に立った感じでよかったけど」
「はは……そ、そうだね。それで楽しい――話なのか、微妙なんだけど」
「ん? 楽しくないのか?」
「ち、違うよ! 楽しい話のはずだから安心して!」
顔の前で手を振って、否定する。
「まあ、どっちでもいいけど。冬葉の話の相手になれるだけで光栄だし」
「はわぁ、ありがとう……。で、話の内容はね。その……お兄ちゃ――夜夏くんのいう暖だね。おバカだし、野球バカだし、無駄なバカな暖の話なんだけど」
「いつもどおりに『お兄ちゃん』でいいぞ。あとバカ多いな。はあ、なげかわしいな。暖のくせに」
「よ、夜夏くん……?」
こんな可愛い妹に常日頃から「お兄ちゃん」と慕われていると思うと無性に腹立ってきた。今から殴りこみしたくなった。
「進めるよ、夜夏くん?」
「は! お、おう。それで暖のなんの話なんだ?」
思わず、闇サイドが出るところだった(そんなのないけど)。
「そうだね。小さいころのわたしとお兄ちゃんの話はしたことあるよね」
「運動会の話だったっけ?」
暖のイケメソ話。
「うん。普段はバカみたいなことしかしないで、怒らせることばかりで頼りない感じなのに、なんていうのかな。本気で憎めないんだよね、なんでかなー」
困ったように冬葉が、僕に笑いかける。
「さっきの話と同じで、わたしが弱い人間だからなのかなー」
「心配するな。僕にも伝わってるぞ。大丈夫だって。冬葉がおかしいわけじゃない。僕と暖だけじゃない。暖はそういう兄貴なんだよ」
あんまり友だちの話はしない。言ってみて思うが、照れくさいもんだ。普段は冬葉の言うとおり小バカにしたりしかしない。
暖本人にも目の前の冬葉に言うのさえ遠い未来になるが、すごく感謝している。
学校で孤立していた僕に最初話しかけてくれたのは、他の誰でもない暖だ。そこから妹だった冬葉や莉乃と南雲ちゃんと。
「そういうものなんだね。よくわからないね。安心と複雑が半分な気持ちになってる。でも不思議、この気持ち、わたし嫌いじゃないかも」
「なら問題ないんじゃないか。好きな部分と嫌いな部分があってこそ、距離感の証拠だろ」
好きになるにつれて、距離が縮まっていって好きな人の見たくない側面も見えてくるものだ。
それが家族ならなおのこと鮮明に映し出される。
嫌いな部分が見えた。
それは立派な成長の証しだ。
冬葉と暖はしっかり兄妹やってる。
いいことだ。
信頼し合っているからこそ、喧嘩できるって、僕は知ってる。
羨ましいものだ。
「そうだ! お兄ちゃんで思いだしたんだけどね」
「お。ようやく楽しい話が始まるんだな。楽しみだ」
「そうなんだけど。この前、お兄ちゃんと買い物行ったときに――」
冬葉はいっぱい暖の話をしてくれた。
買い物に行った矢先に財布を落としていた話。結局、上着の裏ポッケに入っていたらしい。
ボタン式の横断歩道で十分以上待っていた話や料理のことなにも知らないのに、「短冊切り」という言葉だけ知っていたらしく、にんじんをひたすら短冊のように長く平ったく切っていたらしい。
なんともどれも暖らしい話でおかしかった。
あっという間に時は流れてく。
「――もうこんな時間なんだね。そろそろ寝ないと、朝起きれなくなる」
「お肌にも悪いもんな」
「夜夏くん、たまにデリカシーない発言するよね……」
「い、いや、冬葉お肌の質に敏感で手入れをこまめにやってるのかなぁ、と。気分を害したなら謝るよ」
発言に関しては前科持ちがある。
むやみやたらに身体などに触れる発言は気をつけよう。
「わたしはべつに気にしないけど、ほら、今後のためにだよ? 女の子によってはビンタ案件だよ」
ビンタ案件か。それは軽く死ねるな。
「それでも冬葉のNGワードだったのなら、謝るよ」
「まあ、乾燥肌だから夜ふかししたくないのは本当なんだけどね、はは……」
溜め息を吐く冬葉。女の子は大変そうだ。僕も陰ながらサポートだけやってみよう。
部屋の明かりを落として、シングルベッドになるべく僕と冬葉に空間を作って、一枚の毛布を被った。
仲がいいとはいえ、さすがに身体を近づけて寝るのはよろしくない。
本音は言うと想像以上にドキドキして、頭が冴えている。
「冬葉、寝たか?」
「……」
返事はなかった。
てっきり、恥ずかしがり屋の冬葉のことだ。僕と同じで免疫などもないだろうし、寝つけないかなと思っていた。赤の他人で異性の僕だが、兄ちゃんである暖と同じ布団で寝たことがないわけでもないだろうし、慣れている可能性もあるのか。
またいらない暖との差に気づいてしまった。忘れるとしよう。
僕はそのまま、顔を隠しながら邪念をしばし払拭しつつ、寝ついた。
☆
ど、どどどど、どうしよう。
夜夏くんと同じ布団で寝てるだけなのに、なにこの鼓動の速さ。わたし死んじゃわないよね。
わたしができるだけ寝てるふりしながら、悶えていると背中ごしの夜夏くんが急に、
「冬葉、寝たか?」
「……」
寝れないよ!
寝られるわけない。
こんな状況下で寝られる女の子なんていないよ。夜夏くんも寝つけてないもん。おんなじ気持ちなんでしょ、と少しホッとしているわたしがいた。
面と向かって、この状態で話すのは無理。
だけど、
「ねぇ、夜夏くん」
お話するのに、目を見る必要はないよね。
ごめんね、この時間はもうこれが限界。
「……」
あれ?
返事が来ない。
わたしと同じように寝たふりをしているかな、と耳を傾けてみる。
「すぅー……」
寝てる!
時間を枕元の携帯で確認すると二時間経っていた。夜中の不思議が起きた!
「……寝よ」
こうして、次に目が覚めたのは七時間後だったのでした。
ずいぶん長いこと続いている草野球の話、すぐ終わらせるのは時間がかかるので少しずつでも終わりに向かわせようと思います。
できれば、不自然な形にはしたくはないので
友城にい




